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金閣寺を読む  第六章  花子出版

こんにちは。

金閣寺を読むも後半戦に入って参りました。記事を書きながら改めて読み返すと、記憶から抜けていた部分が幾多にあります。そこから新たな発見があり、感情の高揚と哲学や倫理の指針の啓蒙になるわけです。

ではでは、第六章が始まります。


梗概

鶴川が交通事故で喪に服して一年が経過した。溝口は孤独に慣れ、殆ど口を聞かない生活を送った。享楽の場所は図書館となり、翻訳の小説や哲学やらを手に取った。

大学予科へ進んで二年目、昭和二十三年の春休みのとある宵、老師の留守だった。友のいない溝口は、月に照らされ散歩に耽り、そして柏木を迎えた。
柏木は他界した伯父から二菅の尺八を二つ貰い、その一つを溝口に渡しに来たのだ。
二人は金閣寺第二層の潮音洞の手摺にもたれ掛かり、尺八を手にする。柏木が吹く巧みな音色に、溝口は驚く。そして真似をしようと尺八を吹くも、音はでなかった。
溝口は尺八を吹く柏木について考え、柏木が永保ちする美がきらいだと分かった。たちまち消える音楽や数日で消える生け花を好み、建築や文学を唾棄していた。

柏木からもらった独習本をたよりに、溝口は毎夜尺八の上達に勤しむ。次第に「白地に赤く日の丸染めて」などを吹けるようになった。
そして、溝口は尺八をくれた柏木にお礼をしようと考え、柏木に欲しいもの聞く。柏木は生け花ようの木賊を要求した。金閣付近に咲く木賊を盗んでくるようにな言い回しだ。溝口は軽く請け合い、摘んだ木賊を抱えて柏原の下宿先へ向かった。

溝口が摘んでた木賊などを使い、柏木は生け花をする。その見事な生け花に溝口は感銘を受け、生け花をならった経緯を聞く。柏木は
「近所の生花の女師匠だよ。もう時期ここへ帰ってくるだろう・・・」
と続けた。女師匠とは、南禅寺で溝口と鶴川が感動に襲われた兵隊の前で乳を出し、母乳を茶の中に入れた女のことだった。

女の到着に溝口は期待していたが、女が到着すると心は波立たなかった。女は柏木の生け花を褒めた。すると、柏木は言う。
「巧いでしょう。このとおり、もう、あんたに教わることは何もないんだよ。もう用はないんだよ、本当に」
この言葉に女は顔色を変え、
「何や、こんな花! 何やね、こんなん!」
と叫び、柏木が生けた花を引っ掻き回す。柏木は女の髪を掴み、女の頬に平手打ちを浴びせる。女は両手で顔を覆い、部屋を駆けてでた。
柏木は溝口に女を追って慰めるようにいった。溝口は柏木の言葉の威圧に押されたのか、女への同情か、両者の曖昧な感情を抱きながら女を追った。

溝口は女に追いつき、話のため人通りの少ない裏通を歩き、引止められるまま女の家にはいった。
溝口は南禅寺で見た奇行を女に話した。女は昂った喜びに浸り、涙を浮かべた。更には、先ほど溝口から受けた屈辱を忘れ、思い出の中に逆様に身を投じ、昂奮の続きを別の昂奮に移し変え、ほとんど狂気となった。
女は衿を崩し、母乳がでなくなった白い乳を出した。
溝口はある種の目眩が多少はあったが、詳さに父を見た。しかし、それは証人となるに止まった。あの山門の楼上から、遠い神秘な白い一点に見えたものは、このような一定の質量を持った肉ではなかった。あの印象があまりにも永く発酵したため、目前の乳房は、肉そのものであり、一個の物質にしかすぎなくなった。しかもそれは何事かを愬えかけ、誘いかける肉ではなかった。存在の味気ない証拠であり、生の全体から切り離されて、ただそこに露呈されてあるものであった。
溝口の思索が進み、女の乳母が少しずつ美しさを帯び始めた。溝口にとって、美とは遅くくるのだ。
しかし、次の瞬間、溝口の中で再び金閣が出現する。乳房が金閣に変貌したのだ。

金閣まで帰る道中、溝口の心中に金閣と乳房が交互に現れ、恍惚の裡にあった。だが、金閣寺の総門が見えると、無力が立ちまさり、酔いの心地は嫌悪に変り、何ものへとも知れぬ憎しみがつのった。
溝口は独言する。
「又もや私は人生から隔てられた! 又してもだ。金閣はどうして私を護ろうとする? 頼みもしないのに、どうして私を人生から隔てようとする? なるほど金閣は、私を堕地獄から救っているのかもしれない。そうすることによって金閣は私を堕ちた人間よりもっと悪い者、『誰よりも地獄の消息に通じた男』にしてくれたのだ」

そして、溝口は眠らぬ金閣を前にて荒々しく呼びかける。
「いつかきっとお前を支配してやる。二度と私の邪魔をしに来ないように、いつかは必ずお前をわがものにしてらるぞ」


以上梗概。



以下、私の読書感想。

いやいや、感服です。物語は川の流れのようにさらされと進みますが、感情へはグイグイと入り込んできます。南禅寺で乳を出し奇行をしていた女との稀有な再会、このあたりの付箋の回収と金閣寺への対峙はいうまでもなく、傑作でしょう。
内翻足の柏木は吃音症の溝口に何を求めているのでしょうか。溝口の人生を好転させたいのか、将又破滅へと向かわせたいのか。これは最終章まで、考える必要があります。



では第七章で、お会いしましょう!!!
金閣寺、永遠に。

花子出版  倉岡剛

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