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3回生春。新入生には怒らない、とゆうか誰に対しても怒りという感情がなくなった。

バス通学にもかなり慣れてきた
いつも通り待ち合わせをして隣に座ってくれる
毎朝「体調大丈夫か?」と過剰なほど心配される
「大丈夫よ。ありがとう。」

「最近酔い止め飲んでんの?」
「実は飲んでないんだよね」
一応酔ってからも効くものは常備している

「あと、的を見ても、視界がぐにゃぐにゃしないようになったんだよね」
薬があってなかったのかもしれない
確実に良くなってる

「久しぶりに全体練も出れそうやな」

「うん、やっと行けそう。
気になってたんだよ。新入生」

「あ〜…見てやってよ。前に言ってた子と話してよ」

「いいよ。話せば分かる子でしょ?ダメなら2.3発殴るわ」

「だからそれはダメって言ってるでしょ。」

「冗談だよ」

「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ。体感した身としては。マジで」

「ははっ」
ミッキーの真似をして誤魔化す

じゃぁ授業寝ないで頑張ってね〜と解散する

すぐにコンビニで再会した
「おい、またリンゴジュースか?」

「ううん、久しぶりにお米。おにぎり(鮭と梅)朝のうちに買っとかないと売り切れちゃうから」
しんどい時はカロリーメイトとかウィダーインも使うけどね。

「え?食べれるようになったの?!2個も?」

「大袈裟だな。」
一日5合食べる人に言われたくない

「じゃぁ今度こっちのキャンパスの学食行こーよ!」

「いいよ。体調いい日なら。」

「食べきれなかったら食べたげる、楽しみ
なんか嬉しいわ〜」


4限まで授業を受けた
いつもの場所で待ち合わせて一緒に乗る
もう相変わらずの光景になっている

「あ〜疲れた。俺の学部パソコン多くてマジ目に辛い」
目頭を押さえてマジでしんどーと言っている。

「しんどいよね、操作の時画面のライト落としてる?」

「1番暗くしてブルーライトカットのパソコン用のメガネかけてる」

「え?見えるの?でも対策ばっちりじゃん」

「てかお前の方勉強いけてんの?最初の方出れても途中で抜けたりしてたろ」

「あぁ、楽勝。もう教科書は全部読んでるし絶対に取れる得意な分野しか取ってない。ちょっと早いけど卒論の準備してる。」

「早すぎるだろ〜…」

「だって卒論ってずっと保存されるんだよ。現地にも行きたいし、調べ物も多いの。変なもの残したくない。」

「真面目だねぇ。」

「まぁね〜」

「んま〜嫌味ねぇ。ちょっと前までバス怖いってピーピー震えてたのにねぇ。」

「やめてよ、他の子に言わないでよ、絶対」

「ごめんって。笑」

眠たいねと言ってお互いを枕にして眠る

あっという間に着く
じゃぁ、着替えて練習場でね。

久しぶりに全体練までに練習場に着く。
下級生に「長らく体調崩して休んですみません。またよろしくお願いします。」と謝る。

「もう大丈夫ですか?」
「とりあえず無理せずリハビリくらいにしてくださいね」
「久しぶりに射形見てください」

「快く迎えてくれてありがとう」と伝える
可愛くて強い後輩たちだ

「先輩、ちょっと相談があるんですけど」
どしたの?

