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最高の来店体験をどうデザインする?:これからのGoogleマイビジネスの話をしよう#4

毎週火曜日、Googleマイビジネスの未来やトレンド、ニュースなどをお届けする『これからのGoogleマイビジネスの話をしよう』というマガジンの第4回です。

今回の特集では「良い口コミやリピーターを作る最高の来店体験のデザイン」を、接客のエキスパートに取材してきました。

・特集:最高の来店体験をデザインするには?
・今週の気になる関連ツイート
・今週の気になる関連記事

Googleマイビジネスを聞いたことある・使っている方や、ローカル検索やMEOに関心のあるマーケター向けです。

Googleマイビジネス・MEOとは
Googleマイビジネスは「お店がGoogle検索やマップで出てくる施設情報を管理するための無料サービス」です。営業情報・写真・投稿・口コミ返信などを登録できます。

検索結果で地図が表示されることが増え、集客方法として注目されているのが「MEO」。「Googleマイビジネスを活用して、マップエンジン上のお店の情報を最適化し、ローカルパックやマップ上の上位表示を目的とする施策」という意味で多く使われています。ただし私はMEOのゴールは「短期的な上位表示」とするのではなく「マップ"体験"の最適化」を目指すべきだと考えています。

詳しい解説は創刊号をご覧ください。

特集:最高の来店体験をどうデザインする?

前回の「Googleの口コミの暗い未来と可能性」では、Googleの口コミの「リアルで低めの点数」と「忖度で高めの点数」というダブルスタンダードによる「信頼性の揺らぎ」の問題を取り上げました。

その上で"良い口コミ""悪い口コミ"をこのように定義しています。

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オーナーが目指すべきなのは、右上の「ユーザーにとってもお店にとっても良い口コミ」を増やすことです。

悪い口コミを必要以上に恐るのでもなく、実態を伴わない高評価口コミを増やすでもなく、返信や情報発信で「ユーザーにとってもお店にとっても良い口コミ」に増やしていくのが、真の口コミ施策となります。

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では、この返信や期待値調整には、実際にはどう取り組めるのか?

今回は「接客」に注目しました。低評価の口コミの大半は「接客」が原因、そして口コミ返信は客の延長線と言えるからです。

オフライン・オンラインの接客を通した関係作りを探るため、接客のプロである黒ワインさんにインタビューしてきました。

ミスマッチを防ぐための期待値調整の大切さ、低評価の口コミとの向き合い方、誰がどんなマインドで運用するべきなのか、そして、記憶に残るお店作りを始める方法などをまとめました。

黒ワインさんについて
銀座や横浜・みなとみらいなどのイタリアンでソムリエとして従事し、Twitterやnote、cakesを中心にサービスマンの在り方について発信している接客のエキスパート

口コミ返信は、店の哲学と正しい情報を伝えるチャンス

—黒ワインさん、今日はお時間をいただき、ありがとうございます。

黒ワインさんと「これからのGoogleマイビジネス」の話をしたかったのは、Twitter上で「お客様とのコミュニケーションのありかた」を聞いたのがきっかけでした。

以前口コミの返信を担当していたと伺いましたが、どのような業務を担当していたのでしょうか?

黒ワインさん:当時勤めていたレストランで、オーナーや店長の代わりに食べログの口コミ返信をしていました。食べログの口コミは長文が多く、1つの返信に1時間以上かけることもありました。その甲斐あって「丁寧な返信を参考にしました」と言ってくださるお客様も月何組もいましたね。

ー実際の来店につながっているのは、食べログならではですね…。具体的にはどんな返信をしていたのでしょうか?

黒ワインさん:口コミの返信で重視したのは「哲学を語ること」と「正しい情報を伝えること」です

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黒ワインさん:「こういうスタンスでやっています」という哲学は、店への信頼度を高められます。店の哲学は発信する場面が少ないので、返信という場にかこつけて語るようにしました。

そして、正しい情報を伝えるには「マイナスをプラスに変えること」と「気持ちを受け止めてコミュニケーション」を気をつけていました。

例えば、浅煎りコーヒーを出しているカフェで、オープン直後に「このコーヒー、漢方みたいな味がしない?」という口コミがあったとします。

おそらく普段飲んでいるのが、いわゆる喫茶店の濃くて渋いコーヒーで、同じコーヒーでも「その人の普段飲んでいるコーヒー」と「その店の浅煎りの独特な味わい」のイメージが違っていたのだと思います。

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黒ワインさん:こうした「イメージの違い」は、特にマイナスの口コミで表れがちです。「変な味がした」という感想を放置せず「浅煎りなので、普段召し上がっているコーヒーとも少し違う味わいかもしれません」という説明が必要です。

情報発信は「期待値調整」の役に立つ

黒ワインさん:お店の発信はとても大事です。店に合ったお客様は、当然満足度が高くなりますから。「こんな味が好き」「こんな雰囲気が好き」という人に「うちの店はそういう好みの方に向いていますよ」を伝えて、来店してもらうことが大事です。

ちょっと面白い事例で、SNSで「おっぱい」のことばかり呟いているバー(酒場)がありました。

ーえっ?バーなのに「おっぱい」ですか??

