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読書メモ|介護戦隊いろ葉レンジャー参上

「介護に正解はない」なんて使い古された言葉では表現しきれない混沌。
モヤモヤして、泣いて、笑って、怒って、悩んで、喜び……このように常に自らの感情をも揺らしながらともに生きていくのが、介護という仕事なのだろうなと、改めて思い起こしました。

それは人材育成におけるスタッフの習熟度を見る際のポイントにも表れています。

様子と雰囲気を見てスタッフの教育スケジュールを立てます。ポイントはクタクタになれているかです。
お年寄りの声、お年寄りの喜びや悲しみ、お年寄りの強さや弱さ、お年寄りから発信されているメッセージをキャッチできる喜び、キャッチできない悲しみ、色んな感情でこころをかき乱されている自分を感じ、自分自身を見つめてもらうのです。

『介護戦隊いろ葉レンジャー参上: 若者が始めた愛と闘いの宅老所』中迎聡子さん

「やりたい介護をやる」と27歳の若さで「いろ葉」を立ち上げた中迎さんも、やりたい介護ができて、悩みはなくなりました!とは言っていません。
むしろ一人ひとりと向き合うことにより、その人固有の暮らしを守るために、感情のループをずっと繰り返しているようです。

経験を積み上げ、さまざまな知識や技術を身につけたことによって、「以前よりもかんたんに切り抜けられる」ことは増えたと思います。
だからといって、なんでも解決できる魔法のシステムを手にしたわけではありません。

お年寄りと向き合い、スタッフと向き合い、思うようにいかないことの連続の中から、なんとか「やりたい介護」を実現しようと日々奮闘されているのだと思います。

チームケアや多職種連携という言葉をよく耳にします。
介護福祉医療業界では、それぞれの専門分野の連携という意味で用いられることの多い言葉です。
性格も価値観も話し方も違う人たちをケアするためには、多様な専門性だけでなく、多様な性格、価値観、特徴をもった“人”が、「ケアする、される」という関係を超えて、ともに生きることが、人間のケアなのだろうと思います。

こればかりはシステムや仕組み化で整理、体系化することのできなき分野で、人が人であることの存在意義ともいえます。

正直、いろ葉の運営を真似るには、リーダーに相当な覚悟がいると思います。
ましてや中〜大規模に運営している法人ともなると、その隅々にまで覚悟を浸透させる困難さが伴います。経営的なウマミを考えると、おそらく手を出さない領域でしょう。

しかし、はじめは個人的だった中迎さんの挑戦が、書籍となって広く知れ渡ることは、ケアの本質やケアの可能性について視野が広がって後に続こうとする挑戦者が現れる可能性の向上に寄与すると思います。
その結果とした、日本中にカラフルなレンジャーか増えることは、国が豊さを推し量るひとつのバロメーターとなるのではないでしょうか。


めでたしめでたし

立崎直樹

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