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同情と学び:ビールについて

最近は寒い。特に夜中から明け方は大気が氷のように冷たくなる。
僕はそんな気温を利用して、部屋の小さなベランダで缶ビールを冷やした。濡らしたティッシュペーパーを巻き、氷を乗せ、冷たい水が滴るようにした。
1時間後、ビールはとても冷えていた。僕は濡れたティッシュペーパーを破りとり、手のひらにその冷たさを感じた。
時間は午前3時半を指していて、冷たい風は僕の肌を撫でた。確実な冬の訪れに僕は震え、そんな冷気に僕はこの缶ビールがいたたまれなくなった。
そして寒かったろうなと同情した。
僕はすぐさま部屋に持ち帰り、タオルケットで温めた。それからおよそ30分。ビールは人肌までぬるくなった。
あんなに寒い外気のなか冷やして悪かったと謝罪しつつ、プルトックを開ける。
舌の上を滑り、喉を通り抜けたビールは不味かった。ぬるいビールは不味い。せっかく冷やしたビールであったが、僕は自らの馬鹿な真似に後悔した。
ぬるいビールは不味い。
それがこの夜で得たたったひとつの学びであった。

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