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なぜ読むか?

なぜ書くか?

文章教室」では、そんな話を、たまにする。見知らぬ人同士が集まって、書いたものを読み、話していると、そんな話もしやすくなるのかもしれない。

なぜ? は、いろんなことについて言える。

なぜ書くのか? の前に、なぜ読むのか?

なぜ人は歌い、奏でるのか?
なぜ聴くのか?
なぜ踊るのか?

なぜ描くのか? なぜつくるのか?

そもそも、なぜ生きているのか?

「なぜ?」という問いには、答えがない。

答えのない問いを、私たちは生きている。

100人いたら100通りの答えが在るのかもしれない。いや、しかし、それは「答え」だろうか?

 *

2011年の1月、奈良の県立図書情報館で行われた「「自分の仕事」を考える3日間」というフォーラムに参加した際、初日の最後に出てきたのは、川口有美子さんだった。

川口さんについては、『逝かない身体──ALS的日常を生きる』を読んだり、いろんなところに出ているインタビューを読んだり聞いたりしてもらったらいいと思いますけど、その時、聞き手の西村佳哲さんと対話をするコーナーがあり、そこで川口さんは、親の介護が大変で、その親を殺してしまって自分も死んでしまおうとする人がいる、そんな人の気持ちが自分にはわかる、と言い出した。

西村さんが、でも、(川口さんは)そうはしなかった、と返すと、川口さんは、本かな… と、ポツリと言った。その時のことを、ぼくはその後、くりかえし、くりかえし、思い返すことになった。

そのとき読んでいた本(たとえば病気にかんする本とか)に何か知恵を与えられて、乗り越えられたとか、そういうことではない、というふうなことを付け加えて言っていたのを覚えている。

なんだかよくわからないのだけれど、自分は雑多な読書をしていた、そのことに救われた、ということを話していたのだった。それがぼくには忘れられない体験になった。

なぜ読むか? という問いを前にして、心の中でそのときの話が蘇る。

(つづく)

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「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"は、1日めくって、8月17日。今日は、「焼き目」の話。

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