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『ノクターン』感想

「ンーフーフーフー、フーフーフー♪
……歌はいいね、

歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないか、……春谷晃子くん」
「ハイッ! 思いまーす! No Music, No Life! あっ、そういえばカヲルくん聞いてよ! こないだ『ピアノ』って小説を読んだよ。『ノクターン』っていう短編集に収録されているんだ。読みやすくておもしろかったよ!」
「……。そうか、そういうことかリリン」
「どういうこと?」
↑どういうことなのか春谷にもわからない。

こんにちは。
冬の文学フリマ京都から、すっかり季節がめぐって桜も終わってしまいましたね。
でも、文フリで買った本は逃げないよ。だって紙媒体だもの!
(紙媒体を推したがる人)
日々の雑事に追われ、読書もnote記事も執筆も遅々としていますが、でもっ……、
本は逃げないから、いつでも読まれることを待っているから、
だから大丈夫、積ん読解消を諦めないでね☆(自分に言うてる)

ちなみに上述のカヲルくんの登場は、以下本文に何の関係もありません。混乱の元になるので、妙な前振りをしたがる癖をやめないといけませんね(でもこれ音楽ネタの記事書くときにまたやるかもな←)


『ノクターン』感想

短編集『ノクターン』
著者:藍川澪 様

なんと、オリジナルブックカバー付き!


去る2024年1月14日の文学フリマ京都にて、手伝いとして参加した際、おとなりのブースの方から購入した短編集です。
作者さまはお着物を召された、きれいなお方。文フリ参加にいつまで経っても慣れない私は、おとなりの凛としたたたずまい、手慣れた様子で作品を陳列販売されていらっしゃる姿に「いいな〜私もこんな感じで個人で販売してみたいな〜」と憧れました。(との憧れを密やかに胸に秘めようとしながら、結局べらべら話しかけてしまいました。お相手してくださりありがとうございました!)

掌編〜短編が5編、それにタイトルにもなっている『ノクターン』(中編〜長編くらいかな?)の計6作品が収録されています。
全体的に文章が読みやすく、すらすらと頭に入ってくるのが良かったです。
実はここ数ヶ月バタバタしていてひさしぶりの読書体験だったのですが(精神的にもそぞろだったため、読み始めても途中放棄しちゃったり……)、この本は詰まることなく気がついたら読了していて、読むことの嬉しさを久々に体感しました!

寸止め感

6編すべてのお話に感じたのが「寸止め感が上手いなぁ」ということでした。あくまで私の感慨ですが。物語が盛り上がって、で、で? というところでパツンと切って余韻を残す、というのでしょうか、そういう寸止め感(伝わりますかね……?)。
10代の少年少女達のお話なんですが(少年少女の話が好物な春谷)、この寸止め感によって主人公の気持ち、はっきりと言葉では表せない思春期の心の揺れをいろいろ想像させられるのが、私としては読書の醍醐味を感じられた部分でもありました。

少年少女、音楽、天文

それぞれに設定の異なる6編ですが、なんとなく登場人物が全員知的な感じがします(『ノクターン』では医学部受験を目指す少年が主人公ですし)。そして、颯爽、凛としている。それだけで私の好きな世界観なのですが、ピアノ曲プラネタリウムが登場するのも、きれいで好きです。
プラネタリウムといえば私の中では宮沢賢治『銀河鉄道の夜』です。あのお話はいろんなテーマを含んでいると思っているんですが、その中のひとつに少年ジョバンニが成長して大人になる過程での通過点として、カムパネルラとの夜汽車での銀河の旅(別れ)があるのかなと春谷的には解釈しています。
表題作『ノクターン』も少年が大人になる過程で、出会いと別れがあって、その通過点に夜空で星を見上げたりプラネタリウムで星を見たりということがあるのかなと、勝手ながら想像して楽しんでおりました。
(あと、福永武彦先生の『草の花』もご存じの方いらっしゃいましたら……、少年達が夜空の星に囲まれて愛について語り合う場面がありますよね……! オリオンの光が涙で溶けるんです、あの切なすぎるBL描写がまさか中学の現国授業の題材になるなんて←言いたかっただけの余談)

掌編『ピアノ』

6編の中で好きな掌編です。ピアノを弾く少年とヴァイオリンを奏でる少年のやりとりに(あえてBLとは言いませんよ)隠されたほのかなBL感(←言うてる)漂うのが切ない。
こちらも、皆まで言わない主人公の心情描写に想像をかきたてられました。
余談ですが私も下手なりにピアノを弾いていました。ショパンの幻想即興曲も弾きましたが、もう15年近く鍵盤を触っていないのでもはや指は全然動かないと思います……。でも懐かしい気持ちになりながら読ませていただきました!

短編『乙女のエレジー』

こちらも6編の中で好きな作品です。耽美!
時代は大正あたりでしょうか。呉服屋に嫁いだ女性と、主人公の少女とのお話で、着物がモチーフとなっています。
「振袖」と「袴」の2編に分かれています。この「振袖」の最後の一文にいろんな想像をかきたてられました。ネタバレになるので詳細は説明できませんが、少女が大人の女性になるときの息苦しさのようなもの、同じ性である女同士で手をとりあいたくなる慕情が、着物の艶やかさとともに描かれていて、いやぁ、お美しいです。


楽しい読書体験をありがとうございました!



文学フリマ京都8に参加しました

・宮沢賢治先生『銀河鉄道の夜』
青空文庫より↓

・福永武彦先生『草の花』↓


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