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記事一覧

ブックガイド(121)「東京都同情塔」(九段理江)

第170回令和五年下期芥川賞受賞作である。  ザハ・ハディドによる新国立競技場が中止にな…

栗林元
5日前
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ブックガイド(119)「天鬼越(北森 鴻/浅野 里沙子)」

作者・北森氏の急逝から六年後に、残された二編と新たに浅野氏が書き下ろした四編を加えた一冊…

栗林元
12日前
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ブックガイド(118)「旗師・冬狐堂四 瑠璃の契り」(北森鴻)

旗師としての命ともいえる眼に飛蚊症が出始めた宇佐美陶子。今回は、彼女のもとに持ち込まれた…

栗林元
13日前
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ブックガイド(117)「シャーロック・ホームズの護身術 バリツ: 英国紳士がたしな…

「崖っぷちから落ちかけたぼくたちは一瞬ふたりそろってよろめいたんだ。 でもぼくは日本の格…

栗林元
2週間前
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ブックガイド(117)「緋友禅」(北森鴻)

旗師・冬狐堂シリーズの三巻目。短編集である。 今回は萩焼、埴輪、友禅、円空仏をモチーフに…

栗林元
2週間前
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ブックガイド(116)「邪馬台」蓮丈那智フィールドノートⅣ

北森鴻氏の未完の長編「鏡連殺」を、彼の構想ノートに基づいて浅野里沙子氏が完結させた作品で…

栗林元
2週間前
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ブックガイド(115)「うさぎ幻化行」(北森鴻)

2010年、北森鴻の遺作となった作品。  主人公はフリーライターの美月リツ子。自分を「うさぎ」と呼んでかわいがってくれた義兄が、航空機事故で死んだ。音響技師だった義兄は遺書とは別に、「音のメッセージ」も残していた。環境庁が選定した「日本の音風景100選」の録音データに残された音源を訪ね歩く「旅行き」モノのスタイルなのだが、そこで少しずつ明らかになる事は、同時にリツ子の過去と義兄の過去の縁に迫っていく。 鉄道ファンにも刺さる作品  鉄道旅と遍路など、後半は旅情をそそる展

ブックガイド(114)「顔のない男」北森鴻

2000年の作品なのだが、面白い。本格推理の名に恥じない。ラストまで一気に引っ張られた。  …

栗林元
3週間前
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ブックガイド(113)「親不孝通りラプソディー」(北森鴻)

どうも「親不孝通りディテクティブ」という作品の主人公カモ・ネギコンビの高校時代の物語らし…

栗林元
3週間前
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ブックガイド(112)香菜里屋シリーズ(北森鴻)

このシリーズは、バーマン工藤哲也が営むビアバー香菜里屋を舞台に展開される短編ミステリの連…

栗林元
4週間前
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ブックガイド(111)「旗師・冬狐堂二 狐闇」(北森鴻)

 店舗を持たない古美術商・旗師。宇佐美陶子シリーズの第二作である。第一作「狐罠」は贋作に…

栗林元
1か月前
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ブックガイド(110)「狐罠」旗師・冬狐堂(1)

コンゲームの傑作 〝旗師〟とは、店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商 う古美術…

栗林元
1か月前
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ブックガイド(109)「虚栄の肖像」(北森鴻)

花師にして絵画修復師の佐月のシリーズ第二巻。残念だが、このシリーズの新作はもう読めない。…

栗林元
1か月前
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ブックガイド(108)「深淵のガランス」(北森鴻)

 主人公の佐月恭壱は銀座の花師である。バーや料亭などに花を生けるのが仕事だが、もう一つ、絵画修復師としての陰の顔があった。  バブル崩壊後に、投機対象だった絵画が溢れ、美術業界に生臭い風が吹いている世界を舞台に、佐月に依頼される修復案件をきっかけに事件が始まる。  2006年の作品である。2010年、作者・北森氏は48歳の若さで亡くなられた。氏の「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズを読んで、その面白さに打ちのめされたのが、2010年の1月だった。そしてその感動冷めやらぬ同じ