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不惑の子育て

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子育てにまつわる短いエッセイです
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#エッセイ

あなたとわたしのよろけ縞

あなたとわたしのよろけ縞

娘、1歳1ヶ月、だいぶ幼児っぽさが出てきた。大人と同じものを食べられるようになったし、まだ歩きはしないけれど、つかまり立ちと高速ハイハイでどこまでも進む。「あうあう」とか「だぁー」などの喃語しか話せず、「パパ」「ママ」と呼ばれることはないが、どうやらこの人たちは自分に近しい人間だ、というのは認識しているように見える。そしてなんだか「自分の意志」みたいなものを感じることが増えた。

たとえば手につか

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一升餅とカメラロール

わたしには幸せな原体験がある。祖父の家で、毎年のお正月恒例だった、親族の集まりだ。父方の祖父は明治うまれの厳しい人で、箸の持ち方が悪かったり足を崩して座っていると、重くて硬い煙管で頭をコツンとされた。でも近所のお祭りや正月の初詣には必ず連れて行ってくれて、いろんな話をしてくれた、孫に優しいおじいちゃんだった。

お正月には祖父の家に息子(わたしの父)と娘と、孫たちが集った。父は末っ子で、わたしは遅

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娘、1歳。母親、1周年。

 娘が1歳になった。当日は保育園にお休みをもらい、わたしたちも仕事を休んで、朝から晩まで、娘のためだけに時間を使って過ごすぞ!と意気込んで出かけた。とはいえ、実際のところ、初めての遊園地、初めてのボールプールにギャン泣きし、ほうぼう連れ回された娘は帰宅とともに夕食も食べずに翌朝までぐっすり寝てしまい、わたしたちの張り切りも尻切れトンボになったのだが、それもまたよい思い出になったと思う。

 娘の誕

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きみで充電

娘、もうすぐ0歳8ヶ月。抱きしめるとやわらかくて、いい匂いがする。シャンプーや柔軟剤の匂いとは違う、まだ小さな生きものの、すっぱくて甘い匂い。娘はまだ小さく、両腕の中にすっぽりと入る。そんな彼女を正面から抱きあげると、わたしの肩に手を乗せてくれる。時にはぎゅっと服をつかむ。その力の強さに成長を感じて、ハッとする。

頬と首筋にやわらかい感触がふれて、娘の背中に手を回す。優しく力を込めてぎゅっと抱き

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