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リモートCI策定プロセス(カミナシ編)

2020年11月、株式会社カミナシのミッション&ビジョンとバリューが新たに策定されまして、こちらのコピーライティング面をお手伝いしました。

コロナ禍のため対面で会うのではなくすべての工程をリモート(オンライン)でおこなったのですが、個人的にはそのようなやり方をしたことがなかったため、そのプロセスやリモートならではのコツを記録しておきます。

経緯

きっかけは2年前の仕事。2018〜2019年に、hokan社のCI(Mission / Value / VI)の策定をお手伝いしたことがありました。

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こちらをカミナシ代表の諸岡さんがみてくださり、今回バイネームで指名いただきまして、Mission / Value のコピーライティングまわりをお手伝いすることとなりました。

以前はコピーライティングも含めたCI策定は何社かお手伝いしていましたが、1年前からはUI/UX・新規事業の立ち上げ支援にフォーカスしていたため、今回のお話をいただいたときには正直お受けするかどうか迷いました。

しかし、過去のお仕事がお仕事を呼んだという嬉しい事実や、hokan尾花さんが紹介してくださったという点、そしてカミナシをよく調べたらCoral Capitalが投資していることに気づき、Jamesさんには普段からよくしていただいているため、お力になれるのであればぜひと承諾した次第です。


フェーズ1:インプット

僕に依頼をくださった頃はすでに、カミナシのメンバーたちによりミッション・バリューの見直しの合宿をし終わった段階で、ある程度言葉もまとまっていました。

それがこちらです。

Mission
ノンデスクワーカー3,100万人の作業品質と生産性を向上させる。
そのためにできることは、全てやる。

Vision
ITの力でノンデスクワーカーの働き方を変え、ARR100億円のSaaS企業になる。
ITの力でノンデスクワーカーの働き方をスマートに!カッコよく、楽しい働き方に変えていく。

Value
1. 現場主義
2. オープン
3. 人と違う
4. 失敗とチャレンジ
5. 人間臭さ、ウェットさ、青臭さ、青春

合宿の様子やまとめの資料など読ませていただき(詳しくは冒頭に記載した諸岡さんのnoteへ)、本気で自分たちの存在理由や目指す未来像について考えているんだなという情熱を受け取り、自分としてはますます「いいコピーを紡ぎ出さなければ…!」という想いに。

しかし、自分の中で不安な点が3つありました。


1. この合宿に僕が生で参加していない
いつもはこの合宿自体を僕が手配しともに言葉や概念を紡ぎ出しながら、創業者やメンバーの深いところを知っていき、信頼を築き上げていくのですが、その温度差があるままのスタートとなってしまいます。

2. コロナ禍のためオフィスにいけない
やはり対面で雑談もふまえながらサービスの話だったり組織の話をしていくことで、メンバーの深い想いだったり潜在的な覚悟を引き出すことができる(そうしてきた)のですが、それが今回は画面越しのみとなりました。

3. 与えられた期間は1ヶ月強
スケジュール上、Mission / Vision / Value を1ヶ月で策定しなければいけませんでした。素材は用意されているとはいえ、いつもは2〜3ヶ月程度かけるため、1点目と2点目の不安満足のいくアウトプットを出せるか不安でした。


この3つの点を解消するために、いつもはさらっとおこなうひとつの工程を、一番最初に、一番エネルギーをかけておこないました。

それが、代表である諸岡さんのnoteの記事とTwitterの投稿を読み漁ることです。

その工程自体はリモートでなくてもCI策定をお手伝いする際にはおこないますが、えてして対面で話して出た言葉をつかむ方がはやいため、基本的にはお話をすることに主をおき、noteやTwitterはあくまで参考程度にしておきます。

しかし今回は合宿にも参加しておらず、コロナ禍でオフィスにもいけず、1ヶ月しかないため、今この瞬間から夜中でもできること、世の中にでている情報のみで、「カミナシ」という会社に対してのインプットをしていかなければなりません。

ですから今回は、会社の核である創業者であり代表の諸岡さんのnote、Twitterにフォーカスをあてて、隅から隅まで読み漁ることにしました。

ひとつひとつのツイートやnoteで書いてある単語、言葉の選び方、接続詞に何を使うか、改行をどう使うか、句読点の頻度はどれくらいか、カタカナや英語をどの程度使うのか、などを理解するだけでなく身体に染み込ませ、対面で一度も会ったことがないのに「諸岡さんってこういう人だよね」をぺらぺらと話せる状態にまで自分を持っていきます。

昔のピッチ動画なども拝見しました。

次に、諸岡さんだけでなく、カミナシという会社・サービス自体のテンションも肌で感じます。

どのようなデザインであるかなどはもちろん、どのような言葉遣いをしているのか、お客さんと投資家に対してそれぞれどのような振る舞いをしているのかなど、現存の資料から読み取っていきます。

