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循環器障害の7つの主要兆候

循環器障害に関わる主要徴候についてです。

今回の内容は、臨床でも観察されることの多い徴候です。

日常的に観察されるものから、重篤な状態につながる可能性のものまであります。

記事内では関連する疾患まで列挙していますが、主要徴候を知っておくだけでも臨床推論やリスク管理に役立ちます。

それでは、一つずつ学習していきましょう!


胸痛

胸痛(chest pain)とは、胸部の不快感、圧迫感、絞扼感、灼熱感、激痛など、多彩な症状を含めた表現です。

心血管系の緊急性の高い疾患が原因となることが多いため注意が必要です。

胸痛をきたす主な疾患は以下の通りです。

心臓
・狭心症
・急性心筋梗塞(AMI)
・急性心膜炎
・大動脈弁狭窄症(AS)
・僧帽弁逸脱症(MVP)
・肥大型心筋症(HCM)

血管
・大動脈解離
・肺塞栓症
・肺高血圧症

呼吸器系
・肺炎
・気胸
・胸膜炎
・縦隔気腫

胸壁
・帯状疱疹
・悪性腫瘍
・肋間神経痛
・肋骨骨折
・Tietze(ティーツェ)症候群

消化器
・食道炎
・食道痙攣
・胆石
・胃潰瘍
・急性膵炎

臓器に原因のない胸痛
・心臓神経症
・過換気症候群

胸痛で特に緊急性が高いのは、急性心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症です。

呼吸困難

呼吸困難(dyspnea)とは、不快感や努力感を伴う呼吸運動の自覚をいいます(”息切れ”も同義語として用いられる)。

呼吸困難は呼吸労作が過度なときに出現します。呼吸労作をひきおこす機序は以下のものです。

①高炭酸ガス血症や低酸素症による化学受容器への刺激
②上気道・肺・胸壁にある機械受容器への刺激
③呼吸努力の感覚
④求心性ミスマッチ

呼吸困難をきたす主な疾患は以下の通りです。

呼吸器系
・上気道閉塞
 (気道異物、喉頭浮腫)
・下気道閉塞
 (気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎、気管支拡張症)
・肺実質疾患
 (急性肺炎、じん肺)

肺血管障害
・肺塞栓症

胸壁・呼吸筋障害
・胸壁疾患
 (高度の脊柱後側彎症、漏斗胸、強直性脊椎炎)
・神経筋疾患
 (上位頚髄損傷、重症筋無力症、筋ジストロフィー)

循環器疾患
・肺うっ血
 (左心不全、僧帽弁狭窄症、先天性心疾患)

呼吸困難の原因疾患の頻度は、呼吸器疾患が75%、心疾患が10%です。

呼吸困難の重症度は、心疾患ではNYHA分類、呼吸器疾患ではHugh-Jones分類が用いられます。


動悸

動悸(palpitation)とは、通常では自覚されない心臓の拍動や鼓動、またその乱れを自覚することです。

心拍数の増加、一回拍出量の増加、不整脈などが原因となります。

動悸の訴え方

①心臓が一瞬止まってから飛び跳ねるような
 期外収縮

②早鐘のようなパタパタと胸が踊るような
 頻拍発作(心房頻拍、心房細動、洞頻拍)

③心臓が大きく打つような、首で打つような
 完全房室ブロック、洞徐脈、房室解離など

動悸をきたす主な疾患は以下の通りです。

循環器疾患
・不整脈  
 期外収縮、頻脈、徐脈
・非不整脈 
 器質的心疾患、心不全、高血圧

非循環系疾患
・二次性
 高心拍出状態
  貧血、発熱、甲状腺機能亢進
 交感神経興奮 
  褐色細胞腫、低血糖
・心因性
 心臓神経症、パニック障害、過換気症候群

生理的原因
・運動
・精神的興奮


動悸の感受性には個人差があります。

同じような不整脈でも、動悸を感じやすい人もいれば、全く自覚しない人もいます。

心因性の動悸は安静時に不安・頭痛・めまいなどを伴うことが多いです。

浮腫

浮腫(edema)とは、細胞外液のうち組織間液が異常に増加した状態のことです。

全身浮腫の場合、通常、浮腫に気づく前に体重が増加します。

浮腫の特徴
心性
・下肢(左右対称)に著明になる傾向
 顔面、上肢は貯留しにくい
・夕方に増悪しやすい
・低い部分に貯留しやすい
 (長期臥位では仙骨部)

