統合失調症を患って得た物

私は6年ほど前に統合失調症を患って精神病院の閉鎖病棟に医療保護入院しました。

そして10日ほど経った頃、暴力事件(と言っても他の入院患者さんに財布を投げつけた程度ですが)を起こして、保護室に入れられました。


保護室に入った事が無い人に簡単に説明すると刑務所の独房(入った事ありませんが)のような部屋です。鉄の頑丈な扉が付いていて外から鍵を掛けられてしまうので、自由に廊下には出られません。部屋の中にはトイレと布団一式があるだけ。食事は看護師さんが持ってきてくれるのですが、テーブルが無いので床に直置きで食べなくてはいけません。


薬を増量したおかげで割とすぐ正気を取り戻したのですが、「ここ半年くらい信じて疑わなかった事は全て妄想だった」という事実を受容するのは本当に辛い作業でした。ただ静かに涙が流れました。
それに妄想に取り憑かれてやらかしてしまった数々の事の後処理をどうすれば良いのか?という不安も押し寄せてきました。
加えて隣室から聞こえてくる大声やドアを叩き続ける音は恐怖でした。
なので、閉鎖病棟に戻れた時はホッとしました。


でも辛いことばかりでもなくて、閉鎖病棟にいても聞こえる保護室のドアを叩く音を大工仕事の音だと勘違いしている患者さんがいたり、「私はここ(閉鎖病棟)を楽園にするんだ」と言う患者さんがいたり(私が「楽園にするのはここじゃなくて、退院後の自宅の方が良くないですか?」と反論してしまったので険悪な雰囲気になりました)、「ねぇねぇ、何回目の入院?私は3回目なんだけど」と謎のマウントを取ってくる患者さんがいたり、「あなたなんかオーラが出てる」と褒めてくれる患者さんがいたり、なかなか楽しかったです。
でも一番おかしかったのは娘が保護室に入れられるという緊急事態なのに「保護室って個室料金かからないんだって。良かったね」と言ったうちの母。


辛い事もなかなか楽しい事もあった閉鎖病棟及び保護室ライフ、こうしてネタになるし、なかなかハードな体験をすることでポジティブかつ強い心を手に入れる事ができたので「あの入院生活も無駄ではなかった」と思うのですが、「もう1回入院したいですか?」と聞かれれば、答えは絶対的に「NO」です。

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