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ほどよいカオスが、クリエイティブ魂に火をつける

Google日本語辞書によると、カオスとは「天地創造以前の世界の状態。混沌(こんとん)。混乱」という意味があります。

私たちは、仕事をする上で、さまざまな情報を整理し、誰にとってもわかりやすい状態にしようとします。それは意識・無意識を問わず行っていると思います。

しかし、Hameeの会長樋口と、取締役であり八三財団代表理事の齊藤の対談では、あえてカオスを起こすことの重要性が語られていました。
弊社ミッション「クリエイティブ魂に火をつける」とカオスの関係が語られます。

お互いの印象

ーお二人は10年近いお付き合いですよね?10年も経つとお互いの印象は変わってきましたか?

齊藤:樋口さんは丸くなりましたよね。見た目もそうだけど、人間としても。以前はもっとギラギラしていた気がします。懐の深さというか、器の大きさが変わった印象かな。

樋口:たしかに10年も経つといろいろと変わるよね。子どもができて父親になったのも大きいね。もちろん上場を経験したのも、大きな経験。それまでは、自分でなんとかしないと、という気負いが強かったのかもしれないね。自分でも変化している気がするけど、修ちゃん(齊藤修一のニックネーム)は10年経ってもあんまりイメージ変わらないよね。ジメジメしていない。

齊藤:ジメジメですか?(笑)

樋口:そう。私は結構ジメジメタイプなんだけど、修ちゃんは鬱屈としたところが全然ない。修ちゃんは何かあったときでも、カラッと考えを切り替えて次の打ち手を考えられるよね。

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▲この日は、茶室でお茶をいただきながら

樋口:コロナ以前にも、修ちゃんから「これからはリモートワーカーがどんどん増えるよ」と聞いていたけれど、私はみんなで大きなことを成し遂げるためには人が物理的に集まらないと無理だと思ってて。だからコロナが流行りはじめた当初、リモートに舵を切るとき、意見が衝突したよね。

齊藤:かなり衝突しましたね(笑)。リモートに移行することは2人とも賛成だったけど、いつから開始するかの感覚が結構ずれていましたね。( Hameeでは他社に先駆け2020年2月19日から原則在宅勤務を導入開始 )

お互い、感染トレンドは見極めつつ、私は非常時だからこその先行者利益をとるべきと思いましたが、樋口さんは、業績バランスをみて、より慎重な方に寄って考えるのは経営トップとして自然だと思いますよ。

樋口:全体的に、自分よりも修ちゃんの方が感覚が2年位早い気がする。それだけインプットの量が多いのかなぁ。

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(右)PROFILE:樋口敦士(ひぐち・あつし)
Hamee株式会社 代表取締役会長

1977年生まれ、地元高校卒業、大学3年時に創業。その後、モバイルアクセサリーのEコマース、メーカー、卸売から、ECのマネジメントシステム、海外展開へと事業領域を拡張しつつ、2015年4月に東証マザーズへ上場、2016年7月東証一部へと市場変更。2021年7月から代表取締役会長に内定し、新規事業、クリ魂カルチャー浸透、経営者作りを進めていく。
(左)PROFILE:齊藤修一(さいとう・しゅういち)
Hamee株式会社 取締役 八三財団 代表理事

1976年生まれ、神奈川県小田原市出身。首都大学東京 工学部卒。一条工務店で住宅営業やSEを経験した後、RECRUITへ転職。法務・情報セキュリティ・内部統制・シェアードサービス等のグループ横断プロジェクトに従事した後、2013年5月より、Hamee株式会社 常勤監査役に就任。東証マザーズへのIPOや東証一部への市場変更に寄与。 2018年8月より、同社管理部門の取締役に就任。2021年5月より、Z世代のスタートアップを支援する八三財団(創設者:樋口敦士)の代表理事を兼任。

最初に感じたカオス

ーそんな齊藤さんが、うちの会社とはじめて接点を持った時のことを教えてください。

齊藤:2012年の秋頃でしたね。最初はただの会社見学のつもりで、まさか自分が入社することになるとは思っていなかったんだけど……来てみたらとてもユニークな会社だなと。オフィスのエントランスに社員が持ち帰れる本棚があって、司馬遼太郎の三国志が置いてあったのが印象的だったなあ。

樋口:当時のうちの会社に活気はあったかな?

