見出し画像

本という宝石箱

 今回は乙女心をくすぐる本の紹介。
 私は本が好きで小説から実用書まで幅広く読む。そして漫画も好きだ。読んだ本の中には乙女心をくすぐる本も多く、そういった本は手元に置いて折にふれて読み返している。今回はそんな「乙女本」の中から一冊を取り上げて、どこに惹かれたかつらつらと語ろうと思う。今回取り上げる本は「赤毛のアンの宝石箱」。

◆ ◇ ◆

赤毛のアンの宝石箱
著:C.S.コリンズ & C.W.エリクソン

 赤毛のアンには乙女心をくすぐるものが詰まっている。パフスリーブのドレス、花飾りのついた帽子、優雅なティーセットで楽しむお茶会。
 子どもの頃、赤毛のアンの物語を読んでは素敵な物語の世界観に浸ってうっとりとしていた。
 物語の中のそんな乙女心をくすぐるものを抜粋して一冊の本にまとめたのがこの「赤毛のアンの宝石箱」だ。この本には物語の舞台となった1870年代のカナダの時代背景をはじめ、お茶会、学校生活、ファッション、ガーデニングなどのカテゴリーごとに章でまとめられている。まさにタイトルどおり素敵なものを詰め込んだ宝石箱のような本なのだ。
 私は子どもの頃に地元の図書館でこの本に出会った。挿絵も美しく、憧れの世界をより鮮明に描いたこの本は夢見がちだった幼い私の心をガッチリとつかんだ。何度も借りては夢中でページをめくったことを今でもよく覚えている。

 私が作中で特に好きなエピソードが「マシュウがアンに贈った茶色のグロリア生地のパフスリーブドレス」なのだが、もちろんそのドレスについても取り上げている。しかも挿絵でとても美しく描かれているのだ。上品な生地感に襟元のレース飾り、二段になったパフスリーブ真ん中には茶色の絹のリボン。アンでなくともため息が出てしまうほどだ。
 ドレスの美しさだけではなくて、このエピソードはとても愛情に溢れた素敵な話だ。簡単にこのエピソードのあらすじを説明すると、下記のようになる。

 アンはこのドレスを贈られるまでシンプルで実用的な服しか持っていなかった。ロマンチックなものが大好きなアンはフリルや当時流行していたパフスリーブのついた洋服に憧れていて、そんなアンの気持ちを察したマシュウがクリスマスにこのドレスをアンへ贈る。
 マシュウはアンの乙女心を察してくれただけではなくて、決して社交的なタイプではないのに、アンのために一念発起して買い物に出かける。お店では気おくれして農機具など不要なものを買ってマリラに怒られたりするけれど、アンを喜ばせようと奮闘し最終的にはパフスリーブの素敵なドレスを用意してクリスマスをむかえる。
 ドレスを受け取ったアンは憧れのパフスリーブのドレスに大喜びをし、マシュウのサプライズは大成功する。

 このエピソードでマシュウの温かな人柄、アンへの深い愛情が伝わってくる。マシュウのアンへの愛情が一層このドレスを素敵なものにしているのだと思う。だから私は作中で一番このエピソードが好きなのだ。赤毛のアンが長く世界中で愛されているのは愛情に溢れた素敵な物語だからなのだろう。

 改めて挿絵を見てみると、アンがクローゼットに掛かったドレスを眺めているところをアンの背後から描いた構図となっており、後姿のアンの表情は描かれていない。にもかかわらず、うっとりと幸せそうに眺めている様子が伝わってくるから不思議だ。
 この本は赤毛のアン本編と同じくらいずっと大切にしたい一冊だ。タイトルどおり宝石箱のように。
 

この記事が参加している募集

推薦図書

サポートは乙女心をくすぐるものの購入費にして、記事にします!