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【試し読み増量!!】時代に淘汰されないためのリーダーの新常識を集約した1冊!『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』

なぜあの会社には優秀な人材が集まり、辞めないのか。 


 近年、若手社員の早期離職率は平均で30%を超えているといわれており(※マイナビキャリアリサーチLab)、多くの企業の課題となっています。売り手市場が続くなか企業各社は人手不足。中小企業に限れば、約7割が人員不足問題をかかえています。

 上司世代がかつて若手だった頃の「報酬」といえば「出世」「給料アップ」。それに対し、現代の若手が重要視するのは「働く時間と場所を自由に選べる」「周囲に気兼ねなく定時に帰り、休みも取れる環境」、つまりワーク・ライフ・バランスを確保すること

 時代が大きく変わった今、「最近の若者は……」と、思わずボヤいてしまうのは得策ではありません。DX推進などが進み、従来とは異なるスキルの必要性が高まっているなか、「自分たちが若手の頃はこれが当たり前だった!」という常識はもはや非常識。
 「部下の気持ちがわからない」リーダー、管理職のいる職場は淘汰されていく可能性が高いといえるでしょう。

 本書は、

・Z世代をはじめとする若手社員の価値観の変遷
・社内モチベーションを上げるコミュニケーション術
・トラブルを多発させる問題部下との接し方や対処法
・現代の必須スキルとなり得る「炎上対策」

 など、人事コンサルタントとして労務問題やハラスメント、労務トラブル、ネット炎上問題などの現場に関わってきた著者が、今の時代に必要不可欠な「リーダーの新常識」を集約した1冊です。

「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本 新田龍


第1章「部下の気持ちがわからない」世代が知っておきたい新常識


若者はいつの時代も「理解しがたい存在」だった


 残業をなくし、効率よく仕事を進めたい。これはすべての組織人が共通して抱く想いでしょう。
 そのために欠かせないのが、従業員の組織貢献意欲です。
 一昔前では、「お金」や「ネームバリュー」などが企業を選ぶ基準のひとつとなっていましたが、昨今では仮に高給や知名度がある組織でも、労働環境や人間関係が芳しくなく、やりがいやモチベーションを保てない職場ほど、優秀な人材がどんどん離れていく傾向があります。
 そんな事態を避けるため、本書の冒頭では、昨今の部下世代が抱いている想いや労働環境における新常識をご紹介していきます。 

 まずは、次の文章を読んでください。

 「『最近の若者はダメだ』は昔から言われているが、特に今の若者はひどい。まず、当事者意識が完全に欠如している。さらに、独り立ちをしようとせず、常に何かに依存し、消費し、批判するだけの『お客さま』でいつづけようとしている。これはゆゆしき事態であり、日本社会のありかたにかかわる重大な問題である。
 最近の若者は、定職に就きたがらない。あるいは、会社に入っても一定のポジションで身を立てようとしない。なぜなら、社会的なかかわりを、全て暫定的・一時的なものと見なしているからだ」

「その通りだ!」と深く納得される方も少なくないことでしょう。
 ただ、実はこの文章は、日本の精神分析学の第一人者である小此木おこのぎ啓吾けいご氏の著作『モラトリアム人間の時代』から引用したものです。同書の刊行は1978年。すなわち、ここで示されている「最近の若者」とは1960年前後に生まれた世代のこと。
「最近の若者」であった彼らは、現在60代前半。会社組織でいえば役員になったり、役職定年を過ぎてベテランとして活躍していたりする世代でしょう。
 まさに今「最近の若者は……」と苦言を呈している彼らも、上の世代からは同じように、理解しがたい「最近の若者」として扱われていたということがわかります。

 同様の苦言は、さらにはるか昔から存在します。

「最近の若者はすべてにわたって消極的で、思い切ったことをしない」という主旨の記述は、江戸時代に記された『葉隠』(山本やまもと常朝つねとも・1716年頃)にも見られるし、「最近の若者は、あまりに言葉遣いが乱れており嘆かわしい」といった批判は『枕草子』(清少せいしょう納言なごん・1001年頃)でもつづられています。
 伝聞レベルで確実な証拠はありませんが、さらに時代をさかのぼれば、「エジプト遺跡の壁画」「シュメール遺跡の粘土板」「ポンペイ遺跡の落書き」などにも同様の記述が見られるとの話も聞きます。

