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ウィスパー

 先日投稿した「『新登場』という言葉の響きが怖いという話」の記事の中で、言葉の意味は怖くないのだが、その言葉の持つ響きが怖いと感じる言葉は「新登場」の他にもたくさんあるけれど、今パッと思いつかないのでまた思いついた時に書きたいと思うと書いた。
 それに対して、いつもコメントをくださるフォロワーさんから、「思い出したら次もおねがいします。一つだけでは分からないことも見えてくるかもしれません」というようなコメントをいただいたので、少し考えてみた。
 そして思い出したのが、「ウィスパー」である。
 この場合は、「ウィスパー」という言葉の響きその物が怖いというのに加えて、それがいったいどのような物なのかが、初めてそのCmを見た4歳か5歳ぐらいの自分にはよく分からなかったことが、さらに怖さに拍車をかけていたように思う。
 「ウィスパー」とはいったい何なのだろうか。Cmを見る度にずっと気になっていた私は、ある時思い切って「ねえ、お昼のドラマのコマーシャルでやってるウィスパーって何?」と、盲学校の幼稚部のY先生(女性)に聞いてみた。
「あのね、女の人には体の中に赤ちゃんを育てるベッドがあってね、ひかちゃんがもう少しおねえさんになると、毎月体から『赤ちゃんを育てるベッドの準備ができましたよ」ってお知らせがくるようになるの。ウィスパーはその時に使う物だよ」
 とY先生は教えてくれた。
 ようするに生理のことなのだが、まだ幼稚園児だった私には、Y先生の説明を聞いてもいまいちピンとこなかった。
 体の中に赤ちゃんを育てるベッドがあるってどういうことなんだろう?体から毎月お知らせが来るってどういうことなんだろう?
 女の人は大人になったら赤ちゃんを産むということは何となく知っていた。しかし体の中にある子宮や膣の存在、さらには女の自分にはそのうち生理というものが来ることを、当時の自分はまだ知らなかった。
 だから結局その時は「ウィスパー」がいったい何だったのかはよく分からなかった。私が「ウィスパー」、および生理の存在を本格的に知ることになるのは、それから数年後だった。

 それにしても、今改めて思い返してみると、「ウィスパー」、そして生理についてのY先生の説明は、なんて素敵な表現なのだろうと思う。生理に対する汚らしさや嫌悪感といったネガティブなイメージを全く感じさせないような言葉のチョイスは本当にすごいなあと思う。
 私もいつか子どもから生理や性について質問された時には、あの時のY先生のように、素敵な表現で答えられるような、そんな大人の女性になりたいと思った。

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