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エスプレッソの色気

エスプレッソの、特に抽出し始めのあの、トロリというよりドロリとした、粘着力のある液体がカップに滴り落ちる様に、心臓が鷲掴まれる。
身体の内側がぞわぞわする。
恋人にギュッと抱き締められた時のあの感覚にも少し似ているかもしれない。
地面から5ミリぐらい宙に浮いた気分になる。
目の奥がチカチカする。

いつか自分を雇ってくれていた人に、その液体の滴り落ちる様を「気持ちが悪い」と言われ哀しくて泣きながら帰ったこともあったけれど、
大人になった今は自分の心臓の動きも自分の感覚も自分で肯定してあげることが出来るし、他者の感想は他者の感想として受け入れることが出来る。

大人になるってスバラシイな。

けど思えば、美しさの多くは気持ち悪さのすぐ隣にある。
そもそも命あるモノとは気持ち悪くて不気味なモノだ。
わたしはこの危険で不気味な美しさにいつまでも溺れていたい。
この少し不気味で限りなく色気のある世界が好きだ。

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