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生一本の戸隠そば祭り

ほんの数ヶ月前まではあんなに寒かったのになぁ。
戸隠のそば祭りに訪れると、そういう気分になる。
その年によって違うのだが、だいたい10月の末に、
戸隠ではそば祭りが開催される。
4枚綴りの手形を購入し、参加各店の半ざる(3ぼっち)
食べ歩きができたり、献納する蕎麦の、蕎麦打ちが見られる。

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これが、蕎麦打ちの様子。
左の人が水回しをし、中央の人が伸ばし、右の人が切る。

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これは、水回しが完了した蕎麦を、伸ばす人に手渡す瞬間である。
その後、切り役の人に伸ばした蕎麦が手渡され、トントンと小気味よく切られ、蕎麦打ちが完了。

このあと、新そば献納行列となる。
行列に参加する人は名前を呼ばれるのだが、この呼び方が面白い。
例えば「山田太郎」さんなら
「やまだのー、たろう!」
と呼ばれる。いわゆる、源頼朝、紀貫之などの方式である。
呼ばれたら返事をしなければならない。
「やまだのー、たろう!」
「オー!」
これは、エイエイオー!の方式である。
あの「オー!」で元気よく返事をすることが求められる。
ここは我々観光客のためにも、大きな声で返事をして頂きたい。
「オー!」「オー!」と、元気いっぱい行列が完成し、蕎麦を献納する。
当記事の見出し写真が、その行列の様子である。

しかし、何故だかわからないのだが、毎年奉納する場所が
奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社、その年によって違う。
つまり、開催場所も、中社前広場であったり、奥社であったり、様々なのだ。中社前広場のほうが観光的には馴染みがあるので、そこでやるだろうと思い込んでいると、後で慌てることになる。

献納後は、入場制限があるのだが、太々神楽が舞われ、
そこで天の岩戸の物語を見ることができる。
力強い舞と鈴の音は、何だか心洗われるようだ。
なんせ、天手力男命(アマノタヂカラオノミコト)が
宮崎県高千穂でエイヤッ!とぶん投げた戸が
この長野県の戸隠の地まで飛んできたというのだから驚いてしまう。

そうしてようやく、観光客お待ちかねの振る舞いそばの時間がやってくる。
戸隠太鼓の演奏も披露され、抹茶が振る舞われたり、そばがき体験なんかもあって、戸隠神社周辺は途端ににぎやかになる。

振る舞い蕎麦は、以前は、蕎麦店の店主たちが打っていたのだが、
今は、蕎麦部の高校生の手によって振る舞われている。

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美味しいですよ、高校生の手打ち蕎麦。
とても楽しそうに打っているし、そんな姿を引率の先生たちが目を細めて見ている。とても微笑ましい光景だ。神楽同様、心洗われる。
しかし、この振る舞い蕎麦を食べてる時間が、気が抜けない。
地元テレビ局の取材班がいるのだ。観光客はインタビューに狙われる。
テレビ出演は恥ずかしいので、逃げ回っていたら、
地元の新聞社の方に捕まった。
まぁ、顔が出ないからいいやと、楽しく取材を受けつつ、お話する。
なぜか、記者さんと長野県産のワインの話で盛り上がった。

旅を終え、帰宅してしばらくすると、新聞が郵送されてきた。
取材を受けた新聞社の方が、新聞を送ってくださったのだ。
中を見ると、取材の内容が、きっちり一言でまとめられている。
この小さな記事を書くために、わざわざ現場に行き、
その空気を伝えていることに感動してしまう。
新聞記者の仕事の一端を感じることができて嬉しかった。
これも旅の大切な思い出である。

しかし、あの一言を書くために、
呑んべえ女のワインの話にまで付き合うなんて大変だなぁ。
改めて記者さんの辛抱強さに感動しまう私であった。



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