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フェーズ2:ヒアリング

CI策定を調理に例えるとすれば、これまでの段階で「用意されている食材への理解」が完了しました。

次は「どのように調理してほしいのか」「なぜこの食材にしたのか」を探るため、Zoomでヒアリングをおこないます。

以下が今回おこなったヒアリング項目の一部です。

・MVV(Mission / Vision / Value)の定義すりあわせ
・カミナシの5年後、10年後、20年後をおしえてください
・ビジョンの対象を自分たちにするか、社会にするか
・諸岡さんとカミナシの類似点
・諸岡さんとカミナシの相違点
・創業以来変わらないこと
・創業以来変わったこと
・用意してくれたバリューに紐づくエピソード
・言葉としてこだわっていることは何か

リモート云々に限らず、僕は最後の項目を特に重要視しています。

たとえば僕は諸岡さんのnoteやTwitterを見ているうちに気づいたのですが、現場で働く職業の方たち「ブルーカラー」のことを途中から「ノンデスクワーカー」と記載するようになっていました。

正直にいって「ブルーカラー」の方が耳馴染みがあるのに、頑なに「ノンデスクワーカー」と記載するのは何かワケがあるに違いない。

そう感じて、ヒアリングの際にその理由を詳細にきいたり、その他にも「この言葉は使いたくない」「この言葉を使うように心がけている」ことがないかもお伺いしました。

このように、創業者のこだわりを探って、見つけて、顕在化していく作業はミッション・バリューの言葉を紡ぎ出す工程において大きなヒントとなりえます。

なぜならば、これはCI策定のときの持論でもあるのですが、その会社がミッションやバリューとして掲げるべき言葉は、結局すでに会社で使っている、もしくは創業者が昔から言っている言葉やにじみでいる思想であることが多いからです。

でも本人はその思想を当たり前だと思っていたり、日常的に使う言葉だったりするので、気づけないことが多い。

5年前に共同創業したFOLIOが2017年末にはじめてきちんと Mission / Value を策定した際に実際のコピー部分を担当したのですが、その文言の一部も代表がどこかのインタビュー記事で発した言葉 を僕がそのまま採用したものだったりします。

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フェーズ3:ミッション・ビジョンの提案(資料一部公開)

ヒアリングが終わると、いよいよ言葉を何百何千とつむぐブレストフェーズに入りますが、今回はそのプロセスについての記載を省略し、代わりに実際にカミナシのチームメンバーへミッション・ビジョンを提案した際の資料を一部公開します。

その道(CI / コピーライティング)を専門にやってきたわけではないので、つたない資料に恥ずかしい気持ちもありますが、これからCI策定する方々にとって少しでも参考になれば幸いです。

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以上のように提案しました。

案だけをまとめると以下の3つです。

Mission&Vision Candidate 1
ノンデスクワーカーの才能を解き放つ。

日常はITに溢れているのに、仕事場は紙ばかりで非効率。
今日も作業現場で働く人たちは、十分に才覚を発揮できていない。

そんな3,100万人の埋もれたエネルギーを、私たちが解き放つ。
誰もが享受するべき当たり前を、すべての現場の人たちに届けたい。

効率的な作業、見事な成果、腕のなる仕事、豊かな人生。
これらはきっとつながっているから。
Mission&Vision Candidate 2
ゲンバビトを助太刀する。


孫とスマホで会話する時代に、
現場管理を紙でおこなう。

そんな非効率をものともせず、
今日も闘うゲンバビトたちに、
私たちは加勢する。

あなどるなかれ、彼ら3,100万人。
全員が効率という武器を持ったとき、
この国の生産性は跳ね上がる。

勝ち取るぞ、未来。
全員で豊かになることを信じて、
ゲンバビトと共に闘おう。
Mission&Vision Candidate 3
3100万の才能を開花させる。


国民の75%がスマートフォンを持つ時代に、
就業人口の約半数である3100万人が、
仕事場でITを活用できていない。

このズレは、ポテンシャルだ。
きっとみんな気づき始めてる。
才能にあふれた人に、紙にあふれた現場は似合わない。

カミナシは、覚悟と信念をもって、
この問題に真正面から取り組む。

すべての現場が、やりがいと夢であふれる未来を目指して。
小さなことからこつこつ始め、大きな花を咲かせてみせる。
きっとこの挑戦さえ、何かの種になるんだ。

なお、提案ももちろんZoom越しにおこなったのですが、その際に心がけたのは「顔と資料を同時に映す」ことです。

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普段対面でプレゼンテーションをおこなうときは、手振り身振りや顔の表情とともにスクリーンにうつした資料を再生していくスタイルなのですが、何も考えずに画面共有してプレゼンをすると、資料だけが大きくうつされた状態になってしまいます。

