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二律背反なイシとコケ/連載エッセイ vol.91

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.93(2016年・第2号)」掲載(原文ママ)。

只今の時刻は、2016年4月1日の午前零時を少し回ったところ…。
即ち、所謂『4月始まり』である『2016年度(平成28年度)』のスタート直後という事になる。

この『年度』という概念、日本においては1月1日以外を開始点とする期間が該当し、暦年と区別する意味で使われている。

そもそも、この『年度』とは、様々な事務作業を目的としたものが中心で、またその多くは政府機関や業界団体等により決定されており、例えば『米穀年度』は『11月スタート』だったり、『麦年度』は『7月スタート』だったりもする。

ただそうは言っても、我が国において最も一般的な『年度』は、4月1日から翌年3月31日までを括る『学校年度』や『会計年度』であろう。

そういう意味において、まさに4月は『進学』や『就職』、『人事異動』などによる『変化到来の季節』であるが、我々のような『職種』(自営業者)にとっては必ずしもそれは該当せず、せいぜいお客様の学校や職場での『環境変化』を伺う事で、間接的にこの『4月の年度替り』を感じる程度なのである。

しかし…この春は私にとって、実に久々の『変化な年度替り』になりそうである。

まずは『2015年度(平成27年度)』を個人的に振り返ってみる。
すると我ながら、『前期』と『後期』では、ものの見事に『色彩』の異なる年度であった事を実感する。

私にとっての『昨年度前期』は『陽の季節』。

年度初め早々に、WFC(世界カイロプラクティック連合)の世界大会に4回連続で参加する為、開催地であるギリシャ・アテネに渡った。
燦燦と降り注ぐ太陽光と、それを見事に撥ね返すエーゲの水面や古代遺跡、白い街並みに魅了された。

そしてハイライトは、真夏の韓国ハンソ大学での博士号授与。
足掛け5年にも及び、昨春以降はタイトスケジュールを縫って、論文作成の最終調整の為に毎月訪韓した努力が結実した瞬間であった。

ところが…『好事魔多し』。
私にとっての『昨年度後期』は『陰の季節』となった。

昨秋に起きたある『出来事』が、私の経営者としての根幹を揺るがし、自信を喪失させ、その対応に追われた。
その詳細について、ここで述べるつもりはないが、『さすがは厄年…恐るべし本厄…!!』と我ながら感嘆せざるを得ない日々であった事は確かである…(歳がバレる!?)。

ただ…そのような五里霧中の日々を独り格闘する中で、これまで目を背けてきた自身の課題と向きあわざるを得ない状況となった事を、(少々無理しながらではあるが)肯定的に捉えようとする自分もいた。

そこで出た結論が『原点回帰』と『変化上等』。

そもそも私は、非常に保守的であり、変化が苦手な人間である。

良くも悪くもガッチガチな公務員を親に持つ家庭に育ち、まさに安定こそが行動の源泉であった。
当時の自分は否定するかもしれないが、教員という職業を志望し成就した動機に、その要素が全くなかったとは言えないだろう。

しかし…何故に私は、安定し、それなりの評価も受けていた教職を辞して、この仕事に就いたのか??

『生まれ故郷に世界水準のサービスを浸透させたい』…その『初期衝動』に今、全身全霊で向き合えているのか?? 

変化を恐れて、それなりのところで人生に手を打とうとしてはしていないか??

『転石苔むさず』という言葉がある。

これは元々、英語の諺『a rolling stone gathers no moss』が明治期に翻訳されたもので、2通りの解釈ができる言葉としても知られる。

日本では従来、『英国式』の解釈がなされていて、転がる石には苔が生えない事から、世の中に合わせ行動を軽々しく変える人は結局成功しないとの戒めの様に使われてきた。

一方、『米国式』の解釈では、転がる石には苔がつかない事から、いつまでも新鮮で柔軟で変化に富んだ状態で世の中に対応できる…と好意的に捉えられる。

一体、どちらが正しいのであろうか?? 
それは…きっと…どちらも正しいのであろう。

実際、日本の諺に当てはめれば、前者は『石の上にも三年』であろうし、後者は『流れる水は腐らず』であろう。

要は、『物事』や『状況』には『プラス』や『マイナス』といったような『絶対的な評価』は存在せず、それを捉える側が『自分はどう在ろうとするか』が大切なのであろう。

そんな訳で…この春、私は19年振りに、生活拠点を『生まれ故郷』へ戻す事を決めた。
この決断を後押ししてくれた人には感謝をしてもし切れない。
これからの人生を賭けて、その恩義に応えるしかないと、今は自分に言い聞かせている。
本当に感謝しかない。

この世間一般並みの『春の環境変化』が自分に何をもたらすのか、現時点では皆目見当もつかないし、当てもない。
正直、不安も大きい。
だからこそ…今の自分には必要な事なのだと思う。

そもそも…何かを確実に得られる保証が在っての事であれば、それは『変化』ではなく『打算』に過ぎないのだから…。

まだ生活感のない新居で音楽をかける。
選んだCDは、10代前半で初めてロックに目覚めるきっかけとなったアルバム。
独特の高音ハスキーヴォイスが、当時のままの歌声で、後厄真っ最中の中年男に歌い掛ける…『夢を忘れずに 闘え Like a rolling stone !!』


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