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リトル・ダンサー

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2000年のイギリス映画。1984年のイギリスの炭鉱町を舞台に、当時は女性のものと思われていたバレエに魅了された少年が、プロのバレエ・ダンサーを目指す姿を描いたヒューマン・ドラマ作品です。原題 "Billy Elliot"。

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出演は、主人公ビリー・エリオット役に2000人の中から選ばれ、映画デビュー作でありながら高い評価を得たジェイミー・ベル。ビリーの父・ジャッキー役にゲイリー・ルイス、ビリーの兄・トニー役にジェイミー・ドラヴェン、バレエの先生・ウィルキンソン役にジュリー・ウォルターズ、ほか。

監督は、演出家として100本以上の舞台作品を手掛け(ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞などを受賞)、本作が映画初監督作品となったスティーヴン・ダルドリー。そのほかの代表作に『めぐりあう時間たち』、『愛を読むひと』、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』など。

ひたむきなビリー少年が可愛い!

イギリス Lover(♡)のわたしとしては、ずっと気になっていた本作。ちらほらと聞こえてくる評判も、すこぶる良くて―― ようやく観られた時はワクワクしました♩

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何より、主人公の11歳の男の子、ビリー(ジェイミー・ベル)がすっごく可愛い

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なんというか、あの年頃の男の子の、不器用さ、素朴さ、シャイでぶっきらぼうな感じ―― わたし自身が男の子を育ててきた母でもあるので、観ていてすごく “少年らしい” なぁ、と。

「今日、学校どうだった?」
「べつに。フツー」
みたいな。笑

(世の男子のお母さま方、おわかりいただけますよね?)

あの時代、イギリスの炭鉱町の閉塞感

本作の舞台は、1984年のイギリス。それまで主要な産業として国有化されていた炭鉱は、当時「鉄の女」(Iron Lady)と呼ばれたサッチャー政権により、民営化や閉鎖の方向へ大きく転換を図ろうとしていました。

炭鉱に経済を頼っていた地域では失業者が相次ぎ、1984~1985年には「英国炭鉱労働者ストライキ」(UK miners' strike)というイギリス史上に残る社会運動が起きたのですよね。

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この頃の炭鉱町を舞台にした映画も、たくさん作られています。

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ブラス!(1996年)
フル・モンティ(1997年)*
リトル・ダンサー(2000年)
パレードへようこそ(2014年)
*『フル・モンティ』は、炭鉱ではなく鉄鋼の町が舞台

これらのうち、わたしは『ブラス!』、『フル・モンティ』、『リトル・ダンサー』の3作品を観ました。(『パレードへようこそ』も気になっています)

この時代のイギリスを描いた作品は、先の見えない空気が漂う世相の中、人々の普遍的な力強さを描いた良作が多く、元気が出るのでどれもおすすめです!

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本作『リトル・ダンサー』でも、そんな時代背景がよく描かれています。

主人公ビリーの家庭は4人暮らし。パパとお兄ちゃんは炭鉱夫で、不況の真っ只中、連日ストライキに参加するくらいしかすることがありません。ママはビリーが幼い頃に他界。おばあちゃんは家にいて、少し認知症が始まっています。家計は苦しく、なんとも重苦しい “しんどさ” に、それぞれがあえいでいるようなエリオット家。

この閉塞感が丁寧に描かれているからこそ、父と兄の葛藤、“好きなもの” に惹かれて仕方ないビリーの魂が解放される歓び、バレエのウィルキンソン先生との交流、家族の絆―― などが、後半、感動的に活きてくるのです。

大好きなものって、自然に好きになってるし、それをしているときはすべてを忘れる。

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炭鉱夫だけあって「男はタフであるべし」といった昔ながらの考えを持っている父・ジャッキー(ゲイリー・ルイス)は、次男のビリーを町内のボクシング教室に通わせています。でも、ビリー本人は “殴り合い” のボクシングをどうしても好きになれませんでした。

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そんなある日、ボクシング教室が開かれているホールの一角を、会場の都合でバレエ教室が使用することに。元々音楽が大好きなビリー少年は、たちまちバレエに魅了されてしまいます。

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父には内緒で、女の子たちに交じってバレエ教室に通い始めるビリー。(月謝はボクシング教室のために父が渡してくれるお金を流用。笑)バレエ講師のウィルキンソン先生(ジュリー・ウォルターズ)もビリーにバレエの才能を見出し、家庭の事情は察しつつも熱心に指導してくれます。

ところが、あることから内緒のバレエ教室通いが父にバレてしまい――。

ここから先は、ぜひ本編で観ていただきたいなぁ♩

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作中、街角で、練習場所のホールで、ビリーが魂の赴くままにダンスを踊るシーンが何度も出てきます。本当に「踊らずにはいられない」といったビリーの情熱が痛いほど伝わってくる、素晴らしいシーンです。

「男はタフであれ」という父の期待、プロのバレエ・ダンサーになるための教育費用を自分の家では捻出できないこと―― 子どものビリーにも重々わかっているのです。でも、止められない。それがどうしてなのか、たぶん本人にも理由はわからない。

ただ、ただ、「踊っていたい」。

ビリーの踊りは、バレエの型とはかけ離れていて、一見ハチャメチャなダンスなのですが、魂の内側からほとばしるようなエネルギーに満ちています。見ているだけでそのエネルギーが伝わってきて、グッときてしまうダンスです。

2000人の中から選ばれた、ジェイミー・ベルに拍手!  素晴らしい躍動感!

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感想ツイートにも書きましたが、

大好きなものって自然に好きになってるしそれをしているときはすべてを忘れる夢中になる

そういうものなんですよね。理由なんて、ない。

わたしにとっては、お散歩や映画など、こちらの記事に書いたものたちがそうなのかなぁ――なんて気がしています。

魂の歓び” としか言いようのない「好きなもの」を自分も持っているからこそ、ビリーに深く共感してしまうのかもしれません。

パパの好演が感動に深みを与える

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一方で、もうひとつわたしが感情移入してしまったのが、ゲイリー・ルイス演じるビリーのパパ。

一家の大黒柱として炭鉱で働いてきた誇り。妻を亡くした悲しさ。ひとり親の家庭で子どもたちを育てる心もとなさ。不況のあおりで、労働組合の仲間たちと酒をあおり、ストライキに怒りや苛立ちをぶつけるしかない不甲斐なさ―― 大人の男として、親として、様々な感情を表情に滲ませる姿。

わたしも子を持つ親なので、ひとつひとつのシーンに心を揺さぶられました。良いんですよー、このパパが!

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ジュリー・ウォルターズ演じるバレエ教室のウィルキンソン先生も、気だるそうな空気を醸しつつ芯はしっかりしていて、良い味を出しています。

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『ハリー・ポッター』シリーズでは、ロンのママとして大活躍でしたね♩

映像の色合いにも、ご注目

ちなみに、初回から3年後に再鑑賞したときのツイートはこちら。

シーンごとの色の使い方については、あくまでもわたしの個人的な印象ですが、どのシーンも抑えた色調が綺麗です。良かったら注目してみてくださいね♩


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