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ブランディング・ワークショップ-1

ブランド、あるいはブランディングという言葉に対して思い浮かべるイメージは人それぞれです。きれいなシンボルマークやロゴタイプを思い浮かべる人もいれば、販売促進の手法としてのブランディングを思い浮かべる人もいるでしょう。

この何かモヤモヤとしたブランドの概念を、今回noteを使い、ワークショップ形式で伝えることはできないかと考え、3回の連載でお伝えすることにしました。何人かの仲間を集めてゲーム感覚で行うことで、他の人の持っているブランドに関する感覚も分かるので、自然とブランドに対する知見も深まるだろうという目論見です。

複数のステップ構成にして、1ステップが1時間以上にならないように考えていますから、気軽に取り組んでみてください。第1回は「準備編」です。

(会社で取り組むような場合は、週1回など定期的に行うほうが効果的です。)

■ワークショップを始める前に

次の条件を整備してから始めると、スムーズにワークショップを進めることができ、より効率的にブランディングについて学ぶことができます。どれも身の回りにあるものばかりです。

【準備するヒトとモノ】

・プロジェクト・メンバー
知見を深めるには、良い仲間が必要です。まずは一緒にワークショップに取り組む仲間を集めましょう。人数は1グループあたり3~5人が適当です。ブランディングに興味を持っている人やブランディングに関わってほしい人に声をかけ、チームを作ってみてください。
 「〇〇〇ブランディング・プロジェクト」のような名前をつけると、作業の目的も明確になり、士気も高まります。有志だけのクラブ活動的な集まりでも構いませんが、会社内で行う場合には、上長の承認等を得てから(できればオフィシャルな活動として)行なうほうが後の成果に結びつきやすいようです。
複数のグループができる場合は、必ずプロジェクト・リーダーとサブ・リーダー、記録係の3名を選出してください。ネット上にグループのサイト(ChatworkやSlackなど)を立ち上げるのも、コミュニケーションをスムーズにするためには良い方法です。参加者同士が知識や感覚を共有することで、より深い理解を得ることができます。

・ポストイットとサインペン
 ワークショップの中で最も使用頻度が高いのがポストイットです。粘着性のある付箋であれば何でも構いませんが、本書では75mm×75mmのものをお勧めしています。付箋はある程度の大きさで文字を書けるもののほうが、後の作業がスムーズです。記入は鉛筆を使用すると文字が薄くて読みにくくなるので、サインペンの使用をお勧めします。ポストイットに書く文字数は、瞬間的に読めることが必要ですから、多くても20文字程度までです。

・A4用紙と糊
 A4~B4程度の紙であれば何でもOKです。ポストイットに書いた言葉をグルーピングする際や、新たなテーマなどを書き出すときの台紙に使います。コピー出力後の裏紙でも構いません。糊は、A4の用紙や資料を模造紙に貼付する際に使用します。糊の種類は問いませんが、再剥離タイプのものがあれば便利です。

・模造紙とマジックインキ
 模造紙は、前述のポストイットやA4用紙を貼り付けてグルーピングする際に使用します。貼付したものにタイトルやキャッチフレーズをつけることで、全体的な考えをまとめ易くします。マジックインキは色の違うものを何色か準備するとグルーピングの際などに分かりやすくなります。

・ホワイトボードとマグネット(粘着テープやプッシュピン)
 ホワイトボードは、付箋や模造紙等を貼り付ける「壁」として使用するだけではなく、議論を進める際に直接書き込むことで意見の「見える化」を進め、全体的な考えを図示したり、討議の方向性を確認したりするときに使います。模造紙を壁に貼って代用することもできます。マグネットは模造紙をホワイトボードに固定するために使用しますが、セロハンテープでも代用できます。

・ノート(noteではありません!)
 ワークショップの中で便宜的に使用しますが、プロジェクトの個人的な記録としても専用のノートを1冊準備しておくと、プロジェクト終了後も自身のブランディング学習の資料になります。

・お茶とお菓子
通常の会議の席にお菓子が出ることは少ないと思いますが、ワークショップの際は雰囲気を和らげ進行を円滑にするために、キャンディーやチョコレートなどのお菓子と飲み物を準備します。もちろん、お菓子を食べることが目的ではありませんから、ケーキなどの「手がふさがるもの」や、煎餅などの「音が出るもの」は不適切です。ちょっと珍しいものなどを準備すると話題が弾み、開始前のアイス・ブレーキングにもなるでしょう。

【参加者の心得】
・一連のワークショップを複数のステップに分けて進める形にしており、さらにそれぞれのステップで「個人作業」と「チーム作業」とに区分しています。作業全体をスムーズに進め、ワークショップの生産性を高めるために、2種類の作業を意識的に切り替えて行なうことを心がけてください。

・「個人作業」は、自分の感覚や考えを整理しポストイット等に書き出すための時間です。言葉を書き出すことで自分の感覚や考えを再確認することができ、「チーム作業」で行なうディスカッションの際に発言が苦手な人でも発表しやすくなります。

・「チーム作業」は、個人の考えを参加者全員で検討し共有するための時間です。同じ課題に対して他の人の考えに耳を傾けることで自分の思考を深めることができるだけでなく、自分の考えに対しても他の参加者が同じように耳を傾けてくれるので、全体の意思決定に対してポジティブに取り組むことができるようになります。

・ワークショップは、「抽出」「グルーピング」「チャート化」の作業を繰り返すことでステップアップするように作られています。「抽出」が「個人作業」、「グルーピング」と「チャート化」が「チーム作業」です。
この3種類の作業を円滑に進められるよう意識してください。

・ワークショップは、お互いの「頭の貸し借り」を活発に行うことで、組織全体の発想力や思考力やチーム力を引き出すためのものです。全員が発表しやすくなる雰囲気を心がけましょう。

・ワークショップはリラックスして取り組むことが大切ですが、「個人作業」の最中にリラックスしすぎて他の参加者に話しかけるなどの行為で迷惑が掛からないように留意してください。

・発言する前に書くのが「抽出」の作業です。口頭での発表だけでワークショップを進めると、発表の上手な人や声の大きい人に引きずられてしまいます。このワークショップは書くことを基本に、参加者全員の考えを引き出せるようにしています。ワークショップの作業以外の時も発表する前にその内容を簡単にメモするだけで、自分の考えを整理しやすくなりますし、全体の記録として使用することもできます。

・「グルーピング」と「チャート化」は、「抽出」した内容を全員で吟味し共有するためのもので、自由に発言しあうことでお互いの思考を活性化させることが目的です。失敗は「ひとつの答え」であり、他の参加者の同様の失敗を回避し、正解に近づくための標識です。失敗を恐れず、また失敗を非難せず、むしろ失敗を誉めあうくらいの気持ちで取り組んでください。

・会社の業務として勤務時間内に行なうような場合、社内の了解を取ることはもちろんですが、できれば初回に上長のキックオフ宣言を盛り込むとプロジェクトのモチベーションが高まります。
なお、その際、プロジェクトの成果は期待するが、失敗に終わっても責任は問わない「失敗不問」を宣言して頂くことが重要です。

前置きが長くなりましたが、次回からワークショップの実践です!

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