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この支配からの(中学校編)

『卒業』に関するエッセイ。
今回は中学校編です。
幼稚園編小学校編も書いてますんで、よかったら。

根暗が芽吹き始めた小学生。
しかし、このままではいけないとは焦りを感じていた。なぜなら、根暗は友達にはしたくない人種だから。
皆と同じように明るく振る舞わないと……
でも、でも……

私は、皆と同じように意味もなく同調するあの風潮がいまいち肌に合わなかった。
行きたくないタイミングで連れションの巻き添いにされたくなかった。
変な絵タッチになったガチャピンの靴下なんてお揃いで欲しくなかった。
ジャージの上着のファスナーをぶっ壊して、いつでも手で裂けて開けられるようにする謎仕様にも本当はしたくなかった。なんでわざわざ金を払って買ったものを、『クラスの流行り』という超絶局部的なファッションのためにわざと壊さないといけないのだ。
でも、それを伝える勇気は微塵もなかった。結局、私は所詮その程度の自我しか持てない人間。一部の”強さを持っているマイノリティ”に憧れるエセマジョリティだ。ファスナーをぶっ壊さなかっただけで除け者扱いは地獄すぎる。

私は、皆に合わせ続けることではみ出さないように細心の注意を払っていた。
話題の波に乗り遅れぬよう皆と同じテレビを観て、メールでは皆と同じ絵文字を使い、バドミントン部の大会の日には皆と同じようにさけるチーズを購入した。乳製品そこまで得意じゃないのに。

思えば、あの時も『皆が観てるから』って理由だった。
「もっちー、この番組観てる?めっちゃおもしろいよ!」
同じ部活で同じ帰宅方面の同級生がそう勧めてくれたのは、『爆笑レッドシアター』だった。

はんにゃさんやフルーツポンチさんといった旬の芸人さんたちのユニットコントを放送していたその番組は、部内でもクラスでも人気だった。
ましてや帰り道の同じ友人からオススメされたら観ない手はない。ここで乗らなかったら明日からの帰り道が楽しくなくなる!
そんな歪んだ思考回路の元、1時間コントを観続けた。
そして、ある方たちのコントを観た瞬間、ドプンという音が聞こえた気がした。
これが、お笑い沼に落ちた音だと気がつくのは遅くなかった。

当時、お笑い雑誌というものが各出版社から発刊されるほど、お笑いブームの熱い時代だったため、私は沼に突き落としたジャルジャルさんの載っている雑誌を買い漁った。
そのおかげで、他の芸人さんも気になりYouTubeで検索をかけたり、数年後通うことになる養成所のことを知った。
つい最近には、そんな彼らとお仕事する機会まで掴めたわけで。
今の私があるのは貴方がたの至極のコントのおかげなんです、なんておこがましすぎて口が裂けても言えなかったが、それでもこうやって関われたことをあの頃の私に言いたくてたまらない。


中学生だった頃の自分へ。
お笑いを好きになってから『自分の好きなもの』を知り、少しずつだけれど自分をさらけ出せるようになりましたね。
すぐ芸人さんのネタの真似を日常会話にぶち込んだり、思考回路が大喜利気味になりすぎたり、時にはさらけ出しすぎて他人に理解されなくなったりもしましたが、あの頃抱いた『この世で一番尊い職業・お笑い芸人さんを支える仕事をしたい』という情熱は、中学を卒業しても消えずにいましたよ。
おかげで今でもお笑いに囲まれて楽しい日々を送ってます。

あともうひとつ、夢がありましたね。
お笑い好きになってから特に『おもしろい』に貪欲になっていた頃、クラスの友人としていた交換日記で何気なく言われた
「もっちーの文章っておもしろいよね!」
という感想で、文章を書くのがより一層楽しくなって抱き始めた『文章を書く仕事がしたい』という夢。
あの頃は今見たらぶっ倒れそうになるくらい恥ずかしくてど痛い小説とか、思慮深さ皆無なのに無理して難しい漢字ばかり使って書いた短すぎる半生を綴ったエッセイとか、そんなものを誰にも見せずにルーズリーフに書いてはニマニマしていましたよね。人目にさらせなかった理由は、まぎれもなく自信の欠如だったことを今でも覚えています。一度だって作文コンクールで賞取れなかったもんなぁ。
でもね、そんなのを理由にしちゃいけなかったみたいです。無理したら、人は死にます。生命的なものの前に、まず心がポックリ逝くんです。そのことに大人になってから気がつきました。
今は子どもみたいな気持ちで、恥だと思ってたものをさらしまくってます。案外いいものですよ。私の文章を良いと言ってくれる人も少なからずいることがわかったし、何より好きなことをして生きるのは楽しいです。
あの頃叶わなかった『賞を獲って自信をつける』という野望、今更ながら叶えられるように頑張りますね。


卒業式も泣かず、これからの自分の未来にギラついていた中学生の自分は、私の根元にまだいる。

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