なぜか忘れられない景色
私には、なぜだかよく分からないが、忘れられない景色がある。
それは高校時代、所属していた弓道部の放課後練習に向かっていた時のことだった。
その日に何か特別なことがあった覚えはない。
ただいつも通り、昨日と同じように、学校を出て、少し離れたところにある弓道場へ歩いていたのだ。
私は一人で部活へ向かうことが多かった。
なぜかというと、私以外の部員のほとんどが、普通科に通っていたからだ。
私は、課外授業のある異なる科に所属していた。
毎日、勉強と部活をする日々で、とても忙しかった。
他の部員と違う時間帯に練習をすることになる日も多々あり、
それによってすれ違いが生じることもあった。
そんな状況で、私はその日も弓道場への道を歩いていたのだった。
昨日も渡った橋。
その橋の上を歩いていた時。
何気なく、顔を上げて、川の向こうへと目を向けた。
徐々に夕焼けに染まっていく空が、水面に反射していた。
「綺麗。」
ただ、そう感じた。
普段はそこまで景色に心動かされることは多くない私だったが、
その景色はなぜか特別に映った。
これを見る瞬間のために、弓道部に入ったのかもしれないとすら思った。
忙しい日々と人間関係の難しさで、
知らず知らずのうちに心に溜まっていた疲れや、やるせなさが、
その何気ない景色を、私に特別に見せたのかもしれない。
あの時、なんとなく、この景色はずっと忘れないかもしれないと思った。
そしてその直感は今のところ間違いではない。
こうして今も、思い出しているから。
読んでくださり、ありがとうございます。