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公式では書けない勢いとパワーのお茶レポ - はるとなりの「やぶきた」

これ以上の「やぶきた」を、僕はまだ知らない。

国内に存在する120以上の品種の中で、生産量シェア70%以上を占める圧倒的王者・やぶきた。日本の茶農家でやぶきたを作っていない生産者はほとんどいない。少なくとも僕は会ったことがない。

やぶきたは1908年に杉山彦三郎が発見し、彼の死後大ブレイクした品種だ。一時は静岡県の生産量シェアの90%以上を占めていたこともある。ついぞ生前評価されることのなかった彦三郎翁の無念は推して知るべしだが、安心して欲しい。彼の歴史と功績は僕らが紡いでいく。

そんな緑茶の王者・やぶきたの、そのさらに頂点。やぶきたの中のやぶきた。日本茶ってこんなに美味しいのかと、種々のお茶を飲んできた僕でも思い知らされる。

何がすごいって、味がめちゃくちゃデカい。このお茶の中にはいろんな味がある。濃厚な旨味、味に陰影を生み出す苦渋味、力強さを感じる火香と熟練の火入れが引き出したお茶の甘味。そして何より、これぞ日本茶という風格すら感じる王道のやぶきたの香り。

その重厚な味わいが口内にジュワッと広がり、余韻も十分。最後は舌に柔らかな渋味を残してゆっくりと消えていく。そしてその全てがどこまでも優しい。作り手である永山さんの人柄が表れたような、穏やかでまろやかな味わい。茶樹に注がれた彼の情熱と愛情の結実。滴る雫は黄金の一滴となり僕の心を揺らす。正直に飾らず、誇張もせず、このお茶を飲む度に少しだけ感動してしまう。

もちろん玉露や手摘み手揉みなど、手間暇をかけて作られたハイグレードで美味しいやぶきたは他にも沢山ある。けれどもそんなことは問題じゃなくて。鹿児島県南九州市、頴娃の山中に広がる青々と美しい茶畑。麗かな日差しにキラキラと輝き揺れる茶樹。

あの風景を知った僕にとって、これ以上のやぶきたはきっと無い。

20210228_ながやま園(はるとなり)009

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