どこまでも走ってきたねいすゞのトラック(ウラジオ日記11)

路面電車に乗る。レトロでかわいらしいデザイン。木の椅子。他にもいくつか車両があるようで、それもかわいい。終点で降りる。巨大な工場があって、大きな配管が道路の上を渡っている。小さい川が流れていて、その上にも配管が延びている。さび付いた配管には穴が開いているみたいで、何かの液体が川に向かって盛大に噴出している。

近くにクラシックカー博物館があって、入ってみる。うっすらとかかるソ連ポップスとクラシックカー。車の間には点々とマネキンが置かれていて、それが異様な雰囲気をかき立てる。自分のほかに客はなく、古い衣装を着せられたマネキンがこちらをぼんやりと見ている。古いポップスと自分の足音しかしない。

奥の軍用車が展示されているスペースだけ少し暗く、近づきがたい怖さがある。怯みつつ、ゆっくりと中に入るとマネキンのほかに何かをにらむ軍人のパネルが置かれていて、壁に貼られたソ連のプロパガンダポスターと共に威圧される。その空間だけポップスの音が遠ざかる。

さっさと部屋を後にすると、興味もない車をダラダラと見る。うっすらとかかるソ連ポップスが心地いい。ここにあるようなロシア製の車は町でほとんど見かけない。走っているのは日本車ばかりだ。でも日本人よりも似合っている気がする。シャレっ気のない、ぶっきらぼうな車体がかっこよく映る。洗車という概念がないのか土ぼこりでみんな汚れている。車にはまったく詳しくないから、わからないけれど、多分みんな古い型の日本車だろう。どうやってここまでやってきたのか。

日本語の書かれたトラックもよく見かける。

「天狗納豆」

「ニッポンレンタカー」

「土浦(建)」

「エリサ」

「那賀生コン(株)」

「日本コレクション」

どうしても目に止まる。やはり文字を理解できる分情報量が多いから、頭の中に入ってくる。キリル文字の中にぽつんと置かれた、日本語はそれだけで詩的に見えた。


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