黒ワイン:実は、戦略がきちんと練られていました。そのバーは、オーセンティックなバーではなく、ワイワイ騒ぐような店。

あらかじめ敷居を下げることで、そういう場を受け入れられる人、求めてくる人が増えたそうです。自ら期待値を下げて、ミスマッチを防いでいました。

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ー期待値調整は大事ですね。初回のnoteでも「期待値を誇大広告で最大化するよりも、体験が最適化されるように期待値を調整するべき」という風に書きました。

それにはSNSでの発信や、Googleマイビジネスの投稿機能も有効です。

黒ワインさん:ワインの紹介でも「良い話ばかりをしない」というのもポイントでした。良い話9:デメリット1という具合です。「期待や要望になんでもできる」という期待値を与えてはいけないんですね。

ー他店との違いや自店が与えられる価値を客観視できているのがポイントなんですね。

前回書いたのですが「高評価の口コミは、必ずしも良いものばかりではない」と感じています。過大な期待を与えがちだからです。

以前紹介した越谷の焼き鳥屋さんでは、高評価の口コミの中身にもちゃんと目を通して、情報を訂正したり、追加したりしていました。

黒ワインさん:それは誠実な対応ですね。間違っている情報を訂正するのも大事です。たとえば、ある口コミでは間違った情報が書かれてしまいました。こうした口コミに「嘘を書くな!削除しろ!」と言うのはダメです。

低評価にこそ、真実味のある情報が詰まっている

黒ワインさん:僕はお店選びをする際、写真や文章ではわからない接客は、口コミ、特に低評価の口コミを参考にしています。

低いからダメではなく、そのお客さんしか分からない細かい情報まで書かれていることが多いからです。点数と書かれた内容を鵜呑みにするのではなく「ミスマッチだったんだな」と受け取ります。

ーミスマッチですか?

黒ワインさん:例えば「愛想が悪かった」という口コミだったとしたら、放っておいて欲しい人からすると良い店ですよね。

ーたしかに。同じように「騒がしかった」という店は、賑やかな店が好きな人にとっては魅力的に見えますね。

「そういった見方もある」と口コミ返信などで伝えられると、そうした店を探している方からすると「良い口コミ」になりますね。

黒ワインさん:ただ「最初から攻撃的なコミュニケーションを目的にする人」もいます。どんな店でも一定数、低評価を書かれてしまうのはしょうがない面もあります。

ーそうなると、口コミの情報を正しくなるように、オーナーの返信の重要性が高まりそうです。

どんな人がSNSでのコミュニケーションに向いているのか?

ー実際には、口コミ返信をできている店も多くありません。運用コストに対する費用対効果や、どんな人が向いているかわからない、という課題があります。

黒ワインさん:僕の接客理論では「全ての行為に意図を持つ」を重要視しています。「姿勢、話し方、声のトーンを無意識にやるな」と。SNSでのコミュニケーションも、細かい意図を持って接すると、ある程度レスポンスはコントロールできると思います。

ーGoogleの口コミはテンプレ返信や自動返信が主流ですが、それがもったいなく感じてきますね。

黒ワインさん:コミュニケーションは大変ですが、ある程度マニュアル化できると思っています。

担当者がコミュニケーションで注意するのは「できないことを書かない」ことです。その点で、現場あるいは現場に近い人がコミュニケーションすべきだと思います。

ー「お店で解決できることを書く」「現場あがりの人が担当する」は、前回の吉田さんも言っていました

黒ワインさん:数日に1年分の予約が生まれるような超人気フレンチでは、予約と顧客管理専門のスタッフを雇っています。そのフレンチでは「同じ人に同じ料理を出さない」というモットーがあり、顧客管理を大事にしているからです。

それでもペイできているので、そういったコミュニケーション専門のポストを作る店が増えてくると面白いですね。

ー「誰が返信するのか?運用するのか?」という問題は、どこでも挙がります。どんなやり方がいいんでしょうか?

黒ワインさん:「誰かの返信をベースに型を作る」のはありだと思います。店の接客と同じですね。ただ店の接客と違って、文章は残るのでストックの意味があります。

口コミは"レアな体験"から生まれる

ー良い口コミはどうしたら書いてくれるのでしょうか?記憶に残り、語りたくなる来店体験も意図的に作れるのでしょうか?

