頑是

俳人。そのうち漂泊することに決めてますが、そのうちと言い続けてもう30年。人生はままな…

頑是

俳人。そのうち漂泊することに決めてますが、そのうちと言い続けてもう30年。人生はままならないもの。

マガジン

  • 休むに似たり

  • 俳句詠もうぜ

    俳句は誰でも詠めます。日本人なら誰でもです。 誰でも詠めるんですが、コツは知っておきたい。知っておくと、自分の中に生まれたイメージを俳句の形にしてエクスポートした時に、思ったことと出したこととが1:1になります。 この世でもっともシャープかつロジカルな俳句入門をお送りします。一章でも読み終えたら、世界がちがって見えます。世界が俳句仕様で見えてくる。そうしたらもう、句作はすぐそこです。

  • 俳句のお話

  • 千夜千句

    4年前にカードゲーム『俳聖』出版記念としておっ始めた「千夜千句」。 3年9ヶ月のブランクを経て、復刊!

  • 死語の世界

最近の記事

歯を食いしばって読む本

一冊の本を、歯を食いしばって読むなどということがかつてあっただろうか。最近治療した奥歯が割れるかと思えた。 この本は、この暑かった夏の昼下がりに、平塚の元市長、吉野稜威雄(いつお)さんの御宅に遊びに行って、湘南ってのは元々いったいどこなんですかね、なんていう話から彼が、これ読めというから読んだ本だ。湘南はどこなのかなどという軟派な話は吹っ飛んで、全編歯を食いしばって読むことになる。歯茎から血が出るんじゃないかと思ったくだりは2つある。 ひとつは、ことの最初から弱気弱腰の近

    • 終戦の日に

      (Facebookから転載しています) この歳になってだいぶおとなしくしているつもりでも、友達というものは増えるもので、この一年に新しく面識を得たり、時には知遇とも言えるものを得られたと感謝したい人もおられ、そんな友達みんなへ送るポスト。 毎年、この日に投稿しています。 タモリはいまを評して新しい戦前といい、マスコミはウクライナの次は東亜だと喧しい。 かの戦争に一つだけいいことがあったとすれば、自分のため(だけ)にしでかしたというところだろう。かの為政者たちは本望だったろ

      • 流れ星を詠めるか

        2017年8月句会に投じられてきた俳句。 星流れ夜より昏き森が在る 句会前、これが送られてきたときは、句会を営んできてよかったとおもいました。Facebookのグループでやっていて、遠隔の同人も多いので、わたしが最初に投句を集めて、それらを並べてタイムラインにポストするというやり方をする。だから、わたしは事前にみんなの俳句を読める。 何がどういいのか。 兼題に流れ星が出たときに、これはむずかしいとみんなにいいました。春爛漫や星月夜、遠花火とかと同じ。むずかしい。イメージ

        • 春爛漫を詠めるか

          その単語だけで大きくて、きれいなイメージが湧き出てしまうもの、それはきっと手垢もついているので、使うときはよほど気をつけないといけないといったことがありますが、それの筆頭として挙げたいのは春爛漫ですね。次いで遠花火、星月夜、熱帯夜、流れ星とか。事実、春爛漫を使った俳句はとても少ない。俳人たちは同じ警戒をしてきたにちがいありません。 春爛漫には実は苦い思い出があります。若い頃、句会にこの言葉を使って投句したら、メタメタに叩かれた。こんな言葉を使ったらだめだと。こけおどしである

        歯を食いしばって読む本

        マガジン

        • 休むに似たり
          12本
        • 俳句詠もうぜ
          9本
        • 俳句のお話
          21本
        • 千夜千句
          24本
        • 死語の世界
          15本
        • 映画のお話
          2本

        記事

          日本人に生まれたら、俳句をお詠み(ひさびさに)

          何度か書いてますが、わたしは二十代前半のころに現代俳句と前衛俳句の両刀で俳句に入りました。現代俳句の花房治美子(はるみこ、と読みます)というおばあちゃん先生に、幻想俳句っていうのやってるんですと言ったら、季語をたのまず、定型からも離れていたらじきに詠めなくなるよと言われました。生涯作れなきゃいけないんですかね、この一句!ができたらそこでやめてもいいでしょうとわたしが言い返したら花房先生は、やってごらんなさいなと言い、この子は何にも知らないんだなというような顔をされた。 実に

          日本人に生まれたら、俳句をお詠み(ひさびさに)

          千夜千句(211〜220)

          瓦斯燈を模す街灯に雪刺さる 冬晴れのスマホに映る指紋かな 冬天の聳ゆるものはみな寂し 我捨てし母いじめては三日咳 春浅し祖母妖けて出てまだ叱る ぽかぽかや口ほどに凧上がらない 栗の樹の冬盆栽の如く斬る 恋猫の強情っ張りや本閉じる 新酒古酒まっすぐ帰れるわけがない 立春や道まっすぐにまっすぐに

          千夜千句(211〜220)

          自分大好き!考

          10年以上前、自分としてはけっこうな長期間、テニスに打ち込んだことがあった。スクールに通い、仲間も大勢でき、コートをレンタルして毎週欠かさず勤しんだ。その時に、女性陣の幹事役世話役だった女性がだいぶ歳は離れているが高校の後輩だったこともあり、よく話をした。 いつだか喫茶店で、何かの話の拍子に彼女が「独身のままでいくんだ」というので、つい「なんで?」と聞いてしまったことがある。彼女は文化人だったし、人の気持ちもわかるし、まめだし、恋愛するには申し分なかろうと思っていたのもあって