齊藤:あったあった。なにかのパーティに呼ばれて、ケーキに顔を埋められてる樋口さんを見てびっくりしました(笑)。

樋口:なつかしいね。それまでビルの1フロアを借りていたけど手狭になったので、もう1フロアを借りて、その開所式を兼ねたパーティだったかな。

齊藤:雰囲気がすごくリクルートと似ているなと思いました。小田原にこんな会社があるんだ?!て思ったのを覚えてます。

樋口:東京に行けばもっと勢いのある会社はたくさんあるんだろうけどね!
会社に入るとすぐに勢いって伝わってくるよね。今のHameeには当時と同じような勢いはあるかな?

齊藤:勢いを生み出す要素で「カオス」って大切だなと。僕も、会社には子ども部屋のような、おもちゃや道具とかが不規則に散らかった状態が大切なんじゃないかと思ってて。とくにクリエイティブなことが生まれるためにはカオス、あえて混沌とした状態をほどよく創り出すことが大切だと思います。

樋口:そうだね。カオス!

齊藤:樋口さんはカオスを作るのが上手ですよね。IPOしたのもカオスをつくる仕掛けの一つ。それまでの流れを大きく変えるきっかけを強制的につくることで、みんなは新しい発想をせざるを得ないですもんね。オフィスを移転したり、組織を変えたり、ユニークな制度を作ったり……最近だとリモートワークをベースにしたオフィスリニューアルとかも。

樋口:ハードからくる刺激も必要だよね。組織や制度をどんどん変えていくのは、時代や状況に合わせて自由に動きやすくするための一つの方法。そうすると自然とカオスが生まれてくるんだよね。

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よりシンプルに、よりカオスに

樋口:いつも私が思うのは、会社の規模と比べて、ルールがいっぱいできると動きにくくなってしまうことがあるということ。それをどんどんシンプルにして、会社のスピードを上げていきたい。そして、よりカオスを加速していきたいということです。

まだ10年くらい前までは、自分でGoogleみたいな会社が作れると。ネクストエンジンだけで、楽天みたいになれると本気で思っていました。

いつしか、このまま自分が社長をしていたら、それは難しいと感じるようになったんだよね。自分の中でアッパーができてしまった感じ。光野くんの話じゃないけれど。

でもこれは諦めたわけじゃなくて、どんどんみんなに権限委譲することで、Googleみたいな会社が作れると思っているんです。

齊藤:たしかにルールがあることでスピードが低下することはありますよね。

よくセキュリティやコンプライアンスとかって、アクセルと対比したブレーキに例えられがちだけど、組織のガバナンスはみんなにそう思われたら多分うまくいかない。

本来、ガバナンスはブレーキではなくてトランスミッションなんです。トランスミッションって、日本語だと変速機なんですが、簡単にいうとエンジンの力を効率良く推進力に変える仕組み。

スピードを上げたい時はアクセルに応じてぐわっとスピードを上げて、急に停めたい時はブレーキに応じて停止させる。つまり車がスムーズに、かつ安全に走行できるように手助けするためのものです。

管理部門のスタッフがガバナンスを発揮するときに誤解を生みやすいので、ぜひこの考え方を忘れないで欲しいです。

樋口:そうだね。それは大切だよね。
あと私が課題として捉えているのは組織の形。リクルートなどがHameeと同じ規模だった時には、これほどいろんな事業はやっていなかったと思うんだよね。

新しいことを生み出すにも、今のHameeはいろんなルールの中でやらなければいけなくなっている。そういう構造的な問題もあるから難しいよね。

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個として強いか、愛があるか。それが裁量の決め手

ーどうしたらブレーキではなく、トランスミッションのようなスムーズな仕組みがつくれるのでしょうか?

