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01|海底地すべり地層 (千葉県館山市・南房総市)

<大地の手触り> 土木学会誌 2014年1月号表紙

 およそ200 万年前に起こった巨大地震の痕跡が見られると聞き、房総半島の南端を訪れた。農道の整備中に偶然露頭した珍しい地層が、表面保護処理を経て保存公開されているのだ。

 大規模な海底斜面の地すべりによって崩壊した地層が、何度も隆起を繰り返して陸地になり、やがて道路建設によって露わになったというスペクタクル。法面から地球のドラマが見えてくるという体験は、なかなか得られるものではない。

 その場所に向かう途中、妙な雰囲気の切り通しが視界に入った。急ぐ旅ではなかったので、車を止めて近くまで歩いて行ったところ、何とも言えない興奮と感動に包まれた。切ったばかりと思われる法面の表面に、見事な文様が描かれていたのだ。人知をはるかに超える巨大な力によって変形した大地の断面は、あまりにも美しく、神々しいものだった。

文・写真:八馬 智 HACHIMA Satoshi

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