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私が建築士と言えるまで…

中学生の部活以来、大した努力もせずに、
親が設計事務所を営んでるという理由だけで、
大学の建築学科へ入った私の話。

殆ど遊んでいた記憶しかないが、
周りの波に乗って何とか単位を取り、
格好付けて、皆んなと同じが嫌いと言った挙句、
大嫌いな構造の研究室へ入る。
大学院生の研究のお手伝いと自分達の論文で、
中身はちんぷんかんぷんなのに何とか卒業。

格好ばかり付けて、大手ゼネコンを目指すも
当然不採用。私が最終的に入れたのは、
小さな住宅リフォーム会社。

そして、新卒ながら正論ばかり叩き、
仕事が取れないのは会社のせいとか、
自分は営業には向いていないとか、
なんだかんだ理由を付けて2年も経たず田舎に帰る
最悪なパターン。

私はなぜ建築の道を選んだのか。
そもそも建築が好きなのか嫌いなのか、
分からなかった。

一度、建築から離れたものの、
父の紹介でまた建築の道へと戻ることに。
今考えれば、本当に甘い。

今度は、民間の建築確認検査機関。

面白かった。
規則や法律に基づき審査する事が。
意匠を学んで来なかった私にとっては、
丸かバツかの仕事が楽しかった。
法令集を読み解くのは難しいが、
嫌いでは無かった。
私にはこれが向いているのかもとその時は思った。

けれど結婚、妊娠を機に呆気なく退社。

やっぱり、私は何も考えていないのか。
本気で何かに向き合ったことが無い自分を恥じた。

その時々の感情のみで全て選択してきた人生。

そんな私が、
何故か2人目を出産してすぐ、
何を思ったのか急にスイッチが入り、
二級建築士を取るため資格学校へ通う。
まだ2人目の子供が0歳だというのに、
本当に無茶振りだったなぁと思う。

途中、主人の転勤が重なり、資格学校も転校。
母乳育児だったから、休み時間に連れて来てもらい、合間に授乳。

また格好付けて、子供達に頑張っている母の姿を見せたいと思ったのかは分からないが、
(いやいや、2歳と0歳なので、記憶無いだろー)
本気になった事が無かった私が、絶対に一発で合格すると気持ちがブレなかった。

中学生の部活以来、初めて努力した出来事だった。

努力が報われて、無事一発合格。

自然とまた建築の道に戻っている。
やはり私は建築が好きなのか。

深くは考えなかったが、きっとそうなのだろう。

それから家で出来る仕事として、父の会社から図面のトレースをさせてもらった。
感覚でトレースしていたから、
構造的なことは全く分かっていなかった。
危機感を覚えた。
地道な作業だった。
面白くなかった。
けれど、子供達を保育園に預けてまで、どこかの設計事務所に勤める勇気は無かった。


その後、3人目が産まれる。
また仕事から遠のく。
そして2度目の転勤。

それでも図面トレースの仕事は続けた。
育児をしながら、家事をしながら在宅ワークをする大変さを身に沁みて実感した。
古い青焼きの図面と、パソコンの画面を見つめる日々に悶々とした。

このまま悶々とする日々が続くのか。

親になって、高額な学費を払って大学に行かせてくれた親への感謝の気持ちが溢れ出した。

そして、3人目が年少さんになった時、
やはり二級建築士では無く、
一級建築士になりたい!と強く思い、
思い付いた次の日には、資格学校へ申し込みに行った。
資格学校の学費は、扶養内で働く私にとって多額の資金。取るなら絶対一発で取る!と心に誓った。

夜間の授業に行き、休日は一日中、学校。
子供達には寂しい思いをさせた。

だが、二級建築士の時の勉強が役に立ってる。
中学生の部活と、二級建築士の勉強、そして、一級と私にとって3度目の大きな努力。

実務経験が、リフォーム会社の営業&現場監理と、確認検査機関、図面トレースしかない私が、最も苦労した事は施工のテストと、製図試験。

特に製図試験はプランニングから全て書き上げるまでのスピードが命。
意匠設計を少ししか学ばなかった私にはハードルが高すぎた。
だがしかし、私は絶対に諦めなかった。
試験勉強が辛くても、
Iミリも辞めようとは思わなかった。

私は自分を変えたかった。
恵まれた環境の中で、漠然と建築士を目指し、
本気で何かを掴むという経験が無かったから。

一級建築士を取れば、世界が変わる。
自分は変われる。そう信じていた。

根性で一級建築士試験を一発合格した。
私は高揚していた。
やっと変われる!と。

いいえ、何も変わらなかった。
それよりも急に、一級建築士なのに何も分からない、経験も無い、中身スカッスカの自分にガッカリした。

私は本当にバカだ。
そんな事も分からなかったのか。

資格に合格したからといって、
人生が180度変わるわけないし、全てを網羅する建築士になる訳がないのだ。

いつも肝心なところはネジが外れている間抜けさ。どうして、一級建築士の試験に合格したのだろう…とすら思えてくる。

けれど私は、そんな自分を変えたくて、
今度は覚悟を決めた。
親の設計事務所に正社員として勤務させてもらう事にした。
最初は、3時までのパート勤務だったが、
少しずつ少しずつ、出来る事が増えていった。
それでも、自分が資格を持つ身として、名刺を渡すことに躊躇した。

私は好きなアーティストがいる。
資格試験の勉強中、radioにハマった時に出会ったアーティストだ。
その方をもっと知りたくて、人生で初めてSNSをした。
もちろん、そのSNSの中は好きなアーティストだらけ。でも、様々な情報が飛び込んでくる。
次第に、何故か建築物や住宅の情報を沢山閲覧している事に気が付いた。
そして、その情報にワクワクしている事にも気が付いた。

あ、やはり私は建築が好きなんだ…。
そう実感出来た瞬間だった。

建築士として、いつか住宅設計をしてみたい。
SNSの中に溢れている素敵なお家アカウントのように、オシャレでこだわりがある家を設計してみたい。その想いが段々と大きくなっていった。


その想いが届いたのか、
正社員になり5年目になる時に、
私に人生初となる住宅設計の話が飛び込んできた。

こうして、気が付けば、日々建築と向き合っている。

6年目になる今でも、知らない事ばかりで、
日々勉強しながら、突き進んでいる。

設計を任せられている立場として、
決して自信が無いなんて言えないけれど、
胸を張って"建築士です"と言える日がくるはず…

それは建築が好きだから。

end.













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