黒ワインさん:他で受けられない体験を提案することです。例えば、左ききのお客様が来店された際、食器の配置を逆にするような。「今までされたことがなかった」そんな体験です。

ーたしかにレアな体験は語りたくなります。

黒ワインさん:気をつけないといけないのは、やり過ぎで鬱陶しくなることです。僕自身は接客に入る時に、自分が入った意味を「一つだけ残す」ようにしていました。二つ以上ではいけません。接客は黒子のような存在なので、目立ってはいけないからです。

また、お客様が自分につきすぎると、他のスタッフの時に同じ体験を得られなくなります。スタッフの個性が売りの店は、また別ですが。

ーそれは体験のミスマッチともつながりますね。「このサービスがよかった」という口コミで来店したのに、それが属人化していて体験できなかったとしたら「あの口コミが嘘だった」「○○をやってくれると聞いたのになかった」「思っていたほどじゃなかった」という低評価の口コミが生まれやすくなります。

ところで口コミを増やす施策の一つで「直接書いてくださいとお願いする」というのが有効なんですが、それは接客の体験を損ねてしまいますか?

黒ワインさん:お店のコンセプト、そして相手との関係性によります。例えば「SNSで書いてください」がコミュニケーションの中で言えるなら問題ないと思います。

あとは「書きたい」「教えたい」と思わせる材料だと思いますね。例えば、食べログの口コミは承認欲求が叶えられるものです。そこをくすぐるのがポイントだったりします。

ーGoogleの口コミの場合は、そこはちょっと弱いですね。ただ、ある店では店内に「口コミしたくなるグッズ」や「言葉」が散りばめられていて、そうしたやり方は材料と言えそうです。

低評価の口コミは「笑顔」で減らせる

ー逆に低評価を防ぐ接客のポイントなどあるのでしょうか?低評価の口コミを以前調査したところ「接客」が理由の大半で挙げられていました

黒ワインさん:笑顔です。笑顔でいれば間違いないです。

ーえっ、正直、こんなはっきりした答えがあると思いませんでした!

黒ワインさん:人は「好意に悪意を返せない」ようになっています。店の雰囲気にもよりますが「愛想がない」「素っ気ない」が減るだけでも、最低評価はかなり減ると思います。

あとは挨拶。挨拶は「敵ではないと紹介すること」。味方には武器を向けないですよね?

例えば、cotreeのひらやまさんは終始ニコニコしている雰囲気なので攻撃的なリアクションが少なくなるのだと思います。動物アイコンのアカウントに攻撃的なリプライが少ないのと同じ理由ですね。

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Workship MAGAZINE「「泥臭い積み重ねが、複利に効いている」cotreeひらやまが周りの人を巻き込めるワケ」より)

「お客様が店にいない時間を想像した提案」でリピーターを作る

ー最後に教えてください。お客様の候補数が限られる地域店舗にとって、リピーター作りは集客の要だと思います。コミュニケーションでのリピーター作りのポイントはありますか?

黒ワインさん:他の店舗にない感動体験を残すことです。他の店に行った時に「物足りない」と思わせるような。

そして、感動体験のアイデアは「お客様が店にいない時間を想像する」ことから生まれることがあります。お客様のライフスタイルをイメージして接客し、自分たちの強みを提供する。

例えばヘアサロンの場合「お客様の翌日」を想像するのが大事です。今日切った髪型が自分でも再現できるか?店にいない時のスタイルやお手入れも提案することです。

売れっ子のホストだと、自分のお客様が「どんな生活を送っているか?今の時間に何をしているか?」をすぐに答えられるそうですよ。

ー自分にあったオーダーメイドな価値を提案してくれるとリピートしたくなりますね。

黒ワインさん:「店がお客様の一年の中でどんな存在でいられるのか?」がリピート作りのポイントです。例えば、カフェなら「勉強するための空間」や「1日を気持ちよく始めるための場所」という存在になれば、来店が習慣になりますよね。

ーすごい…そうなれば地域に定着するお店になりそうです。日常に組み込まれれば、オープン需要がなくなっても来店してくれますね。

黒ワインさん:オーダーメイドの提案には「店と客との対等な関係」が必要で、対等になるためには店側の「教養」が必要です。客の生活を想像し、理解し、トレースして、教養を身に付けると提案の説得力が増します。

高いワインを売るのは難しいですが、逆に「安いワインを勧められなくない」という人もいます。普段、相手がどんな価値基準で消費しているかを想像することが、接客力の訓練につながります。