肝性
・腹水→下腿浮腫→全身浮腫の順番で変化する。

腎性
・眼瞼、顔の浮腫
 
浮腫をきたす主な疾患は以下の通りです。

全身性浮腫
 心性:うっ血性心不全
 肝性:肝硬変、門脈圧亢進症
 腎症:急性糸球体腎炎
    ネフローゼ症候群
    腎不全
 栄養失調性:アルコール依存症
       飢餓
       悪性腫瘍
 内分泌性:甲状腺機能低下症
 妊娠性:正常妊娠
     妊娠高血圧症候群
 薬物性:NSAIDs
       ホルモン療法薬
     降圧薬

局所性浮腫
 血管性:上・下大静脈症候群
     静脈血栓症
     静脈瘤
 リンパ管性:本態性リンパ性浮腫
       リンパ管閉塞
 炎症性:関節リウマチ
     痛風
     熱傷

失神

失神(syncope)とは、一過性の意識消失です。

心疾患による失神、てんかんなどの脳神経疾患による失神、迷走神経製の失神、代謝性の失神などがあります。

失神をきたす主な疾患は以下の通りです。
心性
・不整脈:洞不全症候群(SSS)
     Ⅱ度・Ⅲ度房室ブロック
     心室頻拍
     上質頻拍
・器質的心疾患:大動脈弁狭窄症(AS)
        閉塞性肥大型心筋症(HOCM)
・心臓粘膜種
・肺塞栓症
・肺高血圧症

反射性(神経調節性)
・血管迷走神経性失神
・状況的なもの:排尿、咳、排便
・起立性低血圧

脳性
・脳虚血発作
・てんかん

その他
・低血糖
・過換気
・頸動脈洞反射

チアノーゼ

チアノーゼ(cyanosis)とは、毛細血管の還元型ヘモグロビンが5g/dL以上となり、皮膚が紫藍調を呈したものをいいます。

貧血では低酸素血症をきたしてもチアノーゼは出現しにくいです。

反対に、多血症では出現しやすいです。

チアノーゼの分類は、中心性と末梢性に分けられます。

・中心性チアノーゼ
病態
 動脈血酸素飽和度(SaO₂)の低下
 ばち指や多血症を伴う

観察部位
 口唇や口腔粘膜
 爪床

原因
 1.肺の異常
   肺胞性低換気状態
   換気‐血流不均等
   酸素拡散障害などの肺機能障害
 2.心臓の異常
   先天性心疾患による右→左シャント
 3.ヘモグロビンの異常

・末梢性チアノーゼ
病態
 静脈血の還元ヘモグロビンが増加
 動脈血の酸素飽和度は正常もしくはわずかに低下
観察部位
 四肢末梢
 顔面
原因
 1.心臓の異常
   心不全による心拍出量の低下
 2.動脈閉塞  
   閉塞性動脈硬化症(ASO)
 3.静脈閉塞
   血栓性静脈炎
   静脈瘤
 4.温度による血管変化
 5.Raynaud(レイノー)症候群

ショック

ショック(shock)とは、急激に生じた末梢循環不全であり、末梢の臓器が必要とする血流が得られないために機能不全に陥った状態です。

ショックの診断基準(日本救急医学会)
・血圧低下
  収縮期血圧90mmHg以下
  平時の収縮期血圧が150mmHg以上の場合
   →平時より60mmHg以上の血圧降下
  平時の収縮期血圧が110mmHg以下の場合
   →平時より20mmHg以上の血圧降下
・心拍数100回/分以上
・微弱な頻拍
・爪床の毛細血管のrefilling遅延
 (圧迫解除後2秒以上)
・意識障害(JCS2桁以上またはGCS10点以下)
 または不穏、興奮状態
・欠尿、無尿(0.5mL/kg/時間以下)
・皮膚蒼白と冷汗
 または39℃以上の発熱(敗血性ショック)

ショックの種類
・循環血液量減少性ショック
・心原性ショック
・敗血症性ショック
・神経原性ショック
・アナフィラキシーショック

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今回の記事は以上になります。

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