ウラジオ日記

惑星ソラリス(ウラジオ日記39)

スプートニクは今ロシアで流行しているブランドで、白地に青い直線が一つというシンプルなデザインが人気を博している。服を裏返すと必ずお店を象徴するマークが大きくプリントされている。白い宇宙帽のフェイス部分が真っ赤に塗られ、それを青い正円で囲んだマークはシンプルながら目を引くデザインでかっこいい。目を引くといっても裏地に描かれているから目には止まらないのだが。

店内には白のジャケット、白のパンツ、白の

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本を読むなら電車の中で(ウラジオ日記38)

ロシアの本というのは長いイメージだ。ぜんぶ、ドストエフスキーの所為かもしれない。それともめちゃくちゃ本を読む国民性なのだろうか。公園で見かけた本棚はその証明なのかもしれなかった。誰もベンチに座って本を読む人はいなかったけれど、本棚には色んな人が持ってきたであろう本がたくさんに詰まっていた。

公園の他にも本棚を見かけたそれは電車だ。電車の中に本棚がある。日本みたいに満員になることもないから、それは

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魔法劇場(ウラジオ日記37)

ウラジオストクにはいくつか劇場がある。演劇、オペラ、バレエ、サーカス、人形劇、劇場文化が町を彩っている。中でも感動したのは魔法劇場だ。日本語で書くとおかしな感じがするが、英語にすればマジックシアター。マジックの上演が日夜行われている劇場である。

マジックと言うとタネも仕掛けもあるものをイメージするが、それを翻訳した魔法という単語にはトリックの匂いはしない。魔術も奇術も手品も英語にしてしまえばマジ

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帰り道(ウラジオ日記36)

ウラジオストクに着く頃には夜がもう降りていた。お土産も買ったし、特にしたいこともない。飛行機までの時間をもて余しながら、町をふらつく。バッグの中には、お土産に買ったワインが二本入っていて肩が重い。受託手荷物ができないチケットだったから、ワインは飛行機に持ち込めずに没収されることになる。係員が乾杯してくれたらいい。

愛着の湧いた町を見るでもなく眺める。昨日目に焼き付けてしまったから、今更見ることは

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シベリア鉄道の車窓(ウラジオ日記35)

異国で電車が来ないのは本当に焦る。いや、あてがなければ気にしないのだが、飛行機の時間があるから焦っていた。乗るはずの電車は時刻表に載っていないし、誰も英語は喋れないから遅れてるかすらわからない。駅員に聞いても大丈夫と言うだけ。遅れてると言ってくれるだけで安心するのにそれさえ教えてくれない。駅の売店でビールを買って飲む。また気になって駅を歩いていたら、警備員に呼び止められてビールを捨てさせられる。駅

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書を捨てよ、町へ出よう(ウラジオ日記34)

ガイドブックを見ると、地図の中で観光地は密集している。後は車で行くような遠いところ。もう見るところもないかとちょっとだけ旧市街に寄ってから、駅に戻る。電車があるかわからなかったけれど、もしなかったらタクシーに乗ろう。途中のかわいい野良犬はどこかに行ってしまって会えなかった、残念。

駅の時刻表はわかりにくい。ウラジオストク行きも、空港行きもないように見えた。駅員に聞いてみると、16:30に来ると言

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漂う、空飛ぶ、浮かぶ、見上げる(ウラジオ日記33)

左の前歯が抜けた青年とすれ違う。くちびるごと欠けているようで、口の奥に黒い空洞が垣間見える。その後も二度ほどすれ違った。小さな町だから、同じ人とすれ違うのはよくあることだ。ウラジオストクでもすれ違うくらいだから。

ウラジオストクのバス停で話しかけられたアジア人の青年や、ケーブルカーで見かけた日本人の三人組と、また違うところで会ったりした。ウラジオストクは小さい町だなと思った。でもウスリースクは更

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一日遅れの日曜日(ウラジオ日記32)

町の奥の方に行くと、途中サーカスの廃墟を見かける。古いポスターがまだ貼られていて、ソ連時代のポスターアートの雰囲気が感じられる。サーカスはテント小屋みたいで、イメージしていたサーカス小屋に近かったから潰れていたことを口惜しく思う。しかしとても趣がある。

日本のどこかの田舎で見た、ストリップ小屋の廃墟を思い出す。それが少し明るい外装をしているものだから、くすんで錆付いた赤色が目に残っている。かつて

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ロシア正教会(ウラジオ日記31)

スーパーを見つけるとロッカーに荷物を入れ、大きく伸びをした。さあ観光だ。さっき見かけた教会の方に向かってみる。

ウラジオストクでも二度、教会を訪れた。一度目はバス停を求めてさまよっていた時とても綺麗な鐘の音が聞こえてきて、そちらを向くと大きな教会があった。歩いて近づくと、複数の鐘が複雑なリズムで鳴らされている。教会でイメージする大きな鐘楼とは違い、大小さまざまな鐘が独特なリズムを紡ぎだしている。

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犬町(ウラジオ日記30)

プーシキン通りを進む。結構長い。でも知らない道は長く感じるものだ。戻るときにはいくらか短く感じるはず。時々バスが横を通り過ぎる。もしかしたら駅からバスに乗って出られたかもしれないと頭をよぎるが今更戻る気もしないので考えないことにする。ウラジオストクが街ならここは町だろう。少し田舎めいていて、家と家の間に隙間が広い。まっすぐ進むと大通りにぶつかる。そのあたりからは市街なのだろう。家の隙間が狭くなる。

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