          自分大好き!考

          千夜千句(201〜210)

          煮大根ひとは顎から年を食ふ 鳥渡るだれ悲しまぬ恋もあり  ※羅(うすもの)や人悲します恋をして(鈴木真砂女)の本句取り。 県境尾根に木立のまばらなる 温泉(ゆ)の猿のどこがおかしや雪信濃 初氷雪一片をのせて割れ ケータイを咥へる鰓の夜寒かな 節分や平和は願うものですが 節分や非戦はそうと決めるもの 眼鏡宝石時計鉄砲店に雪 豪雪の町は原野となるごとし

          千夜千句(201〜210)

          俳句夜話(12) 虚子の商魂が現代の俳句市場を作った

          今夜は、滝の名句から入ります。後藤夜半。 滝の上に水現われて落ちにけり Wikiによると、句会でこの句が出たとき、だれもわからなくて取らなかったと。のちに、師の虚子が客観写生に徹した句として激賞したそうですが、ただの写生ですかね。どうもこう虚子のいうことは真に受けられないところがあって困ります。私は随一の俳人を虚子だと考えるのですが、作句以外の面での彼のあり方はどうも話半分でちょうどいいような気がします。 教科書に載るのは、水原秋桜子のこれ。 滝落ちて群青世界とどろけ

          俳句夜話(12) 虚子の商魂が現代の俳句市場を作った

          千夜千句(196〜200)

          月夜みち薄荷の如き冷気かな 榾の火や背を辿りつつ夢枕 氷り滝動く輩はわれのみぞ 冬山のこだま順々に子となりぬ 水温む昔のひとはやたら死ぬ

          千夜千句(196〜200)

          俳句夜話(11)虚子はいたずら好きのマーケター?

          今更ながらに、虚子の名著と言われる「俳句の作りよう」「俳句とはどんなものか」「俳句はかく解しかく味う」なんぞを読んでるわけですが、彼が俳句はこうだと言ってる最大の要所は、まじめに詠め、ですね。思いっ切り、俳句さながらに約めると、たぶんそんなところになるかと。 子規の言っていた、五七五定型第一、季題第二、切れ第三、この三つを守らないものは俳句ではない、洒落や諧謔はやめて写生に徹するべきである、といった約束事をそのまま受け継いだかっこうで、この師弟には芭蕉か蕪村かの(私から見る

          俳句夜話(11)虚子はいたずら好きのマーケター?

          千夜千句(192〜195)

          望楼や地より降りくる細雪 涸滝の落ちるものなしひとの声 いきものとみて突き返す海鼠かな 振り向かずゆけ立春のふくらはぎ

          千夜千句(192〜195)

          千夜千句(191)

          癩人と言ひ争へば陽が溜まる ハンセンの俳人村越化石へのオマージュ。元の句は、 癩人の相争へり枯木に日 20年以上前、目も鼻も耳もないハンセン病の詩人桜井哲夫をドキュメンタリーに残そうと、草津温泉の療養所に通い詰めたことがあります。結局、自治会の反対にあい、写し取ることはできなかった(その企画者兼監督は、ゴールデン街の最古参「わらじ」の主人。もう亡くなって、お店も閉じましたが、私の師のひとり)。 草津の自治会の役員たちは、こんなことを平然という。 「彼は隔離政策を肯定

          千夜千句(191)

          俳句夜話(10)高浜虚子は花鳥諷詠の人じゃありません

          む印俳句はいったん置いて、いやこのまま本棚の奥に仕舞って、少しまじめにいきたいと思います。 俳文らしく、いにしえの俳人をとりあげてああだこうだといってみる。ことにします。 まずは高浜虚子。正岡子規に兄事した人ですね。花鳥諷詠、写実写生主義を完成させた人とも位置づけられます。 どうしても話がそれますが、ここは避けて通れないので記します。 かつて「む印俳句」同人も主宰の流さんも、そして私も、子規と虚子を仇敵としていました。写実だけやっててどうすると。そんなのは俳句の矮小化であ

          俳句夜話(10)高浜虚子は花鳥諷詠の人じゃありません

          千夜千句(181〜190)

          カードゲーム『俳聖』出版記念 2018年2月1〜2日 寒月蝕終えて朧の地に生きて 冬日向きものの中にきみを容れ 太き薪の火を頬張りて世を問ひつ 虎落笛どこからどこに線引くや 疎まれてやっと一息節替わり 氷柱下腿たたまれしカマドウマ 逆さまに曲がる膝あり冬の虫 冬ごもり海星のごとき手の人と 薪くべて世情を問はぬ爪の先 凍てるみち芭蕉憎みし烏が歩く

          千夜千句(181〜190)

          千夜千句(171〜180)

          カードゲーム『俳聖』出版記念 2018年1月20〜30日 千遍の咳百篇の生きる意味 半身を雪に埋めて寝釈迦かな 凍てる道往くや無心に一心に 訳知るや冬の海月は箱の中 寒垢離の何か云ふただ何か云ふ 髭剃れば鏡の女が凍ててゐる 街凍てて月夜に闇夜交差する 道の雪砦のごとく押し積まれ ハワイ雨季やたらに虹の跨ぐ様 ハワイ涼し歌の航路は船の路

          千夜千句(171〜180)