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黒ワインさん:例えばアパレルでも同じです。「服を説明する」のではなく「服をどう使うか」を想像して提案するのが接客だと思います。忙しい人なら手入れしやすい服、疲れている人ならリラックスして着れる服が欲しいですよね。

商品をただ売っても口コミにはなりません。商品ではなく体験を売ることが大切です。

あとは言語化も大事です。「このラーメン美味しかった」「ここ楽しかった」という解像度の低い口コミでも、お店が攻められるポイントになります。

口コミ返信で「○○に力を入れています」「○○を使っています」「今度○○もやりますのでまたきてください」など、情報の解像度を上げると、ただの口コミが価値のある良い口コミへと変わります。

—リピーター作りには、想像力と客観視が大事なことがよくわかりました。今日は、実践的なテクニックから接客のマインドセットまで教えていただき、本当にありがとうございました!!!

(取材協力:黒ワイン氏)

「最高の来店体験のつくりかた」のまとめ

今回、接客のプロである黒ワインさんの話を伺うことで、あらためて「Googleマイビジネス活用やMEOは、小手先のテクニックや短期の上位表示を目指すべきではない」ことを理解できました。

「マップでの上位表示」のためにGoogleマイビジネスを活用するのではなく「自店舗とお客さんとの最高のマッチング」のために行うべきです。

そのためには、自店舗がお客様に与えられる「価値」を見つめ直す必要があります。黒ワインさんの話で、明日から取り組める実践的なテクニックもあれば、サービスや教育そのものにも踏み込むものもありました。

今回のインタビューの内容を10カ条としてまとめましたので、ぜひご活用ください。

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今週の気になる関連ツイート

最新情報や具体的な事例などをピックアップ。

▼これは名返信。自動返信じゃない感じ、お店の特徴を伝えようとしている様子。これは集客にもきちんとつながっていそうです。
▼現場の方のお悩み(わかります)
▼お店を支援してもらうリンクを張る機能。あまり使われていない印象ですが、もっと使われて欲しい機能です!
▼「どう推せばわからないから口コミが書けない」というのは実際多そう。「どこにこだわっているのか?」を言語化するのは口コミを増やすポイントです。
▼まだ日本では実装されていないようですが「更新日時」がわかるようになるのは良いですね。
▼バケツに水を入れる前に、バケツの穴を塞いだほうがよい、ということですね。
▼ローカルSEOの領域ですが、リンクしているサイトなどに構造化データを設置すると上位表示に良いらしいので、できそうな方はぜひ
▼これからインフルエンサーになりたい人は、このあたりを取り組んでみてもいいのかも。
▼恒例(…)のインサイト機能のバグ発生中
▼投稿が削除される現象が発生しているとのこと。

今週の気になる関連記事

バーチャルガイド「マップ・インフルエンサー」は登場するのか

"Maps上に存在するユーザー情報には、特別な価値がある"というユニークで的確な視点。いまから取り組めば第一人者や先行者利益が見込めるかもしれません。

先述したGoogle+では、FacebookやTwitterではなく、Google+にわざわざつぶやきや近況を投稿する理由があまりありませんでした。言い換えれば、利用ユーザーのサービス利用モチベーションが薄かったのです。ところが、Mapsでは場所検索に紐づいた、他のサービスにはないロケーション機能が充実しています。他社SNSではもはや追いつくことは難しい状況です。

MEO対策したのにGoogleマイビジネスの情報が表示されない!理由と解決策

よくヘルプにもくる「うちの店がマップに出ないんだが!?」問題を類型化して対策を解説してくれています。

リスティングが表示されないパターンとして、大まかに次の3パターンの状況が考えられます。

・検索結果が1店舗に独占されている
・独占はされていないが表示されていない
・Googleマイビジネスのアカウントが停止されている

Googleマイビジネスの登録方法と、管理代行業者の選び方とは

運用代行をする際のメリットやデメリット、注意点、そもそも運用代行とは?についての解説記事。

細かい部分は企業ごとに差はありますが、代行業務は大きく5つの業務があります。

1. オーナー登録代行
2. 基本情報入力代行
3. マイビジネス管理代行
4. 情報発信代行
5. 分析/レポーティング

あとがき

「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」第4回を読んでいただき、ありがとうございました。次回も火曜日に、気になるGoogleマイビジネスの最新情報をお届けする予定です。

次回は「InstagramとGoogleマイビジネス」について、業界エキスパートにインタビューする予定です!!!

気になる方やご感想は、ぜひTwitterの方からもお願いいたします。それではまた来週お会いしましょう!

第4回の取材協力:黒ワイン氏

この場を借りて感謝を申し上げます。

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