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モノに溢れた世界で、どんなモノを作るべきか

世界が変わっていく状況を目の当たりにして、これからどう生きていくべきなのか、自分が何をすべきなのかを、ここ1週間ずっと考えていた。
一度言葉で整理しておかないと、次に進めないような気がした。

今のイシューは、”モノに溢れた世界で、どんなモノを作るべきか“

1、安くて良いものでも売れ残る時代に、大切にされる商品を作る
2、ムダにしない、ムダを作らない
3、常に自由であるということ


1、安くて良いものでも売れ残る時代に、大切にされる商品を作る

新型コロナウィルスの影響で、百貨店や店舗が休業し、ブランドは服を販売する主要チャネルを一つ失った。
買ってもらう機会、着てもらう機会を失った洋服たちは、どこにいくのだろう。

作り手になってわかることは、洋服1着作るのに、たくさんの労働力(企画アイディア、技術力、働く人たちの時間)がかかっていること。
差はあるにせよ、ハイブランドでもファストブランドでも。誰かにとっての単純作業かもしれないけれど(ミスチル笑?)、その人の貴重な時間が使われている。

H&MのSALEエリアで、コーデュロイのアウターを購入した。
ハンガーに掛かった洋服たちが、ぎゅうぎゅうにつまっていて、息苦しそうな中から1枚選んだものだ。元値は¥5,999で、50%offで購入した。

デザインも可愛いし、アイボリーと使いやす色だと思う。ただサイズがXSだったので、それでおそらく売れ残ったのだろう。

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このお手頃価格のアウター、よく見るとすごく手間がかかっている商品だった。買った時には外ズラしか見てないので気づかなかった。
まず、縫い目にパイピング処理がされている、これをするとしないとでは、手間が全然違う。ファストブランドの洋服の作り方に詳しくないので、機械でちゃちゃっとなのかもしれないが、それでも追加の生地や工数は多少なりともかかるはず。

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さらにポケットがボタンを開けて、上から手を入れてつかうパターンと、
更に横から手が入れられるようになっている。
この横から手を入れるために、ポケットにはしっかり裏地がつけられており、それまた手が込んでいると驚いた。
あんなスペースではこの事には気づけないし、勿体ない。

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あーもう、こんな手間のかかった商品が、こんな安くて、さらに売れ残って。
すごい世界だと思った。モノに溢れている。


そんな時代だからこそ、大切にされる服を作りたい。
安いから買って、飽きたから、汚れたから、捨てられるようなものではなく。
永く愛されたら嬉しいけれど、必ずしもそうとは限らない。ただ、大切にされたい。大切な時に、着て欲しいし、その瞬間に立ち会いたい。

だから私は、1点物だったり、オーダーメイド(要望を受けてからアイテム・素材など擦り合わせて作る)、セミオーダー(1つの形はありつつ、要望によってサイズや素材を変える)で服を作っている。

特にオーダーメイドでは、もらう要望はアイテム(シャツ?ブルゾン?パンツ?)くらいで、あとはお任せで作らせてもらっている。その人のイメージを思い浮かべて、その人を表現するような服を。

”自分自身を服で表現される体験“
 これはほとんどの人が未知の体験で、受け取ったとき、すごく嬉しそうな反応をしてくれる。それがとても嬉しい。

さらに、なぜそのデザインなのか、なぜその生地なのか、このボタンはもう手に入らないもので、などなど、創作に至った全てを余すところなく伝える。
私は話していて楽しいし、受け手はそれを聞いて、さらにその商品を好きになってくれる。

いつも以上に楽しめたり、いつも以上に頑張れたり、優しくなれたり、より良く生きる日をつくれたら、と願いながら作っている。


2、ムダにしない、ムダを作らない

H&Mでアウターを買った理由は、在庫になって処分されていく服を、再び生かすことができるのではないか、と思ったから。その考え方をUP CYACLE(アップサイクル)と呼ぶらしい。

RE CYCLEならぬ、UP CYCLE。より良くして再利用するということ。

海外では、2019年度のLVMHプライズのセミファイナリストにも選ばれていた若手デザイナーのブランド「DURAN LANTINK」がUP CYCLEをコンセプトにしており、
「ZARA」や「H&M」「MANGO」などのファストファッションブランドで購入した服を、新しい一点物に作り変えている。

日本では、「URBAN RESEARCH」が、デッドストックをリメイクする新レーベル「Rewrites URBAN RESEARCH」を立ち上げた。

コーデュロイのアウターを分解しながら、この商品を低価格で販売する企業努力に感動し、誠意をもってUP CYCLEしてみた。

味というか、顔が出てきた気がするが、どうだろうか(伝われ)

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オーダーメイドのジャンパースカートを作った時の、余りデニムと合わせて。
今まで作った服の生地で、中途半端に残っているもの(1着作るには足りないけど、そこそこ余っているものたち)が再利用できて、すごくいい。
ヨーク、脇、裾、を追加し、袖を2枚袖にして。ボタンも日暮里で買った宇宙みたいなボタンに変えて。
タグは外さずそのまま。

デニムのパンツ履いて、公園駆け出したくなる感じ。初挑戦だったので、自分のために作った。


自分の人生における貴重な時間を費やし作った商品が、誰の手に取られることなく、着られることなく廃棄されていくのは、とても悲しい。

欲しい時に、その商品が目の前にあるのは便利なことだけど、その影響で捨てられる商品が数多く出てきてしまう。

受注生産、必要だけ作る、ということができるようになれば、といつも思う。
ある人に「人間は刹那的な生き物だから、寒くなったら、暖かくなるものが、今欲しいんだよ」と言われた。
たしかに今までの、売り上げや規模の拡大を目指していく世界では、売り損ないによる機会損失をなくそうとするため難しいんだろうな。
ただ、過剰生産によるムダが産む、負の遺産を少なくしていくことが、これからの世界にはきっと必要なことだと思う。


3、常に自由であるということ

なんのためにサラリーマンを辞めて、服を作り始めたのか。
それは、戦う人を応援したい、自分の好きなことに情熱を注いでみたい、それを仕事にしたいと思ったから。

そして自由でいたいと思ったから。

仕事を選択する、時間の使い方、生き方、考え方、表現、全て自由でいたい。

サラリーマン時代、ある時給料がどんと増えたタイミングがあった。
嬉しくもあったが、怖くもあった。どこへも行けなくなる気がした。

友人が何人か冗談半分で「投資させてよ」と言ってくれた。
応援してくれることを嬉しいと思いつつも、自分で選択ができなくなるんじゃないかと思った。

物事はこうあるべき、仕事はこうあるべき、という考えが元来強いし、何かに囚われやすい人間なので、時々思い出さないと忘れてしまう。
だから忘れないように、どんなモノを作りたいか、作るべきか、その時自分はどのようにありたいか、と書いておく。

コロナが終息しても世界は元には戻らない。
そのことを悲観するよりも、これからの未来をワクワクするものに変えていきたい。




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