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瑛九の部屋

先日、埼玉県立近代美術館に行ったことを書こうとしたところ、ついつい喫茶店に寄り道した話に終始して、そのまま忘れてしまっていた。

その埼玉県立近代美術館では、いま、「ブラジル先住民の椅子」という企画展をやっている。昨年、東京都庭園美術館で行われたものの巡回展、その時ぼくは観られなかったので、ようやく観られた。

でも今日はその話ではなくて、明日(4/14)までやっている埼玉県立近代美術館コレクション展の話。

瑛九というアーティストについては、東京の日本近代美術館で、写真というか"フォト・デッサン"と呼ばれる作品群で、前々から知っていたけれど、いろんなことをした奇才(?)らしくて、その一端が、埼玉県立近代美術館 のコレクション展である程度まとまったかたちで観られた。

目玉は、「瑛九の部屋」と題された"部屋"で、そこには「田園」という油彩画1点だけが展示されてる。

しかもガラス越しに、少し離れて観るのだが、観る人で手元でライトを調整しながら観るのだ。こんな体験は初めてだった。

"ライト・デッサン"ということばがあるらしい。詳しい説明はなかったが、この場合、"光で描く"のは、観る人だ。

色を観る時に光が重要なことくらいわかっている。しかし、観る人をこんなに信頼しきった展示は、珍しい。光の強弱によって、見え方が変わるのだから(その強弱の幅は、あらかじめ設定されてはいるのだが)。

移り変わる見え方を美術館で見せる時に、映像を使うというのは考えられることだが、あえて、観る人ひとりひとりに任せる、というのがとても新鮮なことに感じられた。

光を強めたり、弱めたりすると、絵の、色の、点の、線の印象が劇的に変わる。

絵を自然光の中に置いて、一日中その絵を観ていたら、気づくことだろう。日によっても違うだろう。晴れの日もあり曇りの日もあり雨の日も雪の日もある。

瑛九の「田園」では、その変化が劇的なんだ。それを発見した人、つまり、ずーっと観続けた人がいるから、そんな企画が立つ。

だから「瑛九の部屋」に行くと、時間を早送りしたり巻き戻したりするような感覚が味わえる。でも、ぼくはなるだけゆっくり、ゆっくり時間を回したかった。

埼玉県立近代美術館は、そんなに来場者が多いわけではなく、じっくりそれができた。

埼玉県立近代美術館のYouTubeには、その「瑛九の部屋」を撮った映像が9つ公開されてる。これはそのうち、金村修さんの撮影・編集によるもの。

(つづく)

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