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移民の子

移民の子

ボストン大学で長年教鞭をとっていた、ハワード ジン(Haward Zinn)歴史学教授の個人的伝記である、「走る汽車の中では中立を保てない」 (“You Can’t Be Nutral in a Moving Train”) と、言う著作を 朗読で聴き終えた。 8時間半に及ぶ素晴らしい学びの時間を味わった。

米国の市民の大半もそうであるが、もとボストン大学教授であったハワード ジン氏も、移民の子(ロシア)であった。  

両親が米国生活で子供達を育てながら、社会の底辺で努力を重ねていた。  ハワードも、10代の頃から、肉体労働者として、家族の生活を助ける為働いた経験もある。

多くの低所得層同様、ハワードは米空軍に入隊、パイロットの訓練を受け、第二次世界大戦中ヨーロッパの戦場で、戦闘機から巨大な破壊力のある爆弾投下に関わった。

99パーセントの当時の米国民同様、第二次世界大戦は母国の聖戦であると信じ、フランスにまで侵攻していたドイツのナチ軍を、高度上空から上官の命令通り、爆弾を投下した。

あまりにも、高度からの投下であったから、地上でどんな地獄絵が展開しているかは目視出来なかった。

この経験がきっかけになり、 成人後、現代の支配層の政策に疑問を投げかけるようになっていった。

第二次世界大戦後、 GI 法(元軍人に大学入学の道を開いた政策)を利用して、ハワードは大学へ入り、最終的に歴史学の博士号を取得した。

南部の黒人が通う大学の教授に就任、もともと北東部出身であったハワードは、南部で多くの黒人大学生に囲まれた生活を経験した。  

米国内で苦しんでいる黒人を日常的にみるにつけ、白人に比べて多くの点で不平等に扱われている事実を何度も目撃し、米国社会が抱えている問題の深さに心を痛めた。 

その結果、少数民族であるアフリカ系アメリカ人側に立ち、抗議運動にも積極的に参加するようになった。

政治学や歴史学を学ぶにつれ、「公立の学校で教えている自国の歴史が、権力者に都合の良い角度から、歴史を解釈している」と、強く感じ始め、
(“A People’s History of American Empire”) 「アメリカ帝国の国民側から見た歴史」を、書いた。

ジン教授は、頭の中だけで書物等を通して学ぶだけでは不十分で、 「自分の信念に基づいて行動を起こす事も大切である」と、説いている。

日本で安保闘争が激しく繰り広げられていた頃、私はノンポリで、自分の生活を自立させる事に熱を入れていて、日米安全保障条約に関して、自分から学ぼうともしなかったし、ましてや行動に起こそうと夢にも考えなかった

今頃になって、 ジン教授の著作を読み始め、 ユーチューブでジン教授の昔の講演等を聞いている。 若い頃の自分の不甲斐なさに、今改めて強く感じ、遅まきながら反省中だ。

2010年にお亡くなりになったジン先生であるが、二冊の著作を読み、朗読を聞きながら考えた。

この地上に現れた人は全て、人間界の出来事にもっと深く興味を示して、 これから生まれてくる人々のためにも、 人間界の問題点を少しでも減らすために、みんながそれぞれの立場で努力する必要があると感じた。


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