ブックガイド(108)「深淵のガランス」(北森鴻)
主人公の佐月恭壱は銀座の花師である。バーや料亭などに花を生けるのが仕事だが、もう一つ、絵画修復師としての陰の顔があった。
バブル崩壊後に、投機対象だった絵画が溢れ、美術業界に生臭い風が吹いている世界を舞台に、佐月に依頼される修復案件をきっかけに事件が始まる。
2006年の作品である。2010年、作者・北森氏は48歳の若さで亡くなられた。氏の「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズを読んで、その面白さに打ちのめされたのが、2010年の1月だった。そしてその感動冷めやらぬ同じ