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連続小説 目線の下 #02

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#02

優しくない街にも夢はある。
渋谷は流行の発信地だ。私達の親世代でも、流行を見るなら渋谷からといったものである。
しかしながら、流行とはなにか?と見ると
どうしても、あのバイブス上がる感じにはどうしてもついていけず、
サイレントモードにしていた携帯のバイブ音がなり、ビビる。
そしてバイブスは下がる、、、

携帯を覗くと、待ち合わせをしていた友達からメールが来ていた。

「いま、スクランブルにいるけどどこにおる?」
「そこは抜けてセンター街」
「そしたらファミマの前で」

2,3通ほどやり取りをしてスマホをしまう。
友達を待つたった数秒の間でも、
あの子どうしたのかな?といった顔をする人。
何だ、お前?と明らかに邪魔そうな顔をする人。
見向きもせず、渋谷の街でいちゃつくカップル。
そうしたなんでもない日常が、目の前に飛び込んでくる。

私も人の反応には慣れたもんで
適当に薄ら笑いをするか、目をそらすか。見なかったことにしておくか。
というので自分自身でメンタルケアをしている。

何も興味がないというわけではなく、興味がないふりをする。
それが世間一般での生き方と、歳を重ねるごとに気づいてしまったからだ。

「ごめん、待ったよね」
友達がごった返す人並みから無事生還した。
あの中を渡り歩けるのはさすが都会に慣れた人、といったところか。
友達とは久しぶりに合うから、たまには近況報告でもー。なんて約束を取り付けてみたが
会って、最初の一言が
《「ごめん、待ったよね」》ってそれはないだろう。付き合いたてのカップル何かですか。
そういうのは将来出会うであろう彼女から聞きたいもので
男友達A(仮にAとする)から聞きたくはなかった。

ここは無難に。
「いや、待ってないよ」と返す。
これでBLの世界でも出来上がるのかな、昔はやったおっさん同士が好きだのなんだの
もやもやする関係のドラマ的構図になってしまうではないか。
それは私はあまり好きじゃない。
見るのは楽しいがやるのは別の話である。

とりあえず、私とAはカフェに入った。
2名様ですか?と言われ、はいそうです。と答えるとおもむろに店員が席を探す。
しばらくするとこう声をかけてきた。

「あいにくテーブル席がいっぱいになっておりまして。。。カウンター席ならご案内できるのですが。。」

店内を見渡すとファミリー連れやカップル、一人で仕事をするサラリーマンが一堂に会していた。
カウンター席の方を見ると3,4席ほど空いてはいるが
椅子は丸椅子の固定式で座高が高く、とても車椅子の人間が座るには難しい椅子だった。

なぜこんなに混んでいるのだろう。
店内の壁掛けの時計に目をやると時刻は14:30を指していた。
皆様、小腹がすく頃だということだろう。。。

対応してくれた店員さんには申し訳ないが
私達はこの店をあとにした。

意外と気づかない不便さというのは街のいたる所に転がっているものである。。。

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✏筆者プロフィール

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橋口竜河 (はしぐちりゅうが)
1996.02.02 生まれ 神奈川県出身
車椅子での生活をしながらシンガーソングライターとして活動している。
《ハートフルシンガーソングライター》として心情に嘘のない歌を歌い続ける。
過去には自主企画ライブを開催し、ライブオーガナイザーとしての経験もある。
配信Single《ガーネット》がApple Musicをはじめとする各種音楽配信サイトにて配信中。
1st CD《我儘な冷戦》発売中!!
公式サイトはこちら。


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