齊藤:Hameeもいよいよ本気でそれを考える状況になってきたと思っています。徐々に権限をみんなに委譲していって、いろんなところに成長機会の仕組みを散りばめていくことが大事だと思います。

会社はみんなに平等に成長の機会を与えられるようにすべきで、新規事業へのチャレンジや福利厚生もそうですね。まずは機会をみんなに与えること。
その後の優秀な個を伸ばしていくために、与える裁量は不平等でいいと思っています。経営が未来を託したい人を選び、必要な裁量を渡していくことが大切。

樋口:どんな人に裁量を渡していくの?

齊藤:「個としての強さ」はもちろん、「ユーザーファースト」の感覚をあわせ持っている人ですね。そういう人の個性を発揮させていくのがよいと思っています。

樋口:「ユーザーファースト」。その価値観のすり合わせがとっても大事になるね。

齊藤:そうですね。自分たちのサービスを好きであること。それをユーザー目線で語れるといいですよね。なので、裁量を渡す際に大切なのは、個のパワーとして圧倒的に優秀で、クリ魂が燃えている。これが第一条件。

2つ目はユーザー目線で商品・サービスに愛を注げるか。それがあるかないかで向かうべき方向が全く異なってしまいます。今後、成長機会の仕組み、そしてどのような人材に、どんな裁量を付与していくか、次なる成長へシフトするためにも、とても大切なことだと思います。

これから組織をさらに成長させていくには?

ーどんな変化が必要だと思いますか?

樋口:第一フェーズは修ちゃんの話がそうだと思っています。でも今のカタチのままだと芽が出にくい状態。なのでHamicの組織は、実験的にティール組織を試しています。

これは私がやろうとしたというよりも、自発的にみんなの中から出てきたアイデアです。今はそれを実践しながら勉強中だけど、オレンジ組織(ピラミッド型。階層やルールが多い)だとHameeとしての強さが出せない。

上の人に気を遣っていたらクリエイティブなことはできない。それなのにHamee全体がそうなってきてしまっているようで……。

齊藤:先日のnoteでも記事になってましたね。

樋口:そう。あの記事でも書かれていたけど、Hamee全体をティール型に変えていくのは難しいと思っているので、小さいところから試していきます。

リーダーを任命せずとも自然に生まれてくる。こういったティール的な要素をHamee全体に入れて、社員の成長機会を増やしていきたいし、勝手に成長機会を掴んでくれるようにもなると思う。

齊藤:ティール組織でうまくいくには、優秀で主体性がある「個」が集まる必要があると感じてます。公開会社の場合のティール組織のイメージは、縦方向で複数のプロジェクトを並行して動かしつつ、横串で一定程度ガバナンスさせていくクロスファンクションなイメージ。

横串のガバナンスのかけ方が難しく、利害が対立しやすいので、うまくバランシングさせていかないといけない印象ですね。

樋口:主体性を持った優秀な人が揃っていたら一番いいけど、なかなか現実には難しいよね。そうじゃない人は評価されないし、いずれ組織から離脱するかもしれない。そうやって人それぞれにあった働く場所、働き方になっていくのかもしれないね。

齊藤:はじめは割合が少ないのは仕方ないと思う。その一部の優秀な人がクリ魂を組織内に延焼させていってもらえたら最高な環境です。なので優秀な個が生まれやすいように成長機会を平等に与えていきたいし、権限も委譲していく。そのためのカオスもほどよく生み出していきたいですね。

ここ2年くらいは、パンデミックもあり、いろんな環境変化が重なる中で、次なる打ち手の仕込みをしてきた状況。いよいよアクセルを踏み込むタイミングがきたかな。

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次世代に向けたスタートアップ支援、八三財団

ー齊藤さんが成長機会を与えようとする対象が広がってきましたね。

齊藤:八三財団ですね。2021年5月に、神奈川県西部エリアの地域資源の活用を促進し、次世代のクリエイティブ魂によって笑顔があふれる社会を目指して設立しました。この財団では次世代育成事業として、とくに25歳以下の若者たちが活躍する機会を提供しようと考えています。

ーなぜ若者にフォーカスしようと思ったんですか?

