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ハムちゃん先生の音楽心理

毎朝、早朝の5時になると
図書館の書庫からピアノの音が聞こえてくる

ハムちゃん先生の朝の日課だ

起きたらまずピアノに向かう
そして必ず決まった曲を弾く

曲はJ.S バッハの平均律クラヴィーア曲集
第1巻第1番のプレリュードだ

曲名を知らない人でも
どこかで出会ったことのある
有名なプレリュード 

毎朝同じ曲を弾くことによって
自分の体調を知る
手がかりにしているのだという

まずは演奏を録音して
実際のテンポと自分の心拍数を記録する

少し速いなと思う日は
何だか焦っていたりする

いつもよりスタッカートがたくさんついて
軽快な演奏の日は
前日に嬉しいことがあった時

ちょっと重ためでテンポの遅い日は
二日酔いで胃もたれしている時

自分では気づかない心や体の状態を
ピアノが教えてくれる


音楽は不思議だなあと
ハムちゃん先生はいつも思っている


時間の感覚を麻痺させたり

何の関連もない過去を勝手に
引っ張り出してきたり

もう何年も忘れていたはずの
心の奥底にあった古い悲しみを蘇らせたり

音楽を聴いて心揺さぶられるのは
人間だけではなく
ハムスターもまた同じようだ

ハムちゃん先生は最近
音楽と脳の関係について
研究している


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