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地図を駆ける、地図に欠ける/連載エッセイ vol.39

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.41(2007年8月)」掲載(原文ママ)。

時々、不意に出会った『日本地図』に見入ってしまう。

一昔前、『昭和』の一般家庭には、一家に一枚、トイレの扉の内側にでも地味に貼られたりなんかしていた日本地図。

他にする事のない空間故に、眺めている内にあわよくば地名なんかも覚えられるんじゃないかしら…などと淡い期待を込めて貼られたりなんかしていた日本地図。

でも結局、各々が各々の『パートナー』を手に入室する為、誰にも顧みられず、飛び交うハエに国内線旅客機の目線を提供するのみで次第に色褪せていったりなんかしていた日本地図…。

そう、最近めっきり目にする機会が減ったこの少々大判な風景画にたまたま出会うと、私はつい見入ってしまうのだ。

『ずいぶん遠くまで行ったり来たりしているんだなぁ…』と。

ご存知の読者も多いと思うが、我々には『研修』が頻繁にある。

患者さんの中には、開業している(つまり一定の教育を修了している)者が何故ゆえ研修を多数受け続けるのか、不思議に思う方もいらっしゃるようだが、プロスポーツ選手を想像して頂ければ理解が早い。

つまり、彼らはアマチュア時代より、プロになってからの方が練習を多くこなす。
それは己の技術水準の単純な維持向上の為だけでなく、『現場』に出て初めて感じる事のできる僅かな『ギャップ』を埋める為の作業なのだ。

確かに我々も学生時代、カイロプラクティックを様々な角度から勉強する。
しかし、いざ臨床の場に出れば、患者さんの身体はまさに『千差万別』。
机上の理論だけでは立ち行かないからこそ、開業後の研修が必要となる訳だ。

(ですから患者さん!!
 研修による休みが多い院の状況を嘆かずに
 『それだけこの先生は一生懸命なのね!』と思って頂ければ
 イトウレシ…。)

さて話がだいぶ横道に逸れてしまったが、問題は研修の『場所』である。

開催場所が関東程度であればさほど苦ではないのだが

(ただ患者さんの中には『毎月東京に行く』というだけで驚かれる方もおられるようで…まさに『ああ上野駅』!!)

私の所属する団体の本部がある中国地方なんかになると、いい加減、自分の肉体年齢を実感させられる事が少なくない。

時間の許す読者の方は、岩手から彼の地まで、一度日本地図で辿ってみて頂きたい。
ほぼ『本州縦断』である。

それを時には『0泊3日(2車中泊)』でこなす場合もあるのだから、院に来た患者さんが呆れるのも無理はない話である。

先日、またもやとある場所で壁に貼られた破れかけの日本地図を眺めていた。

今度は遠く離れた『研修先』ではなく、自分が院を構える地域に目を配ってみた。
面積だけはやたら広く、掻き集めても人口僅か数万の我が郡部は当然、地名など地図上に記載されておらず、緑色に覆われている。

『日本地図』の『マクロ』な目線でいけば、人が住んでいる事すら想像し難い地域なのかもしれない。

しかし当然ながら『ミクロ』な目線に転じれば、ここにも沢山の人達がいて、生活を営み、そして中には腰痛や肩こりなどで悩む方々がいる。

この間、院の地元に生活するCA(カイロプラクティック・アシスタント)の尽力で、念願叶って田圃に囲まれた公民館での健康講座を開く事ができた。

集まったのは60~80代の高齢者を中心とした約70名。

いかに講演会慣れしている私でも、さすがにこの層中心の講義をした経験はなく、相当数の人生の諸先輩方を前に話し始めた時は、若干の緊張を覚える程であった(想像してみて頂きたい。見渡す限りの……!!)。

しかし始まってしまえばいつもの調子、アヤノコ~ジばりのトークを展開し、大盛況!!閉講後、『オラが町のセンセイ』の存在を初めて知り、えびす顔の爺ちゃん婆ちゃん(失礼!!)に囲まれながら、改めて『伝えていく事』の大切さを肌で感じた一日であった。

そして今、インターネットで検索した『日本地図』を改めて眺める。

チェックポイントの様に点在する数多の都市を、様々な交通機関で縦横無尽に駆け回る自分。記載される事もない様な農村で、横文字を極力使わずにカイロプラクティックを説明する自分。どちらの自分も思いはひとつ

『まだ見ぬ患者さんに手を届かせるために…』。

これからも『ミクロ』と『マクロ』、両方の視点を持った自称カリスマ・カイロプラクターでありたいと考える、今日この頃であった。


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