暗がりの中で本を読む

罪悪感が伴うと、愉しみは一層つよくなる。
そしてそれは深夜に起きることが多い気がする。
ラーメンもプリンも、音楽も映画もタバコも、夜のほうが絶対ウマい。

私は本を読むのも、夜のほうが楽しいように思う。
それも暗がりの中で、少しの明かりを頼りに読むほうが。

目にも悪いし、昨今はスマホで明々と照らされた画面もあるものを、敢えて紙の本で「読みづらいなぁ」と思いながら読むのが好きだ。

ひっそりと隠れるように、ひたすらに行を目で追っていく。
全体として視認できないほど暗い紙面で、私に語りかける部分だけが頼りなく照らされているのだ。

誰にも知られないように、自分だけがいけないものを見ているように。
そんな気持ちで読むのが好きである。

息子がグレて「こんな家、出てってやるよババァ」と言ったあと、「何言ってもいいが大学にだけは行っておけ」と送り出し、旅立つその日に「これ持っていけ」と渡します。