 いつの時代も、若者とは年長者にとって理解しがたい存在で、彼らのことを考えるたびに「このままだと我々の社会はどうなってしまうのか」という深い憂慮の念に駆られてしまう存在であることは間違いありません。
 いずれにせよ、世代間のギャップはいつの時代でも存在するもの。
 テクノロジーやインターネットの普及、社会自体の変容、自分たちが慣れ親しんできた環境や信念の理想化、コミュニケーションスタイルの変化などといった時代の移り変わりにより、年長者が自身の若い頃と比較し、若者の行動や価値観に違いを感じるということは常にあり得るのです。

「部下の気持ちがわからない」ままでは、会社が傾く


 ただ「若者世代はよくわからないから」と部下とのコミュニケーションを放置するのは、上司・先輩世代にとって得策ではありません。なぜなら、若者世代の考えを理解しない企業や上司は、どんどん淘汰とうたされていく可能性が高いからです。

 その最大の要因は、企業各社における人手不足です。
 2023年7月時点における全業種対象の調査で、正社員が「不足」と感じている企業は51.4%を記録。さらに中小企業に限れば、人手不足と回答した割合は約7割にのぼり、過去最悪を記録しました。今後、人手不足感は高まるにしても、解消されることはおそらくないはずです。
 だからこそ、部下世代の考えや価値観を理解し、良好な関係を構築・維持していくことが、現役世代にとって求められます。

 読者の皆さんの中には、就職氷河期を経験された世代もいることでしょう。氷河期世代は、1990年代初頭以降、バブル経済崩壊の影響を受けた不景気により、多くの企業が新卒採用を抑制し、ちょうど新卒時に就職難に直面された、おおむね「1995~2005年頃」に社会に出た世代を指します。
 当時は、正社員雇用を得ることも厳しく、仮に無事に入社できても、その後の社内競争も厳しく、おそらく「お前の代わりなんていくらでもいるぞ!」叱咤しったされた最後の世代ゆえに、その感覚が染みついている人も多いかもしれません。
 ただ、当時と比較して、時代は大きく変化しました。
 人口ピラミッドで見ても、氷河期世代が減り続ける以上、これからは貴重な若い労働力を各社で奪い合う時代へと突入するでしょう。若手を首尾よく採用できても、長きにわたって定着してくれるかは職場環境次第。そのためにも上司世代である皆さんが部下世代を深く理解し、日々のコミュニケーションに配慮できることが重要になります。

人口大国というメリットに支えられていた日本経済


 部下世代の気持ちを知る上でポイントとなるのが、現在20代の若手社員と、40代後半~50代の上司世代の間にある社会環境と価値観の変化に関する大きなギャップです。

 当然のことながら「俺たちが若手の頃はこれが当たり前だった!」は指摘の理由にならないどころか、そんな理由で叱咤しったしたら最後、部下からの信頼を失ってしまうでしょう。
 私たちがこれまでに学び、認識してきた「常識」は、時代とともにどんどん変化しているのですから。
 たとえば学校の教科書を見ても、「太陽系第9惑星」だと教えられてきた冥王星は、天体研究の進展により、同等、もしくはそれより大きな外惑星が続々と発見されたことで、2006年から「準惑星」の分類になりました。
 同様に、「イイクニ1192つくろう」と覚えてきた鎌倉幕府の開府年は、現在の教科書では「1185年」と記載されています。これも、歴史研究により、源頼朝みなもとのよりともが朝廷に守護や地頭の設置を認めさせて、実質的な支配権を朝廷から移行した年が、開府年に相応ふさわしいと判断されたためです。
 学校教育でさえこれほどの変化がある世の中。日進月歩のビジネスの世界であればなおさら、旧来の常識は通用しません。古い認識とは知らずにしたり顔で披露した知識が、実は若手から顰蹙ひんしゅくを買うものだった……ということは往々にして起こりがちです。

 社会人の常識がどう変わっているのか。それを知るために、ここ数十年の日本の労働環境について紹介させてください。
 戦後、高度経済成長期を経て、我が国が世界第2位の経済大国という地位に長年い続けられた理由のひとつは、 「日本が世界有数の人口大国だった」からに他なりません。当時の日本は国内市場が大きい一方で、高齢者人口に対して若い人の割合が多く、経済成長分野に予算をつぎ込むことができたのです。
 モノは造れば造った分だけ売れていくので、残業や休日出勤、転勤や出向もいとわずに仕事に邁進まいしんし、組織貢献できる人が重宝され、評価されて出世していきました。そして同じように家庭を顧みず、滅私奉公する人が上の立場につくことで、同じような価値観を持つ管理職集団が出来上がっていったのです。 

 それが良い・悪いという話ではなく、当時はその方法が日本経済発展における最適解でした。経済拡大に伴って報酬も右肩上がりとなっていったため、将来に不安を抱くこともなく、人々は概ねハッピーだったのです。

