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暮らしやすさとは。

ポルトガルの田舎町にやってきて3ヵ月。
ヨーロッパ諸国からの移住者が多いこの地では、地元民と移住者がゆるりと混ざり合って暮らしている。

都会のような刺激は少ないけれど、本当に必要なものはすべて揃ってる。シンプルに、心豊かに暮らしたい。そんな人にはぴったりの場所かもしれない。

日曜日はマーケットへ。

毎週日曜日は、街の中心部でローカルマーケットが開かれる。地元でとれた新鮮な野菜や、肉や魚、卵、乳製品、加工品がずらり。お店のおばあちゃんと「ボンディーヤ!」と頬にチュッチュッって挨拶したら、「今日は何を買いに来たの?」と買い物がはじまる。卵はいつものおばあちゃんの店で、葉物類はあの帽子のおじちゃんのお店でと、顔なじみの生産者から直接買える安心感。都市で暮らしていると、なかなか味わえない感覚だ。

ローカルマーケットにはカフェも併設されていて、必ず誰か知り合いがお茶している。「朝ごはんはワインだよ」って朝から飲んでる人もたくさん。のどかな日曜日がはじまる。

誰でも出店できる、ヒッピーマーケット

町が運営しているローカルマーケットの他に、月に1回土曜日に開催されている、ヒッピーマーケット。そこには主催者も事務局もなく、出店ルールも一切ないという。誰もが個人の責任でお店を出したり、買い物したり。なんでもあり!でいて、何ともピースフルな雰囲気なのだ。いつからか移住者の間で開かれるようになったこのイベントは口コミで広がり、今では地元民はもちろん、遠くの街からやってくる人もいる。

家にある不要なものを並べる人、
庭でとれた野菜や手作りパンやお菓子を売る人、
サモサに生春巻、
手作りソープやボディケアグッズ、
世界各地のスパイスやハーブもある。
子犬の里親を探している人もいれば、
ギター片手に歌う人、
マッサージが受けられるスペースだってある。
可愛い即席チャイスタンドで飲むチャイがやけにうまい。

中には、商品の値段がなくて、買う人が値段を決めるドネーション式のお店もある。お金以上の何かを交換してるような、そんな空間だった。

お金を介さず、モノを交換できる場所。

毎月最終日曜日は、服&日用品の交換会。不要なものを家から持ちより、必要なものがあれば持って帰る。この何ともシンプルなシステムはボランティアで運営されていて、会場には色とりどりの服や日用品がきれいに並んでいる。街の古着屋さんに来たみたいだ。

自分に必要なくなったものを捨てることなく、誰かが使ってくれる。お金を介することなく、ものが循環していく。シンプルに素敵な取り組みだ。“日本に帰ったらやってみたいことリスト”に書き加えよう。興味のある人、一緒にやりたいな、この指とーまれ◎

歌って踊って、カルチャーイブニング

田舎はやることがない?いや、むしろ逆で、ここでは充実したアフターファイブを過ごしている人がとても多い。

月曜日は歌
火曜日はダンス
水曜日はヨガと太極拳
木曜日はコンテンポラリーダンス
金曜日はストレッチクラス
というように、村の公民館や家のスペースを使って、色んなアクティビティが毎日どこかで開催されてるのだ。
特技を生かして住民が先生となりコーディネートしていて、やってみたい人は誰でも気軽に参加できる。短期滞在の私がふらっと参加しても歓迎してくれる。参加費も無料か、少しのドネーションでOKなものがほとんど。

都内で働いていた頃、仕事終わりに何か趣味を楽しみたいなと、習い事をいくつか始めたことも何度かあった。けれど、出張や残業で毎回は参加できず、それでも月謝が1万円以上するのが嫌で、どれも長く続かなかったことを思い出した。こうやって気軽に参加できるアクティビティがあるのは、すごく素敵だ。

「暮らしやすさ」は自らの手で。

「15年前に私たちが越してきたときには、イベント1つなかったのよ。少しずつ仲間たちが増えて、楽しいことも増えてきたの。」と、ホストファミリーはなつかしそうに語る。

知り合いも誰もいないこの地に、勇気をもって飛び込み、ポルトガル語も野菜の育て方も、一から学びながら暮らしてきた二人。ご近所さんを家族のように気にかけたり、地元の食事会に出かけたりと、地元民からも信頼されているのが伝わってくる。きっと、簡単な道のりではなかったはずだ。

私が感じていた「暮らしやすい」は、最初から当たり前にそこにあるものではなかった。この家族を含め、この地に暮らすと決めた人々が、自分たちの手でひとつずつ、心豊かに暮らせる環境を作ってきたのだ。そう想いを馳せると、この町がもっと好きになっていた。

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