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恋のロンドン狂騒曲

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2010年のアメリカ/スペイン映画。ロンドンに暮らす離婚した老夫婦と、中年の娘夫婦。二組のカップルがそれぞれ新しい恋に振り回されてゆく姿を、ウディ・アレン監督ならではの “くすっと笑える” ユーモアで描いたコメディ作品です。原題 "You Will Meet a Tall Dark Stranger"。

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出演は、老夫婦役に『羊たちの沈黙』『日の名残り』のアンソニー・ホプキンスと、『ブリジット・ジョーンズの日記』『ロケットマン』のジェマ・ジョーンズ。娘夫婦に『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツと、『ノーカントリー』『ミルク』のジョシュ・ブローリン。脇には、アントニオ・バンデラスフリーダ・ピント―― と、豪華な顔ぶれが勢揃い!

迷走する大人たちの恋模様

親子二組のカップルを軸に、群像コメディとして描かれている本作。
登場人物のキャラがしっかりしているので、混乱することなく観られると思いますが、さらにわかりやすくするために、相関図を作ってみました!

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じゃーん! 頑張りましたよ! なかなかの力作♩笑

主な登場人物
ヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)
長年連れ添った夫アルフィと結婚40年目にして破局。夫に捨てられたショックで自殺未遂を起こす。情緒不安定になり、怪しげな占い師の言葉を妄信するようになる。
アルフィ(アンソニー・ホプキンス)
妻ヘレナを捨てて、女優くずれの若いコールガールと結婚。“若さ” への執着心が強く、ジムで身体を鍛え、日焼けサロンに通い、バイアグラを常用している。

ロイ(ジョシュ・ブローリン)
売れない作家。処女作がヒットしたものの、その後はスランプが続いている。通りを挟んだ向かいの部屋でギターを弾く赤い服の女性、ディアの姿を窓越しに眺め、恋をする。
サリー(ナオミ・ワッツ)
ロイの妻。離婚した老夫婦(ヘレナとアルフィ)の一人娘で、暴走気味な両親に困惑する。働いている画廊のハンサムなオーナー、グレッグに惹かれてゆく。
シャーメイン(ルーシー・パンチ)
アルフィが再婚する若い女性。金髪でスタイルが良く、派手な浪費家。外見は華やかだが、知性や品性は持ち合わせていない。
ジョナサン(ロジャー・アシュトン=グリフィス)
精神世界に傾倒したヘレンが恋する相手。オカルトショップの経営者。亡くした愛妻と交信(チャネリング)することを夢見ている。

ディア(フリーダ・ピント)
ロイが恋する相手。ロイ夫妻の住まいの、向かいの部屋に住む美しい女性。赤い服を着て、いつも窓辺でギターを弾いている。婚約中の恋人あり。
グレッグ(アントニオ・バンデラス)
サリーが恋する相手。画廊のオーナーで、既婚者。セクシーで、イケメンで、お金持ち。

本作に登場する人物たちは、中年期~老年期。みんな、“いい大人” です。本来なら、若い男の子や女の子のように、恋に右往左往する年齢じゃない。――にもかかわらず、振り回されてしまうんですね~。

それぞれの「恋」に!♡

ウディ・アレンが描く「滑稽さ」と「おかしみ」

ヘレナとアルフィの「元」老夫婦。ロイとサリーの中年夫婦。二組とも、結婚生活の破綻をきっかけに、「希望」や「救い」を求めて、新たな章へと迷走してゆくのですが、それぞれの “すがる” 対象に個性が出ていて面白い!

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アルフィの場合は――

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若さ」が最重要テーマなのでしょうね。
老いの時期を迎えた彼にとっては、「死」の恐怖に対する足掻きとも言えます。“若づくり” へのエネルギーの掛け方は、本当に涙ぐましいほど!

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若さへの強いこだわりは、次のパートナー選びにも表れています。トランプ元大統領のような「トロフィーワイフ」的でもあり、「若い女性が好き」と言われるウディ・アレン監督自身の投影のようでもあり……。

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ヘレンの場合は――

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心のよりどころ」でしょうか。
占いにハマり、何を決めるにも占い師の言いなりのヘレン。何かを盲目的に信じて、それを判断基準にしていれば、自分の頭で考えなくていいからラクだし、自分の心の中にある “傷” も感じずに済みますものね。

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オカルトへの傾倒は、いよいよ深みにハマってゆき、こんな不思議ちゃん発言も普通に飛び出す始末。この、真顔の “目” のヤバい感じ(笑)を、ジェマ・ジョーンズが飄々と上手に演じていました。

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ロイは、妻の収入で生活する情けなさや、文学で成功したいのに書けない焦り、悶々とした気持ちを感じる中――

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お向かいの美しい女性がギターを弾く姿に、癒しを感じ始めます。(こらこら。それ、ただの「覗きオジサン」よ! とも思えますが……笑)

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サリーには、将来「ギャラリーを開きたい」という夢がありますが、今の生活ではそれもままならず――

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上司である高級ギャラリーのオーナーに、だんだんと惹かれてゆきます。

オペラの後、別れ際モジモジしてる男女のあの雰囲気、「恋」だねぇ。

と感想ツイートにも書いたように、サリーとグレッグがオペラを一緒に観た後の、別れ際のシーンが印象的でした。お互いに好意はあるのだけれどまだお付き合いには進展していない人たちの、なんともいえない、フワフワした、あの感じ!♡(懐かしいなぁ…… 遠い記憶。笑)

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それぞれが、自分にとって大切だと思うものに、情熱を傾け、そこに希望を求めているんですよね。

でも、その方向がズレていたり、度を越していたりする姿を、ちょっぴり皮肉のスパイスを効かせながら、笑える「滑稽さ」や人間の持つ「おかしみ」として描いているところは、ウディ・アレン作品ならでは。

登場人物たちの小さなやりとりに、ひとつひとつ「くすっ」と笑ってしまいます♩

前作にあたる『人生万歳!』(2009年)でも、こういったウディ・アレン監督お馴染みの作風が楽しめます。

本作の次に作られた『ミッドナイト・イン・パリ』も個人的に気になっているので、機会があったら観てみたいなぁ。

You Will Meet a Tall Dark Stranger

ところで、本作の原題は "You Will Meet a Tall Dark Stranger"。
どんな意味があるのかご存じですか?

直訳すると――

「あなたは、背が高く、浅黒い肌の、ある人と出会うことになるでしょう」

みたいな感じかな? これは、

「近々、あなたに良い出会いがありますよ」

という意味の、占い師がよく言う決まり文句なのだそうです。
なるほどね~!

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「ちょっと気軽な感じのコメディが観たいな」という気分の時って、たまにありますよね。そんな時に、ぴったりな作品です♩


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