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人生いろいろ

 昨日、久しぶりに元の職場の同僚4人でランチをした。
80歳のTさんが、「皆に会いたい」と言っていたので、他の3人が都合の合う日を選んでTさんのお宅に近いレストランに集まったのだった。
 Tさんは、60代でヒマラヤトレッキングに行くくらい、女性ながらものすごくタフな人だった。60歳で定年退職してから登山、日本画(コンクールで入賞)、俳句・・・と正に「人生を謳歌している、という方であった。「人間はね、“いつも今がいちばん幸せ”って思うのがいいんだって」が口癖だった。
 私たち後輩(今はみな60代)も、Tさんの生き方には触発されてきた。
 世界を席巻した感染症のおかげで、しばらく誰とも会えない日々が続いたが、数年前、Tさんから「脳梗塞で入院している」という電話があった。驚天動地と言うのはこういうことかなどと思ったが、人と話すのも大変そうな様子のTさん。お見舞いに行きたくても行けない時期だった。それでも彼女は懸命なリハビリをして、こうして外で会えるようになった。やはり、“強い人”だと思う。
 もう一人のSさんは、今年の6月にご主人を亡くされて、今はお姑さんと2人で暮らしている。
 以前から闘病中だったご主人が亡くなって、葬儀の間ずっと泣き通しだった彼女。立派に育った息子さんと娘さんが傍で支えてくれていた・・・。
 その2人も東京へ戻り、今は彼女とキャラの濃い91歳の義母さんだけだ。
「夫の遺影に愚痴を言っても何も答えてくれない」と涙ぐむ。そんな彼女に何といっていいかわからず、他の3人はひたすら黙って聞いているしかできなかった。
 もう一人は60代の今までずっと独身で働いてきたIさんだ。実父母を看取って、今は自由な時間を過ごしている。週に2回パートで働き、社会とのかかわりを絶やさないようにしているという。夏に股関節の手術をしたということだった。そんなことがあったとは知らず、お見舞いにも行かなかったことを詫びた。「いいの。あまり人に言わなかったから。それに、今は元気に動けるから」と言ってくれた。「一人暮らしって、誰にも気を使わなくていいんだけど、病気やけがをしたときに困るのよね・・・。」
大きな家に女性がたった一人で住んでいる。最近はあまり珍しいことでもないかもしれないが、近くに頼れる姉妹がいるからIさんの場合は、まだ安心なのかもしれない。
 2時間くらいさんざんおしゃべりした後、「じゃ、またね。」とお互いの健康を祈ってさよならした。
 比較的元気で今のところ丈夫な私は、80歳のTさんを自宅まで車でお送りし、我が家に戻った。「人生いろいろだなあ・・・」と思いながら。

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