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『ヨイ豊』 梶よう子 2015年

「写楽は誰か?」というミステリーブームが子どもの頃にあった。

私の浮世絵との出会いは、写楽である。
あの大きな顔に、小さな手。
異様である。
そこに、『写楽殺人事件』(高橋 克彦 1986年) 。

インパクト大
私の中では、永遠に謎の浮世絵師。

そして浮世絵を代表するのは東洲斎写楽なのである。


その後、写楽だけが浮世絵ではないと知る。

歌川より葛飾北斎が好きだよなぁ。
そして、葛飾北斎のお栄のことももっと知りたいなぁ。
(女性だからか、北斎の裏方だからか記録はほとんどない。)


娘が小学二年生の夏休み、長野に旅行し小布施まで足を延ばした。
スイーツも楽しみだったが、「北斎館」を訪れたかったのだ。

娘は夢中である。
北斎の絵を写している。
娘にとって、浮世絵は葛飾北斎かもしれない。
(今はまだ浮世絵がなんたるかを知らないと思うが)
ねだられ、北斎の浮世絵の塗り絵と「赤富士」の風呂敷を買って帰った。


歌川のことをよく知らない私がこの夏、読んだのが梶よう子さんの『ヨイ豊』。

三代目豊国が二代目を名告っていたことは知っていたが、その後のことは不知であった。
題名『ヨイ豊』の意味も、読み終わる頃に作品の中で知った。


また、明治をつくっていく側の(建築が好きなので、文字通り東京駅や丸の内を造っていった人たちの)小説は読んできたが、庶民の、消えてゆく浮世絵、廃れゆく職業、後継されない職人技についての話は初めて読んだ。
後継されない理由は、現在と同じものもあるが明治という時代になったことが大きい。

時代の流れというか、明治の転換の異様さを感じた。


この小説の主人公は、三代豊国の弟子であり婿である二代国貞(三代目国政)である。四代豊国でもあるが……

主人公四代豊国が亡くなり、時代も下った終章で、
四代豊国の弟子貞雅が言っている。

(この文章、二代国貞と最初書いていたが、四代豊国にするとやはり重みが出る。版元が豊国襲名をある意味強要したのもわかる気がやっとしてきた。)

路傍にひっそり咲く花へ眼を向け、きれいだと呟くそうした思いだ。雨の音を聞き、風に戦(おのの)き、月を愛で、虫の音、鳥のさえずりに季節を感じる、日常のすべてを五感で慈しんできた我々の感性は誇るべきものであったはずなのだ。


明治になり、西洋美術が芸術であるとし、真の美を忘れてしまった現代(明治)の人への四代豊国の弟子貞雅の心の声である。

明治から平成まで日本人は、このことを忘れてしまったのではないだろうか。

令和になり、思い出す人が増えてきたように思う。
そしてそれを芸術家や職業とは関係なく表現し、発表する。

noteでは、豊かで繊細な感性を表現している人、作品に出会うことができる。
とても豊かな場、プラットホームだ。


私が昨年始めたものが二つある。
noteと俳句である。

noteは毎日投稿して一周年を過ぎた。
(下書きと間違えて1記事削除してしまって記録的にはリセットされたが……)

そして俳句の方は、頭が痛くて文字が読めない日も、お腹が痛くて何も食べてない日も、風に吹かれていたら、俳句だけはいくつも浮かんでくるのである。


今の私の、日本人の、感性を表現する手段は俳句だ。
俳句を始めたことで、さらに日本の自然の美しさ、力強さを感じるようになった。

たった十七音で、俳句を鑑賞する人に同じ心情・情景が思い浮かんだり、または人によって違う感情が湧いたりする。
俳句は奥が深い。

そして表現を発表し、お互いの表現を尊重しあえる人々と出会えるnoteに感謝している。


梶よう子さんの『父子ゆえ  摺師安次郎人情暦』では、浮世絵製作に欠かせない摺師の職人の技と心意気を知ることができる。
五話からなる人情小説である。
第三話は、職人である彫師、摺師の他に歌川の絵師も出てくる秀逸の話である。
こちらもおすすめの1冊である。



みんなのギャラリー「世界の美術館」で、検索したところ東洲斎写楽多いですね。
歌川豊国、歌川国貞は見つけられませんでした。
メトロポリタン美術館の歌川国芳の一枚にしました。

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