僕は伝えたいことがあるときに そのプレゼンターの表情やジェスチャーによって心が動かされるベクトルや度合いが変わってくると考えているため、今回は顔と資料を同時にうつせる「mmhmm」を使用してプレゼンテーションをおこないました。

この点の思想は人によって違うと思いますが、リモートならではのプレゼンテーションといえますね。


フェーズ4:フィードバック

以上の提案をおこなったあと、フィードバックをいただきます。

今回は個人的にも一番推し案であった「ノンデスクワーカーを解放する。」案の方向性で進めることとなりました。

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ここからは細かい文言の調整です。

この画像でいうところの下部のステートメントの部分は修正なしでしたが、メインコピーの「解放する」という言葉のニュアンスが少し上から目線気味とも受け取れてしまうという意見があったため、別の文言を検討することとなりました。

同時に、オフィスの壁に大きく書いたときのイメージや、疑似的にコーポレートサイトのイメージを勝手に作成し、このミッションをより具体的なクリエイティブに落とし込んだときにしっくりくるかどうかも検討していただきます。

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そうしてミッションとして決定したのが、こちらです。

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Mission&Vision
ノンデスクワーカーの才能を解き放つ。

日常はITに溢れているのに、仕事場は紙ばかりで非効率。
今日も作業現場で働く人たちは、十分に才覚を発揮できていない。

そんな3,100万人の埋もれたエネルギーを、私たちが解き放つ。
誰もが享受するべき当たり前を、すべての現場の人たちに届けたい。

効率的な作業、見事な成果、腕のなる仕事、豊かな人生。
これらはきっとつながっているから。

事業内容に相応しく視座と志が高くて、文から温度が伝わってくるように熱く、誰にもわかりやすく明快で、なによりカミナシらしいミッション&ビジョンに仕上がったと思います。


フェーズ5:バリューの提案

さて、ミッション&ビジョンと同様にバリューも提案資料をつくりましたが、すべて見せると大変な量になるので割愛させていただきます。

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バリューに関しては当初から苦戦するだろうなと思っていましたが、そう思っていた5倍ほど紆余曲折あり、コピーに関しても共同でつくりながらああでもないこうでもないと議論を重ね、結果こちらの3つのバリューに決定しました。

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Value
・現場ドリブン
・β版マインド
・全開オープン

こちらはコピーだけでなく、上の画像のようにポスターとしての仕上げや、それぞれのバリューに紐付いたカミナシロゴでの遊び心など、ビジュアル面でもこだわってご提案させていただきました。

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(↑ 思いつきでつくったアイコンたち。和牛の部位みたいで逆に好評)

言葉選びやこのアイコンを面白がってくれていることからも分かるように、カミナシという会社は、

スマートなのに熱くて、
効率化サービスを提供しているのに人情に重きをおいており、
負けず嫌いだけど仲間もライバルも一緒くたに人間を信じていて、
愚直なまじめさがあるのに遊べるときは遊ぶ余裕とユーモアがある。

そんな風に僕自身感じていて、今回策定したバリューはまさにそんな文化や性格を落とし込んだ言葉だといえます。

CI策定という行為は、その会社を知ることであり、愛することであり、愛させることです。

1ヶ月という短い期間ではありましたが、例に漏れず僕自身もカミナシという会社を愛するひとりとなってしまいました。
事業内容や目指している世界観に興味のある方はぜひ会社の方に問い合わせてみてください。

なお採用においては、彼ららしく「採用ウィッシュリスト」などユニークな試みをしています。


リモートでCIを策定すること

以上がリモートでおこなったCI策定プロセスでした。

お気づきになられた方も多いと思いますが、基本的には対面だろうがリモートだろうがやることは変わりません。

ただし、上述したようにいくつか細かいコツが必要です。
以下にかんたんにまとめます。

インプット
対面で話す時間が少ない(もしくはない)ため、現存する資料や創業者のSNS、取材された記事、ブログなどを読み漁り、創業者の人柄をなるべく理解する。

ヒアリング
どういった言葉にこだわりを持っているのかを事前に察してその意図をきく。ときには雑談を交えながら、ギャラリービューにするなどして常に全員の顔の表情を見逃さないようにする。言葉を逃さないよう録画しておく。

提案
画面越しの温度差を縮めるため、mmhmmなどのツールを駆使して、顔の表情や身振り手振りとともに提案資料をみてもらう。

フィードバック〜納品
コピーは単体だけでなく、コーポレートサイトやポスターなど具体的なクリエイティブに落とし込んだときにしっくりくるかどうかも考えてもらう。

ここまで読んでくださった方々に、何か気づきになることがあれば幸いです。

最後に、今回ご依頼をいただき、会社にとってとても大切なミッション・ビジョン・バリューの策定をおまかせしてくださり、一度も対面でお会いしていないのに信頼してくださって、お互い納得のいくものを共につくりあげてくださったカミナシの皆さん、本当にありがとうございました。これからも応援しております。

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