齊藤:せっかく樋口さんが設立する財団をやるなら樋口さんのDNAを継承していきたいと考えました。具体的には、アーリーアントレプレナーシップ(若い起業家精神)。樋口さんは大学3年で起業しましたし、それはとてもユニークで、Z世代をはじめとする学生起業はこれからもっとスタンダードになると思います。

それにSDGsやESGといったソーシャルやサスティナビリティの要素をからめたソーシャルスタートアップを盛り上げていければと考えてます。Hameeには投資事業もありますし、財団でシードの領域を盛り上げつつ、Hameeの投資事業とも良いシナジーが出せたら最高ですね。

樋口:スタートアップへの投資は以前から考えていたんだけど、特に若い人を見つけて、その人のクリ魂に火をつけたいという気持ちはありました。ちょうど修ちゃんのライフワークとも合致するかなと思って、お願いすることにしたんだよね。

ー樋口さんが八三財団に期待していることはなんですか?

樋口:地域を盛り上げるのはとても大切なことだと思っています。ただ、経済なくしては語れない世の中になってきている。そのためにもHameeがずっとクリ魂ファイヤーしている状態は永続させていきたいんです。

だから、若い才能ある人を発掘して、Hameeとコラボしたり投資させてもらったりすることで、Hameeにもプラスの影響があると思っています。もしかしたら、将来Hameeに入社してくれるかもしれないしね。

少し腹黒く聞こえるかもしれないけど、Hameeにもいい影響をくれて、その人にもいい影響をお返しできたらいいなあと

齊藤:それは最高ですね。iFaceユーザーのような若い10~20代は、それよりも上の世代の若い頃と比較しても価値観や関心事がかなり成熟しているので、早いタイミングで接点を持っておくことは会社としても大切なことだと思います。

そういう点でも八三財団では、Z世代を起点に、ソーシャルの領域からHameeのクリエイティブ魂に火をつけていけたらなと

未来への期待

ーでは最後に、お互いにリクエストすることはありますか?

齊藤:お茶かな。経営者として成功した樋口さんなりに納得の行くところまで茶の世界も突き詰めて欲しいです。ビジネスの世界からお茶の領域にも広げていくことはとてもユニークなチャレンジ。まさに両利きの経営であり深化と探索

会長職になったけど、これが引退だと誤解されないようにしてほしい。お茶からビジネスに通じるものがきっとあるから、それを昇華させて起業家として新たなステージにいって欲しいです!!

樋口:他の取締役たちとずっと心を通わせて、一緒にやっていければ必ずいい世界が作れると信じているので、期待しています!!

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さいごに

他の取締役とは少し異質な齊藤の、自分を含めて俯瞰し、客観視している姿勢が感じ取れました。そんな視点があったからこそ、八三財団が生まれたのだと思います。すでに財団1期生として活躍の場を広げている若者への支援が多数生まれています。

このように手を変え品を変え、Hameeグループがやりたいことは、引き続き自由な発想でイノベーションを起こすこと。そのための環境づくりです。

今後も、ほどよく混沌としたカオスで、どれだけ多くのクリエイティブ魂に火をつけるのか。今からとても楽しみです。

◆記事を書いた人

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PROFILE:豊田 佳生(とよだ・よしお)
好きなものは、昼寝・うたた寝・猫との添い寝
好きな言葉は、ならぬ堪忍するが堪忍



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