【詩】泥黎

泥濘と同化したみたいな身体で、それでも、手を伸ばせば地上に届く。もしも、それくらい僕の腕が長くなったのなら、きっと、なんの変哲もない甃の上を、なにげなく、途端に不幸になるとも知らない足取りで、歩き続けているきみの足首を、ずっと掴んで離さないだろう。僕が、生き返ると確信するそのときまで。
「わたしの手となり足となって」
それが本当の愛の告白であるような気がして、そして、余多の色の絵の具が混ざりあった後の、あの淡白な泥みたいな色こそが、最終的に乱雑な計算式の解答として出てくる、確かな恋というものである気がして、僕はもう、澄んだ群青色の空なんかに憧れなくなった。
愛も恋も同じ。業火に焼かれながらも手を伸ばす、亡霊みたいな灰だった頃の名残だ。
きみは、知らず知らずのうちに、地獄に堕ちたときのことを考えながら、手足の長いひとたちに恋をしている。


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