「経験者の子がいて言うことほぼ聞いてくれないんですよね、男子部がかなりイライラしてて困ってます」

同期から聞いてるから知っている、そんなに馴染めてないのか。

「そっか、基礎練の時期だよね?」
なんかそこに見慣れないメーカーの弓具があるのは気になってたんだよ

「もしかしてもう射たせてるのかな?」

「はい。色々相談したんですけど結局本人の主張が強くて、他の子はまだ弓具が届いてないので溝があるっていうか…ちょっと困ってます」

「分かった、見て話してみるよ」
「何にせよ上手い子は貴重だよね、浮いちゃうと勿体無いよね」

「え?」と驚かれた

「どうしたの?もしかして辞めてほしいと思ってた?馴染めるようにしてあげようよ」と笑う

かなり負の感情が溜まってるんだなと察する

1R終わったら男子の担当と基礎練の方を一緒に見に行く。思ったよりしんどい。背中、つりそ〜。

2回生男子とも久しぶりだ。
「思ったより早く元気になってよかったですね」
「おかげさまで、ありがとうねぇ」
心なしかゆっくり歩いてくれる

「そういえば先輩がくれた資料、マジでみんな使ってますよ、なんかアレから男子の先輩もレジュメ保存してくれるようになって、教科書とかも潤ってます」

「それはよかったねぇ」
共通科目の指定の教科書は高い割には使える期間が短い。出来るなら先輩からお下がりをもらったらいいと思っている。

「3年からは専門に分岐しすぎて使いまわせないからそっからは頑張るんだよ、2年までに単位が取れないと3年からはしんどいぞ〜」

「確かに、学部違うけどH先輩の時間割エグいっすよね」

後輩にまでイジられているらしい
でもその時間割のおかげで私は助かっている

「まぁいいところもあるんだよ、それに意外と優しいんだよ」と笑う

「知ってます、仲良いですよね」ニヤニヤされる
「なんか学年上がってからH先輩めっちゃ機嫌いいんすよね〜」

知ってる
もう隠すつもりはないけど
「それはよかったね」と笑っておく

「機嫌がいいと自然と点数も出やすいんだよ、メンタルスポーツだからね」

「経験者の子に苛立ってる?扱いにくいかもしれないけど、出来たら歩み寄ってあげてね。年上の余裕で」

「そうしたいんですけどね、3本勝負して勝てる2年じゃないと指示も生返事っていうかナメてくるんですよね」

「それはよくないね、礼儀が1番大切。上手くいきそうなら話してみるよ。興味あるし。」


基礎練中の1回生たちは
ランニングは終えて柔軟と筋トレをしていた
それとなく観察する

やっぱり身体がもう違うな
今は受験勉強で訛った身体を作り直してる段階だな

ちょっと身体が硬いな

真面目にやっている
何がそんなに問題なのだろう?

自主トレの時間になり、経験者の子が練習場に向かって歩き出す

「お疲れ様です。3年のりょうです。ちょっと身体崩してしばらくお休みもらってました。挨拶が遅れてごめんね。」

「いえ。」

「よろしくお願いします。」

「はい。」

「何年くらいやってるの?経験者って珍しいからちょっと教えてよ」

「7年目です。」

「そうなんや〜すごいね。弓好きなんだね」

「いや、今はそうゆう段階じゃないんです」

「倦怠期的な感じ?」

「まぁそんな感じですね。義務っていうか…今更辞める選択肢はないっすね」


練習場に着いて弓にもう一度、弦を張り、クイバーを腰につける。チェストガードを胸につけたり細々した部品をつける。はぁ、落ち着くなぁ。

経験者の子の隣をキープする
「ねぇ、射形見せてよ」
「…いいっすよ」

立ち方は片足を開いて重心を安定させている
バランス感覚がいい子なんだな
アンカリングしてからサイトを的に合わせて狙う

このタイミングでものすごく速くクリッカーを切った
射ったあとも外したと思ったであろう時はすぐに弓を下げて諦めが早い

毎回上体が明らかにズレている
意図的にやってるテクニックかもしれない
注意したら怒ってきそうだなと思った

…何か短気な子かもしれない


「どうですか?」聞かれて
「まだなんともだなぁ。とりあえず射つのは速いね」

「試合の時はもうちょっと狙いますね、練習は射つことで鍛えられる筋肉があるから数こなしてる感じです」

なるほどなぁ。この子の言い分も一理ある。
キャリア的にはこっちの方が初心者だ。

「せっかくやから試合の射ち方見たいな」

「じゃぁ3本勝負します?」

「え〜、やだよ。そんな上手い子と勝負したら負ける確率の方が高いじゃん。私が負けても先輩って言ってくれるならいいよ?」

予防線はしっかり張っておく

「いいっすよ」


じゃぁ50mでも30mでも、どっちでもいいよ。
ジャンケンして私が先攻になった

結局50mで、勝負することになった。
ラッキー。得意な方。言わないけど。

落ち着け さっきの全体練でサイトはしっかり合わせている
あたる、あたる、あたる…頭の中で想像して射つ
8点に刺さる

後輩が射つ
さっきより丁寧な動きになっている
負けず嫌いなんだな
言ってたとおり狙う時間が長い
ん〜…狙い込みすぎてるな
8点に刺さった

さっきと同じように射つ
1射目が4時の方向に刺さっている
ちょっと邪道だがサイトをわざと11時方向に合わせて中心に刺さるように狙う
呼吸に合わせて射ち毎回同じタイミングでクリッカーを切る
10点に刺さる

後輩も焦ることなく絶対に10点に入れるという気迫が伝わる
やっぱり矢尺を切るタイミングが安定しない
射つ瞬間にハンドルを左に軽く振った
5点に刺さる

勝った。内心ホッとする。
最後は余裕が出来たおかげで2射目と同じ位置を狙い10点に入れた。

「負けました」

「ありがとう。矢取り行きながら振り返りしようか」

2射目でクリッカーの切れるタイミングが悪かったよね、射たずに引き戻して速射の癖がなかったら私の方が負けてたかもしれないよ。
一定のタイミングでテンポよく射つ、それが一番の課題になりそうだね

