見出し画像

3部構成ハーモニーの日、3 ・後編

病院を出て。 一番近い 蕎麦とんかつ屋さんに行った。 

何にしようかな、おろしそば。 うん、でもあったかいのが食べたいな。


 まわりは かなり都会だった。 

商店街 工事中の高いビル 

路面電車が走ってる

久しぶりの都会だ。

私は、 喉が痛くてちょっと咳が出ていたから。

マスクをしていた。


せっかくまで来たんだから海が見たい。 

越前海岸までは、かなりの距離があった。

山道。 でも目の前をバスが走っていた。

昔の人は、この海岸沿いにどれだけの労力を費やして、この道を作ってくださったんだろう。

そんなことを思いながら ぶつぶつ話しながら、車は走った。

夕方に差し掛かっていて、日は落ちそうになっていた。 


画像1

やっと海が見えて広い海。

さざなみを感じていた。

海を見るのは何年ぶりだろう。 広いなあ。 広いなあ、本当に広い。 

鳥たちが 飛んでいて。

ちょっと動きが違うけど、まるでさっきのピアノの音の音色の子たちみたいだった。


風は冷たかった。 寒かった。 でも、

海が でも私を落ち着かせてくれた。 

朝からのあれはなんだったんだろう。ちょっと笑えてきた。

そして道の駅で温泉に入った。

屋内の温泉から窓が一面海側を向いていて、海を見ながら温泉に入れる。 

なんて素晴らしいんだろう。

日本人に生まれて本当に良かった!と思うのはこういう時だ。 


小さな女の子を二人連れたお母さんが入ってきた。子どもと一緒になって喋ったりしてて。

お母さんが露天風呂の外に行こうか、って言って言うから、外もあるんだ~!って私は初めて気がついた。 

じゃあ行こうと思って、私も後ついていったような感じで入った。 

そしたら露天風呂もやはり海が見えた。 

湯船の中に大きな岩が座れるように置いてあって、 お姉ちゃんの女の子が「座れたよ」って。 嬉しそうに言ったから、私が「本当だ!すごいね!座れたね!」ってしゃべったら、女の子が笑った。

そしたら妹ちゃんの子も、「私も座るー!座れたぁー!」て言うから、「もうすごいね!座れたねー!」って言ってキャッキャッとしゃべって。


お母さんが「どこから来られたんですか?」って言うから「岐阜からなんです」ってわたしは答えて。

逆にお母さんに「どちらから?」って聞いたら「滋賀の草津なんです。高速道路が使えないからちょっと遠いんですけどね」って話してくださって。

お湯で温まりながら、海を見ながら、遠くの方に船がいくつも浮かんでて。

海だみおの海だ海よ、海よ海よ、歌いながら 心の中で歌いながら。

海はいいなあ、

今度はもっと陽のある時に来て海を感じたい。

と言っても入るのは冬の海じゃなくて、温泉だよん♪

脱衣場に女の子達が後から来て。 

マットにペタンと二人とも座って、お姉ちゃんが妹に、

にゃんにょにょにょにゃんにょにょ

うんにゃにゃにゃにゃにゃ?

にょんにょんにょにょにょよん

て、わたしには聴こえる。

喋ってる姿がまたなんとも可愛らしくていい。

「女の子二人だと可愛いですね」って、さっきのお母さんに話しかけた。

そしたらお母さんは「えー、ずっと話しててうるさいくらいですよ。そちらは何人ですか?女の子?男の子?」って言われたから、

これは答えなくてはと思って。

上は女の子で、下が男の子で。

でも、 

と言いかけたが、そのこたちが『猫』だということは言えなかった。 。。


「下の子の方がもうやんちゃで、上のお姉ちゃんの方が、もういい加減にして~って感じになってます」とわたしは言って

お母さんと二人で笑って。

でも、ふたりが『意志疎通もできる猫だ』ということは言えなかった。


そうしてあとは帰路。

帰ってきてから、猫たちごはん

画像2

遅くなってしまって冷蔵庫から出したままでは冷たかったから、

少しボイルした地鶏ささみと昆布


そして、

Facebook の 今日のこの日の思い出、出来事を伝えるお知らせがあった。

 四年前。 私は海を見ていたことを想起した。 

あの海。 意識のない亡父と 最後に歩いたあの海を。 

今年 になってようやく 和紙のアートとして制作することができ、美術展に出した。 

あの海を見てたのがちょうど。

この日だった。

父の命日は20日あと6日後だ。 

これで四年になる。 

早かったような。 遠かったような道のり。

 本当に色んなことがあった。 

そして私はまだ生きている。

 不思議なことに。 

生まれた時に、もういつ死ぬか、いつ死ぬかとさんざん言われたわたしがこうして今生きている。 

そして、 同じ場所ではないけど。 同じ海を見てきたのだった。

本当に。 四年。 

早かった。 

そして長かった四年間 だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?