少子化によって、日本経済も労働人口も右下がりに


 しかし、時代は大きく変わりました。

 2008年をピークに日本の人口は減少に転じ、高齢者の割合も増加。労働力人口の割合は低下し、経済発展しにくい環境となりました。
 たとえば、1970年前後生まれの世代は、各年度で約200万人前後生まれていますが、直近の2022年では1年間に生まれた子どもの数は、外国人等も含めた速報値で79万9728人。1899年に統計を取り始めて以降、初めて80万人を下回り過去最少を更新しています。しかも7年連続で出生数が減少しているという危機的状況です。
 一方で、総人口に占める高齢者人口の割合の推移を見てみると、4.9%であった1950年以降、一貫して上昇が続いていて、1985年に10%、2005年に20%を超え、2022年は29.1%となりました。この割合は世界で最も、かつ突出して高い数値です。

 日本経済自体と、それを取り巻く状況も大きく変化しています。
 バブル経済絶頂期の1989年、世界経済に占める日本経済(名目GDP)のウエイトは15.3%でしたが、2021年にはわずか5%にまで低下しています。
 1人あたりGDPランキングで見ても、バブル絶頂期の日本の経済力は世界10位前後を維持していましたが、その後は低下の一途を辿たどり、現在は30位以下。OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中でも下位に甘んじている状況です。

産業構造も変化。重視されるのは「顧客への価値提供」


 産業を取り巻く環境も激変しました。

 たとえば、製造業を例に挙げても、以前より高品質な製品を効率的に生産する技術開発を競い合うことが命題でした。しかし、2000年前後からの情報通信技術の普及を受け、製品の機能のみならず使い方に焦点が当たり、様々な製品・サービス、技術が開発されるようになります。
 すなわち、製品自体の価値だけで勝負する時代から、製品とサービスを組み合わせて顧客の経験価値を高めることで差別化を図る時代に移行していったのです。
 結果として、製造業の競争軸は「製品の製造・販売」から「製品を介した顧客への価値提供」へと変化し、製品単体でなく、複数の製品・サービスの組み合わせで新たな価値を生み出す時代が到来しつつあります。
 日本でもデジタル化は進展しつつあるものの、それらは「あくまでIT・システム業界の話」と捉えられがちです。コスト削減・生産性向上のツールとしてのデジタル導入は進みましたが、デジタル技術を活用したビジネスそのものの変革や、新たな産業創出といった動きはまた世界の潮流と比して出遅れている感があります。 

 安定した内需に長らく支えられ、国内市場を見据えるだけで充分ビジネスとして成立した環境に甘んじていたがゆえに、日本では痛みを伴う大きな改革は避けられてきました。
 様々なトラブルにも対症療法で対応していった結果、日本の経済はいわゆる「失われた20年」が「30年」へと延び、出口の見えない停滞状態にあるように感じられます。

日本人を取り囲む、働く現状はどうなっている?


 では、一方の労働環境はどのように変化しているのでしょうか? 
 企業目線から見れば、モノはある程度充足しているので、よほどの付加価値か新たな切り口を提案できない限りは売れません。また、人件費も最低賃金も上がり続けているため、おいそれと残業もさせられません。
 共働き家庭も当たり前になりつつあり、1997年には既に専業主婦家庭を割合で逆転しています。ただ一方で、高齢化による介護の必要性などから、育児や介護等の理由でフルタイム労働が難しい人の割合も増え、介護を理由にした年間離職者数は約10万人に上ります。
 かつての人口増加・高度成長期にうまく機能していた「終身雇用」「年功序列」「滅私奉公」といったシステムが、現在の人口減少・低成長期にはまったく合致していないにもかかわらず、無理矢理使い続けた結果、齟齬そごをきたしている状態なのです。

 だからこそ、これからの会社組織は、人手不足でも、人件費が高い状況でも、育児や介護等でフルタイム労働が難しい人ばかりの状況であっても、難なく乗り越えられる経営が求められるのです。
 そのためには、真っ当な給料を支払えるだけの利益を生み出すビジネスを運営し、もうからないビジネスや無駄な仕事はキッパリとめるか、利益が出るよう改革する、という決断が必要です。
「何事も残業でカバーする」という悪習を見直し、仕事を棚卸しし、ムダやムリ、ムラを見直して、短時間で効率的に仕事をこなせる人を正当に評価する……といった手立ても求められます。
 それこそ、この数年盛んに「働き方改革」が議論されている要因なのです。

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続きは本書でお楽しみください。


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