「そうですね」

言いたいことはたくさんあるけど、落ち込んでいるのでやめておいた

「多分受験勉強でちょっと、勘が鈍ってるんだよ。環境も変わってしんどい時期だから焦らずやってくださいね」

「はい」
なんだすごく素直な子だ

「先輩なんで怒らないんですか?」
「勝負とか失礼なことしたのに、正直勝てると思ってました」

「今1番失礼なこと言われた気がするよ」と笑う

弓は減点法だから拘れば拘るほどしんどくなるのも知ってるし、点数で実力が如実に現れるのも残酷な競技だとも思う

「そうだね、怒るとしんどいからかなぁ…?疲れるし。不機嫌な人に話しかけにくいでしょ。それに、こころを扱う競技だからね。プリプリしてたらあたらないよ。イライラして喧嘩して怪我したくないしさ」

「意外とドライなんすね。」

「そうかも。一応女性は精神年齢が高いのもあるかもね。20歳越えたら怒るの面倒になる。数年したらきっと分かると思う」

「また相手してね、幽霊部員になりつつある病人部員なんだけど」

「ちょっと気になったんですけど…りょう先輩って中学高校は何してたんですか?走るのめっちゃ速いんでしょ?」

「うん、キューちゃんの弟子。嘘やけど〜」笑
「だから部活は陸上、でも走るの嫌になって途中から高跳び。でも3才から道着きて色んな武道経験してたよ。身体は丈夫だったから思い切り走れたし。出来なくなった今は走りたくてたまらないよ。」

矢取りですら誰かに助けてもらっている
「体調みながら続けられるのって有難いよ」

「たくさん周りに頼ってるんだよ。今の2回生はすごく優しいし頑張り屋さんの子がいるよ。キャリアが気になるかもしれないけどもっと話しかけてあげてよ。」

「そうですよね」

「続けてね。中高一貫の私立高校の時だったらチームメイトもどっか違う大学でやってるんでしょ?もしかしてその子はスポーツ推薦もらって◯◯大でやってるとか?」

「なんで知ってるんですか?」

「何となく。仮想敵を作ってやってる気がしたし。ここ数年、季刊誌で高校生の部も目も通していたし。あなたの名前も知ってたよ。同期たちは知らないよ、あの子ら本読まんから。モンハンばっかやってる。もー本当呆れちゃう」

新人戦まで時間があるし。巻き返して勝ってよね。見に行くからね、射系かなり癖があるから先輩とコーチに見てもらって矯正してみたら?同じ練習方法じゃ勝てないよ。」

まだまだ貪欲に点数にこだわったらいいよ

「あとまずは同期と仲良くね。ご飯でも誘ってみなよ、今ならまだ馴染めるよ。チーム戦ではスポ薦で入る大学には勝てないけどね、個人戦は可能性あるからまずはびっくりさせたいね」

まだまだ伸びると思う。頑張れ。

「それとね、3回生はみんな本当モンハン中毒だよ…しかも弓使いばっかり。バランス悪いよね。1人くらい太刀・ランスとか使えばいいのにね。」

マルチ混ざってみたら?と言うと、「本物の弓、練習しないんすね」「てか先輩詳しいっすね、もしかしてやってます?」笑った。
「下手すぎて諦めた。すぐ死ぬからマルチ入れない」

「それは…悲しいですね」

幼くて可愛い笑い方だった。
ちょっと前まで高校生だもんね。


道具を片付けながら

「俺、先輩のことどっかで見たことある気がするんですよね」

「ヤダァ〜ナンパ?」笑

「…うーん」
聞いてないし。

「多分、大学の入学案内でしょ。」
居た堪れなくて答えを教えてあげた

「あ!そうだ。載ってましたよね。。なんか雰囲気ちょっと違いますね。もしかして写真の方フォトショで加工しました?」

「しばくぞ、無修正や」

今は全体的に不健康なんですぅ〜と笑う。

食べ物を少し食べるのも覚悟がいる
食べたらしんどくて動けない時もあるし
まだまだ不便だと思うこともあった

そのままバイトへ行き帰宅した
久しぶりに体力を使った気がした

あの子うまくやれるといいな
心配してたのは初めだけで
割とすぐに仲良くなっていた
大学のやり方に馴染もうとしてくれてるのも分かった

私たちが卒業したあとも定期的に配信される情報ではどうやら後輩の面倒をしっかりみてくれるタイプになったらしい

点数も安定しているエースとして頑張っていた
成績がいいとアドバイスにも説得力がでる

卒業後は地元企業で働いていると聞いた

今も数年に一度、卒業生が集まる機会がある
私は諸事情あって基本不参加だ
出産直後だったり、シフトの関係で行けないのもあった。

遠方や海外にいる子もいるので全員で集まることはまぁ無い。

年始にしか稼働しない同期のLINEグループで送られてくる写真だけ見ると面影はあるがみんなやっぱりオジサンになったなぁと思うが、私もそうなんだろうと思う

記憶の中の若いまでいたい


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無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。