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「特別版”いれものがたり”×中竹竜二」イベントレポート

2023年8月2日、株式会社チームボックスの中竹竜二さんをゲストにお招きした特別イベント「いれものがたり×中竹竜二」を開催しました(開催概要はこちらから)。

スポーツとビジネスの世界で自身の道を切り開き、「コーチのコーチ」として多くの人々を支援し続けている中竹さん。

当日は、中竹さんがご自身の器をどのように形成していったのかというエピソードを掘り下げてお伺いました。

どのエピソードも大変面白く、私たちにとって器を磨き大きくしていくうえでの重要な示唆をいただきました。

印象的な内容をまとめましたので、当日の雰囲気を感じていただければ幸いです。

●小学生時代の読字障害に悩んだ経験

はじめに、小学校の国語の授業で教科書を音読する際、どうしても自分だけ上手く字を読むことができなかった経験を語っていただきました。

担任の先生に相談しても「努力が足りない」と一蹴され、両親に相談しても「そんなの私も読めないわよ」と、あまり勉強をしたことがない母親からは軽く流されたと言います。

誰も自分の真剣に悩みに付き合ってくれないことは相当辛いもので、悔しい気持ちでいっぱいでした。

どうにか自分で解決しなければと考え、次の国語の授業の前日に徹夜して、該当部分を必死に暗記したと言います。

翌日、予想した通り、国語の授業で自分の番が当たり、前日に覚えた甲斐あって、なんとか音読をやりきることができました。

しかし、それは他の人にとって当たり前にできることだったため、誰からも褒められることなくスルーされて終わりました。

せっかく頑張ったのに、全員から無視されたことに、当時は大きなショックを受けたと言います。

その日、学校から家に帰った時、どうしても家の中に入ることができず、庭で一人で立ち留まるしかなかったとお話されました。

そのとき、これからの自分の人生は大変だなと思って、一人でリフレクションをしていたのですが、最終的に2つの結論に行き着きました。

まず、自分は人から褒められることを勝手に期待していたのだと気づきました。それを続けていても辛い思いをするだけなので、そうした承認欲求を手放そうと考えました。

もう一つは、人の十倍努力すれば、平均くらいに到達することができるのだとわかりました。だから、これからの人生は、人の十倍は頑張ろうと決めました。

この出来事をきっかけに、何事においても自分は不器用だから、圧倒的に人よりも時間をかけてやるという覚悟を持ちました。
自分で努力したり、自分なりのやり方を考えていく力が、この経験を通じて身に付いたと思います。

その時、誰も手を差し伸べてくれなかったのですが、そこで卑屈にならなかったのは、この悔しさを原動力にして頑張れば、人並みには到達できたという経験が得られたことが大きかったように思います。

●早稲田大学ラグビー部監督就任時に受けた理不尽な経験

小学生時代の経験から、一人ひとりが自律を支援し、自分で考えて自分に合ったやり方を見つけていくという指導スタンスにつながっていきます。

32歳のとき、サラリーマンから指導経験もないまま早稲田大学ラグビー部の監督に就任したときも、このスタンスを貫いてきたと言います。

自分には、良い戦略を立てたり、クオリティの高い練習方法をマネジメントして、みんなを引っ張っていくことはできませんでした。
けれど、みんなを支えることならできると思いました。
だから、一人ひとりが自分の考えを深めるような問いを出したり、彼らが考えていることを言葉にするような1on1の機会を作ることにしました。
そして、「監督に期待せず、自分たちで考えながら勝っていこう」ということを選手たちに伝えました。

しかし、この自立支援型の指導方法はすぐには理解が得られず、当初は理不尽な反発を受けることもあったとお話されました。

監督就任の1年目はブーイングの嵐でした。
実際、僕の練習はつまらなかったし、ミーティングの場でも、選手からの舌打ちとため息ばかりでした。
本当に寒い雰囲気で、ミーティング中に「死ね」「なんで辞めないんですか?」と言われたりもしました。
そして、いざ試合で負けると、監督の戦術が悪いからだと、みんな僕のせいにするのです。
それでも、「ごめんね」と謝り続け、「もう一度頑張ろうよ」と彼らをひたすら励ました。
そして、監督である僕に期待せずに、「自分で考えてほしい」ということを根気強く伝えました。

