母の愛

小学生の頃、尿検査でひっかかってしまい病院で再検査を受けに行った時のこと。
おしっこに血が混じってたとかだった気がする。
採血があり、それがどうしても怖かったが我慢した病院の帰り、
「我慢できて偉かったね、パフェ食べにいこうか。」
母がそういったのだ。私はびっくりした。
三姉妹の私は、姉妹達がいないときに外食なんてしてはいけないと思っていた。
母が連れて行ってくれたファミリーレストランで食べさせてくれたチョコレートパフェのことを今でも思い出す。
私だけに食べさせてくれた、
私と二人で、レストランに行ってくれた。
私は勉強も運動も人付き合いも苦手で友達もいない子どもだった。だから、「母はきっとこんな子どもなんかいらなかったよな。」と思っていた。そんな私と母がお姉ちゃん達には内緒だよと言って連れてきてくれた。私は、パフェよりも母に特別扱いしてもらえた事が嬉しくて嬉しくて…。かわいがってもらえた気分になれた。
その後も姉や妹に母を取られても、私は「私はお母さんと2人でパフェを食べにいった」という思い出があったから耐えられた。
この事を思い出すと、私は、小さい頃の私を抱きしめたくなる。
可哀想だった。可哀想という言葉を使うのは好きじゃないがそれ以外に言葉がない。
たった一回きりのその思い出にすがって耐える事を覚えた私は、かわいそうだ。
しかし大人になって、やっと気がついた。
人は皆寂しさを抱えて生きていて、寂しいのは私だけじゃないということに。
そう思うと不思議と心が軽くなった。
それは誰かといることで和らぐけれど、完全になくなったりはしない。
それでもあの頃の私の寂しさは消えない。私は、寂しかった。ずっとずっと、寂しかった。
あの頃の私には好きと言って抱きしめてくれる人が必要だった。
いつか誰かが私の孤独を埋めてくれる。
だから大丈夫。
そんな事を思って泣いた夜は消えない。
孤独は私を強くしただろうか。
そんな強さよりも、愛された記憶による肯定感が何よりも強いなと思う大人の私なのだった。

#エッセイ #子どもの頃 #母の愛 #思い出

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