見出し画像

映画レビュー プライベート・ライアン


今回の映画レビュー(旧作)は1998年公開の「プライベート・ライアン」

監督はスティーブン・スピルバーグで主演はトム・ハンクス。この作品の戦闘シーンは後に出る数々の戦争映画の描写に影響を与えたとされる作品。

物語は第二次世巻大戦中のアメリカ軍で、1人の兵士を生きて生還させる為に編成されたレンジャー部隊のお話し。たった1人の為に8人もの兵士の命を懸けるのか…という所が物語の基本線になっていると思う。

何と言っても冒頭20分にあるノルマンディー上陸作戦のリアルさと迫力が見所の一つ。基本的に上陸する側の兵士としての視点で描かれていて、迫りくる銃弾や爆撃などの怒涛の攻撃を受ける恐怖を感じさせてくれるシーン。特に音響効果はすごいのでTV等で鑑賞の際にもヘッドフォンの装着をお勧めしたい。またこれまでの戦争映画では中々描かれなかったであろう描写(手足の損壊、下半身を失うなど)も生々しいものが多いのでちょっと注意が必要なシーンかもしれない。

またこの序盤を過ぎてから主人公の部隊に加わる兵士(アパム)がいる。彼は翻訳と地図の作成に関わる兵士だが、レンジャー隊の通訳として参加を余儀なくされる。先頭のスペシャリストではない彼はその後さまざまな事に遭遇。彼の視点は我々のように戦争(戦闘)を経験していない人間の視点と同じであり、彼の視点を通じて戦争のいろんな面を知ることが出来る。そして最後のシーンであの温厚なアパムがついにある行動に出る。それは最前線に身を置くことで彼の思考が変わったのか、はたまた戦争というものが人を変える要素を持っているのか…と考えさせるシーンである。

劇中何度も一人の兵士の為に大勢の命を懸ける必要があるのか…という疑問にぶち当たるシーンが出てくる。しかし最終的には「一人の兵士を救出する事で胸を張って国に帰ることが出来る」「一人の兵士を無事帰還させることがこの◯◯戦争で唯一誇れることになる」と自身を納得させようとするシーンは如何にもアメリカ的な感じがしなくもない。しかし胸を張って帰る…というのは最前線にいる兵士にとっては理想の形なのだろう。その為にもここで生き抜いて一兵士を帰国されるという事に尽力していくのだが、これ実際に自分がその立場だったそういう考えに至って一緒に戦う(命を懸ける)事が出来たかどうか…実に怪しい所である。


監督のスティーヴン・スピルバーグはこの作品の制作後にも第二大戦関連の作品を作っていく。映画では無くてTVドラマだが2001年には「バンド・オブ・ブラザーズ」でプライベート・ライアンで描ききれなかったエピソードを詰め込んだ作品を作り、2010年には「ザ・パシフィック」で今度は太平洋戦線でのアメリカ軍の活躍を描いた作品を登場させる。どれもTVドラマとは思えぬ作りで、このプライベート・ライアン同様の迫力ある映像と良質なドラマを見せてくれるので、ここでお勧めしておきたい。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?