どんな文句を言われようと、監督としてやるべきことはチームを勝たせることです。
みんなから理解されたい、認められたいという気持ちもありますが、そこでも承認欲求を手放して、いかにチームが良い方向に進めるかどうかが重要だと思い直しました。
僕が選手側にいたとしても、彼らと同じ態度を取るかもしれないと、彼らの気持ちにも思いめぐらせました。
この現状をどうやって変えるかが監督の仕事で、彼らの本当の想いを紐解いて、それを力に変えていくのが自分の役割だと考えました。

理不尽なことを受けたとき、普通だったら自分のエゴに引っ張られて、選手を厳しく管理したり、逆に迎合したりするのかもしれません。
でも、僕は人生捨て駒だと思っているので、この状況は今の自分にしか対処できないという自負や使命感がありました。

当時は、当然辛かったのですが、ある意味、解決すべき課題は明らかになっているとも感じていました。
人間は誰しも恐怖や不安を感じるもので、試合が近づいているのならなおさらプレッシャーを感じます。
そうした中で、選手たちから発せられる文句や不満は、勝ちたいという強い想いから生まれてくる本当の想いであることが理解できました。

そして、それをはっきりと口に出してくれることは、むしろありがたかったです。
他の人が監督だったら、ここまでやらないだろうというくらいチームビルディングに時間を使って、ありとあらゆる施策を考えて試しました。
最終的に、どの施策に効果があったのかはわかりませんが、様々なことを取り入れていくうちに、「こんな文句ばかりを言っているチームが本当に優勝できるんだっけ?」と彼らの中で内省が起こり、少しずつ選手たちも変わってきました。
彼らが自律した意識に変わっていく瞬間を共にできることは、どこか自分にとっても楽しみになっていました。

●当日の参加者からの感想

  • 中竹さんの磨き続ける器に感化されて、周りも自発的に動き始める。承認欲求を手放し、自分を磨き続けることを、自分事にして考えていきたいと思いました。

  • 中竹さんの貴重なお話をお聞きできて、たいへん有意義な時間を過ごすことができました。困難な局面でも冷静に状況を捉え、自らができることを見定めて前に進んでいく力に脱帽です。

  • 初めて、中竹さんのライフヒストリーの一部を伺いましたが、壮絶でした。小学校のときに内省して承認欲求を手放し、独自の努力を他人の十倍する、という姿勢が、その後もずっと続いたのだなと思いました。目的である「チームが勝つ」ことに純粋に集中し、「自分が活躍するかどうか」を完全に手放しているところが器を大きくすることにつながっていると思いました。

  • 非常に魅力的で、数々のエピソードに感動し、共感しました。中竹さんのお話を伺って、強烈なネガティブ感情と対峙し、自力で消化する経験は、あらゆる「覚悟」や「使命」を抱えるための土台として不可欠なのではないかと思いました。

  • 使命感を持ち、自分以上にできる人はいない、という想いで動いていた。また、自分の人生は捨て駒として、やるべきことをやる。そういった生き方そのものが、リーダーにとって、人間としての器の大きさだと学びました。

  • 中竹さんの生きてきた道を聞くと、人生の一部を共有したような感覚があり、親近感が増しました。

  • 貴重なお話を聞くことができ大変有意義な時間でした。困難が降りかかっても、それを人とは違う視点から捉えて、解決すべき問題を明確にしてアプローチしていく。簡単にできることとは思えませんが、視点を変えて物事を捉えることを意識的に行っていきたいなと思いました。

●まとめ

上記のほかにも、中竹さんがラグビーを辞めようと思った出来後や、周り仲間に助けられ切磋琢磨した経験など、魅力的なエピソードをたくさん語っていただきました。

私は、中竹さんのお話を聞きながら、一人ひとりの中にはきっと信じられないくらいの力が眠っていることに気づかされました。

その可能性を信じて解き放っていくためにも、たゆまぬ努力が重要で、そのための支援が「人としての器」の研究でやろうとしていることに通じるという認識を新たにしました。

一人ひとりの器の物語には、その人ならでは個性や独自の器の形があり、そこに耳を傾けていくのは本当に面白いものですね。

みなさんも、ぜひ中竹さんのエピソードをきっかけに、ご自身の「人としての器」についても考えてみてはいかがでしょうか。

※本イベントのアーカイブは、「人としての器」のクローズドコミュニティ内で共有しています。通常の金曜の夜は”いれものがたり”への参加者限定でコミュニティにご招待いたしますので、アーカイブ視聴をご希望の場合、まずは”いれものがたり”にご参加くださいますと幸いです。


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