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日本酒に携わる女性たちにカンパイ

 小西未来監督の「カンパイ! 日本酒に恋した女たち」。日本酒に携わる女性たちのドキュメンタリーだ。今田酒造の杜氏である今田美穂さん、日本酒バーの店長千葉麻里絵さん、日本酒コンサルタントのレベッカ・ウィルソンライさんを中心に、それぞれの人生や日本酒の仕事に携わるようになった経緯を追い、日本酒の今を探っていく。

それぞれの人生

 私は何よりも3人のストーリーに興味津々。それぞれ違うバックグラウンドがあり、想いがあり、日本酒に関わる形がある。それがとても豊かだと持った。

 きっぱりとした感じがかっこいい今田美穂さん。学生時代、個性を無視して「女の子ってこうだよね」とまとめて捉えられることが嫌だったと語っており、それに共感した。
実家は広島で100年以上続く酒蔵「今田酒造」。今田さんは東京の大学に進学し、就職も東京でだったそう。その後「今田酒造」を継ぎ、新しい考えを取り入れ変化を起こしていった。

岩手で自給自足の生活を営む家で育った千葉麻里絵さんは、味覚がすごく鋭い。日本酒はもちろん食に興味があり、日本酒と食事の組み合わせを日々研究しているそうだ。映画に出てくる料理がどれも美味しそうで、千葉さんのお店「Gem by moto」に行ってみたいと思った。また、これだけ日本酒に向き合っていても、「日本酒が分かったと思う日はない」「でもそれがいい」と言い切る姿が凄いと思った。

レベッカ・ウィルソンライさんは、韓国で英語教師をしていた時に母から金閣寺の本をもらったことが日本に来るきっかけだったそう。京都で実際に金閣寺を見たときに、「日本に住まなければ」と感じたという。そして日本酒に出会い、少しずつ酒造の人とのネットワークを構築していき、独学で日本酒を学んだ。

3人の日本酒にかける想いと行動力に圧倒された。ここでは書ききれないほど、多くの挑戦や葛藤が映画では語られていた。杜氏になると決めてから、新しい考えをどんどん打ち出し酒造を変えていった今田さん、最初は怒られながらも酒蔵に通い学び続けた千葉さん、観光客扱いされながらも日本酒イベントに足を運び、酒造の人と関係を構築していったウィルソンライさん。
好きなことに誇りをもって打ち込んでいる人って、すごくかっこいい。

「女性」と日本酒

そしてやはり注目はここ。昔、女性は酒蔵に入ることも禁止されていたという。酒蔵の外で日本酒造りを支えていた女性たちは、今はもっともっと幅広い分野から関わるようになっている。そして、その女性たちに焦点をあてたドキュメンタリーが作られ、こうして私は日本酒のこともそこに携わる女性のことも知ることができた。それがとても嬉しいし、勇気づけられた。それに、日本である分野で活躍する女性にフォーカスしたドキュメンタリーって今までそれほどなかったと思う。

dancyu元副編集長である神吉佳奈子さんが、印象的な言葉を残していた。

「女性の方がすごく自由に日本酒を楽しんでいる。だから女性がどんどん意見を入れていくと、日本酒ってもっと楽しくなる」

神吉さんによると、女性はいわゆる「飲みにケーション」ではなく、香りや食べ物との組み合わせなど多彩な楽しみ方をしているという。

私は正直、日本酒には「男くさい」イメージがあり苦手だった。そして、お酒を飲んで愚痴を言ったり怒ったりしている大人(主に男性)を見るのが嫌だった(日本酒に限った話ではないが……)。だから神吉さんが言っているように、香りや食べ物との組み合わせなど自由な楽しみ方がどんどん増えているということ、多くの女性が日本酒の楽しみ方の幅を広げているということは新鮮な驚きだった。「お酒の楽しみ方」は画一的ではないのだと分かると、自分がお酒に対し持っていたネガティブなイメージも変わった。

最後に

何か挑戦していることがある人に、是非観てほしい映画。「迷っているのだったら心惹かれることをやった方がいい。失敗しても、回り道をしても」と背中を押されると思う。
あと、私はnoteで「こんな生き方」というマガジンを作り、色々な人にインタビューをしているのだけれど、この映画に出てくる人たちのように何かに情熱をもって進んでいる人たちの話をこれからも聞いていきたいと思った。

ちなみに、この映画の英題は「Kampai! Sake Sisters」。このタイトルが、最後、それまで別々にフォーカスされていた今田さんたちが日本酒のイベントで出会うシーンと重なった。お酒造りに関わる女性たちが連帯していくイメージ。これからどんどん素敵なことが起こって、日本酒はもっと進化していくんだろうなというワクワク感。「Sake sisters」って最高じゃない?

作品情報

「カンパイ! 日本酒に恋した女たち」
監督:小西未来
製作年:2019年
製作国:日本、アメリカ
公開年:2019/4/27
  現在、テアトル梅田(6/6まで)シネマ・ジャック&ベティ(6/7まで)京都シネマ(6/14まで)上映中


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