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【ミニ社長塾 第39講】社長になるまでに、後継者はどうするとよいか。

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

3,000字ほどの記事を毎週noteで書いているのですが、その目的は「情報の共有」です。書いている内容は、ほとんどが私が携わっている「アタックス社長塾」でお伝えしていることに関連しています。

日頃の業務もあるので、1年間学ばれたことは、そのままにしておくと忘れてしまいます。しかし、日常業務のなかで「あっ、これって…」と学んだことと、その時に考えていたことが紐づくと一気に腹落ちすることがあります

そうして「学びを深めていただければ」と思い、同じ話でも繰り返し、切り口を変えながら毎週記事を書いています。

そんな今回は『社長になるまでに、後継者はどうするとよいか』ということについての話です。今回のミニ社長塾の第39講も、どうぞよろしくお願いいたします。

1.「もっとしっかりしないと、俺が引退できないじゃないか」という社長の本音

「経営者の高齢化が進んでいます」というのはよく聞く話ですが、実は単純にそうとは言い切れないところがあります。調査会社による統計データを見ると、大きなピークが「70~74歳」まで来ている一方で、なだらかな山が「50歳~」にあります。これは、事業承継が出来ている会社とそうでない会社がある、ということを示しています。

中小企業白書2023年版 第 2-2-2 図 / 年代別に見た 中小企業の経営者年齢の分布

事業承継は5~10年ほどかかる、と言われていますので、社長の年齢が60歳代に入ってくると、本格的に事業承継を意識されてくるのが一般的だと思います。

そんななか、社長が60歳代で後継者候補が40歳代という会社があります。社長と後継者候補は親戚関係です。数年前に社長は「もうそろそろ引退する」ということを表明されていたようですが、数年たってもその気配がありません。後継者候補の方に「お前がもっとしっかりしないと! 俺が引退できないじゃないか!」と社長は物足りなさを感じている様子です。

後継者候補の方は何もしていないというわけではなく、勉強熱心で経営者に必要な知識やスキルを習得しようと取り組んでおられますし、社内の中でも色々な部署を経験して準備を進めています。だからこそ、「どうしていけばよいの…?」と不安に思われるのも無理はありません。

ここで、あるデータを紹介します。現経営者の事業承継に対する課題について確認したものなのですが、非常に興味深いです。

中小企業白書2022年版 第 2-3-39 図 / 事業承継に対する課題

これを見ると、最も多いのが「事業の将来性」。次いで、「後継者の経営力不足」「後継者を補佐する人材の確保」「従業員との関係維持」「近年の業績」と続いています。

「お前がもっとしっかりしないと! 俺が引退できないじゃないか!」

この言葉には、このデータからも示される「事業の将来性」に対する課題があるのだろう、と思います。

ですので、後継者候補の方、ご本人にもお伝えしたことがあるのですが、「あなたが社長になったら、どのような会社にしたいか?」というところはもっと明確にしておいた方が良いと思います。「将来像」なので実現可能性はさておき、一番は意志をしっかり表明すること。そして、やり切るという熱量や覚悟を伝えることは必要ではないでしょうか。

一方で、承継後の経営体制の面や会社の業績の面についても、社長に課題意識はあると思います。次のような言葉を社長から聞いたことがあるからです。

「(後継者候補に)ちゃんと人が付いてくるのか」
「まずは今の事業の数字をどうしていくかだろう」

社長は心配性の方が多いので、「俺が引退できないじゃないか!」の前には「心配で」もしくは「安心して」という言葉が付いていると思います。

したがって、事業承継を円滑に進めるにあたっては、現社長が抱える経営課題は何か? そして、その課題を解消するために自分(後継者候補)は何をすればよいのか? という視点で後継者自身が取り組んでいくのは有効なのかもしれない、と感じています。

2.社長になる後継者の条件

これまでは事業承継と言えば「親族内承継」がほとんどでしたが、今は「親族内承継」と同じくらい「従業員承継」が行われています。また、主に金銭面で難しくなる可能性から「社外への引き継ぎ(M&A)」もあります。

中小企業白書2023年版 第 2-2-11 図 / 近年事業承継をした経営者の就任経緯

事業承継の相談を受けるなかで、逆に質問をすることもあります。そのうちの一つが、

後継者が、社長になる上で一番大事な要素は何ですか?

です。今、社長が経営している中で大事にしていることを後継者に引き継いでほしいという考え方もあれば、社長がこれまでの経営者人生の中で「間違ってはいけない」というポイントを考えられる場合もあります。言葉としては会計知識や決断力、状況対応力や実行力など…、社長によって様々です。

しかし、共通している意見もありました。それは「人」に関するものです。具体的に挙げますと、「後継者がどれだけの社員に支えてもらえるか」あるいは「従業員から信認を得ているか」といったことをおっしゃられる社長が複数名いらっしゃいました。

経営者の仕事は「成果を出すこと」で、これは間違いないです。ですが、成果はどのようにして生み出されるのでしょうか? 成果は、社員たちの頑張りによって生み出されています。

ある修了生の社長と話していたとき「社員が毎日出勤して仕事をしてくれることに、感謝しかない」と仰っておられました。そのような想いで見てくれているのなら「社長のために頑張ろう!」と思う社員がほとんどだと思います。

一方で、社員は働いて当然。ミスをしたら「なんでミスしたんだ!!」と憤りながら接してくる社長に対して、果たして次は頑張ろうと思えるでしょうか? 私はそうは思わないですね……。

色々と条件はあるものの「社員からの支持や信認を得る」ということについては、お伺いした範囲ではどの社長にとっても必要だと思われているようです。この部分については、日頃からの積み重ねで今の姿からも伺い知れることでもありますので、社員とのコミュニケーションはしっかり取っておかれると良いと思います。

3.後継者がやらないといけないこと

次に示すものは、後継者が準備期間中に取り組んだことについての資料です。親族内承継と従業員承継、社外への引継ぎの3つの類型で見ています。

中小企業白書2023年版 第 2-2-15 図 / 事業承継の類型別に見た、後継者の準備期間中の取組

まず、「自社の経営資源・財務状況の理解に努めた」と回答した割合が5割を超えています。その次に着目すべきものについてはそれぞれの類型で違いが出ています。

「親族内承継」においては「現場で働き、自社の技術やノウハウ、商習慣等を学んだ」、「従業員承継」においては「自社の経営に携わり、経営に関する哲学や手法を学んだ」、「社外への引継ぎ」においては「従業員と自社の課題等について話し合う機会を設けた」との回答が高くて気になるところです。

類型によって、承継までかけられる時間や持っている経営知識やスキル、従業員との関係性の面で違いがあります。そのなかでいずれの類型でも高かった「自社の経営資源・財務状況の理解に努めた」は、最も押さえておくべきことの一つだと思います。

また、強いてあげれば「現場で働き、自社の技術やノウハウ、商習慣等を学んだ」に入ってくると思いますが、既存事業の立て直しや新規事業の立ち上げをやっておくのも良いと思います。「後継者の力量不足」で指摘されるものの一つが『経営者としての経験』です。いきなり社長になると意思決定の規模が大きくなりすぎるので、段階を踏む目的で行っておくのは良いと思います。

その中で、仕事を通じて社員とのコミュニケーションを取ることも出来ますし、何より経営者のリーダーシップを磨くことができます。後継者のステージにいるうちに、現場での成功や失敗を学びとして成長していただきたいです。

今回の記事は『社長になるまでに、後継者はどうするとよいか』ということで、事業承継について色々とお話をいたしました。何かしらのお役に立てておりましたら幸いです。

次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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