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子宮頸がんワクチンをめぐる報道だ。国が悪いことをしているという戦後路線がまずある。

2019-05-17に発信した章である。
NHK大阪の報道部を支配している連中は、こんな事実についての勉強すらしていない。
以下は前章の続きである。
歴史を見れば、明治維新のような、体制の大変革から日本人が再起するには日清、日露戦争のような国難があってやっとなしとげられた。
しかし日本人はもともとまともな民族だし、民度も上がっているから、今の戦後体制の大変革には、別に国難的な戦争を必要としないかもしれない。
それには新聞、メディアが本当のことを、例えば米国の素性がどういうものだったか書くことだ。 
18年1月28日の朝日新聞「文化の扉」という特集ページに、「異説あり 真珠湾攻撃米は察知?」という記事が掲載された。
チャールズ・A・ビアードの著書(『ルーズベルトの責任』)を参考に、米国が日本を追い込んで戦争を仕掛けさせた、という説を紹介している。 
私に言わせれば、こんな記事は30年以上前に紹介すべきだったが、それより異説を認めなかった朝日が「異説あり」としてこれまでの朝日の歴史認識とは違うものを紹介したのは驚きだった。 
とはいえ、朝日が「真実に目覚めた」わけではあるまい。
反日、反安倍の記事だけでは読者がついてこず、部数減がひどいので、いろいろな手を打とうとして、迷走している表れだろう。
朝日が迷走のあまり、頼みの綱の国際世論さえも敵に回してしまった事実を示すいい例が、子宮頸がんワクチンをめぐる報道だ。
国が悪いことをしているという戦後路線がまずある。
憲法前文にある通り、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやう」、悪いのは常に国だということを確認するため、国家賠償法で訴える。
南原繁らが広めた、国が悪いと主張して民のさもしさを刺激するやり方だ。 
厚労省が患者の要望に応えて、脯がんの特効薬イレッサを早めに認可した時、新聞は副作用があると因縁をつけ、薬害だと騒いで遺族を煽り、最高裁まで争わせた。
結果は敗訴。
インフルエンザ治療薬「タミフル」をめぐる異常行動の訴訟でも同じようなことが起きた。
薬害問題で国を訴えてカネを取ろうとする構図の中で、次に浮上した攻撃対象が子宮頸がんワクチンだった。
ワクチン投与で自己免疫が狂い、脳障害を起こすという。
不調を覚える女性たちが訴えを起こした。
厚労省はメディアに遠慮して接種の勧めをやめた。
接種率は1%に落ち込んだ。 
これにWHOが怒った。
「ワクチンが原因という説は疑わしい」と反論してきた。
世界中で子宮頸がんワクチンを普及させてきた理由は、咽頭がんや大腸がんの急増にヒトパピローマウイルス(HPV)が関係があると判明したからだ。
米国では男性にもワクチン接種を始めている。
WHOが音頭をとって世界中で進めている子宮頸がん撲滅運動を、日本だけがやめてしまった。 
ワクチン接種についての朝日の論調は、「こんなひどいことを国が進めていいのか」と、政府の責任を追及し、攻撃する材料に使う、
浅薄なものだ。
世界中で対策が進められている問題で、日本だけが脱落してしまった。 
WHOとCDC(米疾病予防管理センター)と欧州健康機構の3機関がそろって、HPVワクチンには副作用がないと発出した声明は、日本に向けられたものだ。
次の国際社会のメッセージは、ネイチャー誌の長年の編集長の名が冠された「ジョン・マドックス賞」(健全な科学とエビデンスを広めるのに貢献した個人に与えられる)が、ワクチンの誤情報を指摘し、安全性を説いた日本人の村中璃子に与えられたことだった。
朝日の近視眼的キャンペーンはここでやっと敗退したが、朝日新聞がそれを報じたのは初報から18日も経ってからだった。 
朝日が戦後路線を固守することで、「国際社会から孤立」してしまったのである。
朝日はいったいどこを向いて仕事をしているのか、本人たちにも分からなくなっている現状を、よく表しているエピソードではないか。 
日本を悪とする報道が、朝日も気づかないうちに国の評判を貶めている。
国を貶めるのは日本を貶めることだと、多くの日本人は気づきつつあるが、果たして朝日新聞が理解する日はやってくるのか。
残念だが、それまで愛の鞭を振るい続けたい。
それが渡部先生も望んでいた道のはずだ。 
渡部昇一先生の一周忌によせて  
高山正之

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