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うどんとかつ丼

六月も終わり七月に入ったがまだどこか気怠さを覚えてしまう天気。

梅雨

気付けばもう、1年の半分は終わってしまいました。


先日、技術の強化ということでスタッフと「カウンセリング」について話し合いをしました。そこで上がった『うどん と カツ丼』の話を。

アメリカのサロンに勤めていた頃、そこの日系サロンのオーナーは60才を越えている人でした。そのオーナーは技術もでしたが、会話や人間性でお客さんを掴んでいる人でした。飛行機でわざわざオーナーにやってもらうためだけに来てくれる人や物凄くVIPなランクのお客さんなど、流石ニューヨークで30年間現場に立ち続けているだけのことはある人でした。

その頃の自分は技術には自信があったんですが、何か伸び悩みを感じていました。そのオーナーと食事に行った時に何となくその話をしたらオーナーが

「Shin お前を料理人だとする。そしてお前は世界で一番うまいカツ丼がつくれたとする。それでお前の目の前にいるお客さん達になにも言わずにそれを出してみんな満足すると思うか?」

それを聞いたときに、よくわからなかったので とりあえず

「最善を尽くしてカツ丼つくりますかね?」

というとオーナーがちょっと考えて

「そりゃあかんで、みんながそれを求めとるとは限らん、例えば うどん が食べたい人に無理やりカツ丼だしてみ、その人はもう来んくなるで。要は相手が何を食べたいかやで、うどん食べたい人に世界一のカツ丼出したって喜んではくれん。まずは普通のレベルでもいいからうどんを出すんや」


その話を聞いたときに何かがストンと落ちたのを覚えています。今思えばその頃の僕は自分のスタイルを前に出し過ぎていたのです。「このスタイルこそが一番だ」「カットの展開図がすべて」「ドライカットで切るからすごい」などカナリ頭でっかちの状態になっていたんだと思います。

続けてオーナーが

「お前のカットはカツラを被せてるだけや、それじゃぁアカンで」

その一言を言ってこの話は終わりました。

僕にとっては成長できる大きいヒントを貰いました。その日を境に自分のお客さんに対るスタンス、スタイルが変わりました。単純なものでも普通と言われるスタイルもお客さんの生活にどう作用するかを考えて切るようになりました。

そのおかげか、お客さんとの信頼関係がより密になったのとリピート率が一気に上がったのを覚えています。美容の仕事がより好きにもなりました。

今のスタッフにもこの話をもっと具体的に技術的に話しています。彼らにとってもしかしたら大きいヒントになるかもしれないし、ただただスルーしていくだけかもしれない。でも、彼らにとって僕がヒントを与えれる存在になれるように、いろんな事を話し合っていきたいと思います。

Hanano Shin

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