動ける体幹部を作るレッスン⑦ ~体幹と手足の逆動作
体幹部の動作の話を書いてきましたが、最後は体幹部と手足を別々に使うことで、動きのバリエーションを増やす方法です。
・体幹部の使い方は「合計」だけではない
一般的に、全身の筋肉は一つの目的に向かって使うことが多いです。たとえばパンチを打つなら全身の筋肉を拳の加速に用いますね。でも、それがいつも最適な方法というわけではありません。
あえて運動の方向をズラすことで、効果的な動きが可能になることもあります。
ここでは、肩甲骨の動きと肘の屈伸を逆向きにする練習をします。
・肩甲骨と腕との動きを分離させる
1.壁腕立て伏せから始める
まずは壁に向かって立ち、壁に手をついて、肘を曲げ伸ばし。筋トレが目的ではないので、あまり深く曲げないように。
2.肩たて伏せを行う
両肘は伸ばしたまま、肩甲骨を前後に動かして身体を前後させましょう。
3.肘と肩を逆動作する
ここから分離動作です。
①肘を伸ばしたまま、肩甲骨を背中に寄せます。
②肩甲骨を前に出しながら、肘を曲げる
肩甲骨が前に動いた分を、肘で吸収する感じ。
③肘を伸ばしながら、肩甲骨を後ろに寄せる
肘が伸びた分を、肩甲骨で吸収。
あとは繰り返し。
慣れてくると、体幹をほとんど動かさずに腕と肩だけが動くという、ちょっと見に気持ちの悪い動作になりますね。ある程度慣れてきたら、壁に手をつかず同じ動作をしてみましょう。
別パターンとして、前に出した腕の上げ下げと肩甲骨の動きを逆動作にする方法もあります。剣術などで有効。
・足と脊椎でもできる逆動作
前々回に書いた、脊椎の操作で身長を変える方法。あれと足の屈伸でも同じことができます。
壁に向かって立ち、なにか目印になるものを見つけます。視点を固定することで、頭の位置が変わったら分かるようにするため。
あとは、頭の高さを変えないように膝を屈伸する。イメージとしては、お腹が伸び縮みするような感じになりますね。
・逆動作の意味は?
さて。こんな逆の動作を同時にすることに何の意味があるのか?
逆動作の共存には、いくつかのメリットがあります。
1つは、理想的な運動コースをつくるため。
人間の動きは、原則として関節を支点とした扇形を描きます。ところが中心を固定した扇形は遠回りで、力も弱くなりがち。
そこで扇形のカーブを打ち消すような動きを重ねることで、効率の良いコースを描く運動ができるのです。
2つ目は、筋肉の「あそび」を減らすため
たとえば剣を振り上げるとき、振り下ろすための筋肉は緩んでいます。振り下ろしを開始するとき、緩んでいた筋肉が張るまでは力が伝わらないので、空白の時間が生まれます。
そこで腕で振り上げ終わる前に肩で振り下ろし始めるというように、同時に動きを進めることで、停止時間を減らすことができるのです。
3つ目は、組技などで力の出どころを悟られないようにするため
組技では動きの支点や方向を読まれると、対抗されやすくなります。そこで普通はありえない逆方向の動きや、別方向の動きを同時進行させることで、感覚を狂わせることができます。
使用法については大まかに説明しました。詳しく知りたい方がいれば、また改めて。
八起堂治療院ホームページ https://www.hakkidou.jp/
この2週間、身体操作の話に偏りすぎだったので、そろそろ雑談に戻ります。
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